Devil Seed
姫宮未調
ロア『Devil Seed』
『知ってる? 『Devil Seed』の噂。
たった一つだけ、何でも願いを叶えてくれるんだって。だけど、悪魔の種って呼ばれるくらいだから代償は……』
法魔ロアナビア女学院でまことしやかに囁かれる数ある噂のひとつ、『Devil Seed』。
細かい概要は明らかになっておらず、伝説レベル扱いだった。
昔、法魔ロアナビア女学院があるネプシュヴァラの国は一度ディストピアと化したそうだ。
五元素魔法、色魔法など魔法で栄えていた時代。他国より魔法の種類も多く、役職も多かった。
物資も豊かで、他国から羨望の的。更には他国へ出し惜しみしない、種族差別をしないところから、どこに行っても手厚く歓迎されていた。
国王が人情に厚く、博愛精神を持っていたからと言われている。
しかし、国王が変われば国も変わる。
国王が人格者ではなかったら?
そんなことを考える者などいない平和な国だったことが、災いした。
『どんな願いも叶えてくれる種』の噂が迷い込んできた。美味い話には裏がある。
時の国王は欲にまみれていた。
城内で知らぬものはいなかったが、国民には開示されていない。
女を侍らした五十前の折り返し。
彼は願っていた。若返り、永遠を手に入れたいと。すなわち、不老不死になりたいと。
いつまでも自分の栄華でありたいと。
通常であれば泡沫に消える欲望的夢。
だがしかし、『種』は彼の元に現れた。
……彼の願いの対価は『国』そのものとなった。
城の建つ頂き以外の領土すべてが天災に見舞われ、地獄と化した。
ある者は三頭獣のケルベロスを見たといい、ある者は八頭竜のヤマタノオロチを見たと言う。
領土内は悪魔や地獄の獣で溢れたらしい。
煌びやかな国が一晩にして、ディストピアと化した。
そう一晩でヤツらはいなくなったそうだ。
他国と生き残りで、元凶である国王を討たんと城に乗り込んだところ、場内は殺伐としていた。
至るところに兵が死に絶え、大臣たちも亡骸になっていたという。
一晩で何年も経ったかのような朽ち方をしていた。
肝心の国王は、いくら探しても見つからなかったという。
更には、『種』を見たのは国王のみ。
『種』らしきものも、芽吹いた草さえも見当たらなかった。
その後、他国の協力もあり、ネプシュヴァラは年月と魔法を駆使して再建したのである。
「……で? そんな昔話ロアを持ち出したってことは、『種』が見つかったか『行方不明の国王』が見つかったか」
「両方みたいよ」
「500年も前の話なのに生きてたんだ。あ、永遠を手に入れたんだっけ」
「下手に永遠を選んだことで養分にでもされてたのかしら」
「……怖いこと言うなぁ」
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