第37日目 押し付け成功
発情期?のアスピダを連れて私はエタニティス学園へと戻ってきた。
「何だ?これからお前に部屋にでも行くのか?いいぜ?俺の方はいつでもカモン!だ。」
最早どこまで冗談で言ってるのか本気で言ってるのか分からないアスピダは完全無視して私はベソとノッポの元へと急いだ。
大体、朝からおかしいと思っていたのだ。だって目が覚めた時に私の眼前に浮かんでいた『ドラゴン・アスピダとのストーリーが解放されました。』って意味深な内容・・・むしろ、このウィンドウがオープンした段階であの2人を訪ねておくべきだった。
「ベソッ!ノッポ!いるんでしょう?開けてよっ!一大事なのよっ!」
ドンドンと乱暴に管理事務局のドアを叩くと、ガチャリとドアが開けられ、ノッポが顔をのぞかせた。
「エリスさん・・・なんか久しぶりですねえ・・・。」
なんだかいやいや私を迎え入れるノッポに私は言った。
「ちょっと!何とかしてよっ!大変なんだからっ!」
私はノッポの襟首を掴んでユサユサと揺すぶった。
「アウアウ・・・や、やめて下さいッ!く、くるしい・・・。」
半分白目をむきかけたノッポの姿に気付き、慌てて手を離すと私は言った。
「ねえ、彼をここであずかってよっ!」
私は背後にいたアスピダの腕をつかみ、ノッポの前へと押し出した。
「なんだよ。エリス・・・乱暴な女だな・・・。まあそういう所もいいんだがな?やはり最初に交配する人間の女はエリスに決まりだな?」
言いながら私の頭を撫でて来る。だからそういう態度はやめてってば。
「え・・・?こうはい・・?こうはいって・・あの先輩後輩の・・・?」
ノッポが引きつった表情で私とアスピダを交互に見る。
「そんな訳あるか?交配と言えば、繁殖行為の事に決まっているだろう?」
腕組みをしながらサラリと飛んでもない事をいうアスピダ。
「え・・・ええええええっ?!」
大袈裟な位にのけぞるノッポに、ようやくベソも現れた。
「エリスさん・・・またもやトラブルを持ちこんできたんですか・・いい加減にしてくださ・・・・。」
そして自分の目の前に立っているアスピダの姿を見ると、ベソは大声をあげた。
「あああああっ!こ、このキャラは・・・・っ!」
「え?何?何?」
私は驚いてアスピダとベソを交互に見た。
「ん?この男がどうしたんだ?」
ノッポがのんびりした口調でベソに言うと、ベソが喚いた。
「馬鹿ッ!ノッポッ!お前気が付かなかったのか?もう一度この男の姿をよく見て見ろよっ!」
そして背の高いノッポの顔を両手で挟むと、グリンとアスピダの方に向かせた。
「ほ〜ら・・・よく見て見ろよ・・・。」
まるで暗示をかけるかの如く、ベソはノッポの耳元で囁き、ノッポはくすぐったそうに身悶え?する。・・と言うか、そこまでする必要があるのだろうか・・・?
