魔王の息子が勇者のパーティーに入りました。

@nyasyapon

プロローグ ノースキル

――足の置き場を探す。


どうやら無いようだ。


それもそのはず。周りを見渡すと一面水色の塗料をぶちまけたかのように青い。


ここは空らしい。


足、胴体、顔、手、の順に雲の中を突き抜ける。


「やっぱりあのゴブリン信用出来ないと思ったんだよな。」


と、言いながら腕組みをし、考える。

しっかり確認しておくんだったと少し思い悩む。


少し……な……?今頃後悔しても遅いことぐらい分かってる。

だが、そんなことを考えている余裕も、もうなくなってきてるみたいだ。


後、1000m程で湖へと身体が墜落するからだ。


全身に力を入れる。


――浮力。


心で唱える。

俺は魔王の息子リアンだ。強力魔法はすべて習得済み。


すぐにでも体が浮く……はずだった。


――待てよ……。何も起こらない。


「は?」


思わず声が出る。


体が止まらないのだ。困ったな。

なぜ魔法が使えないのかを考える暇は無いようだ。

このままでは湖へとまっしぐらなのだが…...。


俺は、眉を|顰(ひそ)めたが、現実は変わってくれない。


数秒後、爆弾でも落ちたような音が村人達の住む下界に鳴り響いた。


鳥達が木々から飛び立つ。鳥の甲高い鳴き声や葉が擦れる音が共鳴していた――。


悲しいかな……。


これが魔王の息子である俺の始まり方である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔王の息子が勇者のパーティーに入りました。 @nyasyapon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る