「どうだ・・・?ノッポ・・・思い出したか・・・?」
怪しい雰囲気の2人を少しBLを想像しながら見守る私。そしてアスピダは私にそっと尋ねてきた。
「なあ・・・あいつ等・・男同士で出来てるのか?」
「さあね・・・でも四六時中一緒にいるから何かしらの心の変化はあったのかもね?」
と、適当に答えてやった。
「ふ〜ん・・・でも男同士では繁殖なんか出来ないぞ・・?」
まだブツブツとアスピダは言ってるが、面倒なので無視しておこう。
その時・・。
「あああっ!お、思い出したっ!」
ノッポがおもいきりアスピダを指さして叫んだ。
「「アスピダだっ!」」
2人の声が同時にハモる。
「やっぱりっ!2人はアスピダの事知ってたのね?!一体彼は何者なのよっ!」
私は2人に詰め寄った。
「お、落ち着いて下さいよ、エリスさんっ!」
ノッポが後ずさりながら言う。
「これが落ち着いていられるはずないでしょうっ?!あのゲームにはアスピダなんてキャラ出てこなかったわよ?しかも彼はドラゴンなのよ?そもそもドラゴンだってでてこなかったじゃないのっ!」
「え、ええ・・それは当然ですよ。だって・・彼は・・第2弾のゲームに出て来る攻略キャラなんですからっ!」
ベソが言い放った―。
「それで・・?どうしてそのまだ開発中の第2弾のゲームキャラが出てきている訳?」
管理事務局で熱いコーヒーをフウフウ冷ましながら私は尋ねた。
「そんな事言われても・・・・。」
「俺達にはさっぱりわかりませんよ・・・。」
ベソとノッポが互いの顔を見ながら交互に言う。ちなみにアスピダはただいま昼寝の真っ最中だ。どうもゲーム開発段階でアスピダというキャラは長寿の生命力を持つが故、睡眠時間も長く、トータルで1日合わせて12時間の睡眠を必要とする・・・と言う公式設定があるらしい。でも・・・眠ってくれている方が正直、都合が良い。何せ彼等は所詮ゲームの中でのみ生きている存在なのだ。こんな話本人が知ったらたちまちパニックを起こすに違いない。
「アスピダの話によれば、洞窟の中で次元を切り離して300年間1人で暮して来たらしいんだけど・・・突然次元に切れ目が入って妙な女が現れて・・そこから先の記憶が無いって言うのよ?ちなみに私はトビーから逃げる時に、たまたま魔法の絨毯を出して、たまたま行き先を告げずに飛んだら、たまたま白銀のナイト達がアスピダと戦っている最中で・・・最終的に私がアスピダを倒したら・・・何故か懐かれちゃって・・・。」
私はチラリと奥のソファで眠っているアスピダを見ながら言った。
「成程、それでアスピダに繁殖行為を要求されているという訳ですね?」
ベソが腕組みしながらウンウン言う。
「いいんじゃないですか?応じてあげれば・・・。」
「冗談じゃないっ!セクハラ発言で殴るわよっ!」
私は拳を握りしめながら言う。
「成程・・・それで?」
ベソが言う。
「え?それでって?」
首を傾げる私。
「ええ、何故ここに連れて来たのかを尋ねているんですけど・・・。」
ノッポがズイッと身を乗り出してきた。
「そんなの決まってるじゃない。貴方達にここでアスピダを預かって欲しいからよ。」
「ええええっ!な、何故ですかあっ?!」
「冗談じゃありませんよっ!こ、ここにおくなんてっ!」
ノッポとベソが交互に喚く。
「エリスさんが連れて来たんですから、責任を持って面倒を見てあげるべきじゃないですかあ・・・。」
ノッポの言葉に素早く反応する。
「冗談じゃ無いわよっ!今朝何があったと思う?目が覚めたらね・・・アスピダが勝手に人のベッドの中の入っていたのよ?し、しかも全裸で・・・っ!」
声を震わせながら訴える私。
「へええ~そうですか・・・。」
「ふ〜ん・・裸でねえ・・・。」
2人は全く意も解さない様子でコーヒーを飲んでいる。
「し、しかもねえ・・裸でベッドに入っていた目的は・・・わ、私と交配する為だって言うのよっ!!」
ハーハー荒い息を吐きながら2人に必死で訴える。
「別にそんなの無視してればいいんじゃないですか?」
「そうそう。」
何とも危機感の無い2人の言葉についに私はプチンと切れてしまった。
「冗談じゃ無いわよっ!毎日毎日貞操の危機に怯えながらアスピダと2人であの部屋で暮せって言うの?そこまで言うならこっちにも考えがあるからねっ!」
「考えってなんですか?」
ノッポの質問に私は意地悪そうな笑みを浮かべると言った。
「このゲーム・・・・攻略するのやめる。」
「「ええっ?!」」
「ほら、ほら、どうする〜。私が攻略出来なければ貴方達も一生このゲームから抜け出せないのよお〜・・・?」
「ぐううっ!」
「そ、それだけは・・・っ!」
こうして私はベソとノッポの2人にアスピダを押し付ける事に成功した—。
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