第3日目 ご褒美ゲット~素敵な夜をお過ごし下さい
『おはようございます、3日目がスタート致しました。それでは本日も張り切ってメイドのお仕事と攻略対象の好感度を上げて行きましょう。健闘を祈ります。』
「・・・・。」
私は恨めしい気持ちでベッドに横たわりながら目の前に浮かんだ液晶画面を見つめていた。
「全く・・・。メイドの仕事ってお休みとか無いのかな?」
文句を言いながらベッドから起き上がり、部屋の時計をチラリと見る。
「大体、何故こんな朝早くから起きて働かなくちゃならないんだろう?しかも朝6時から仕事開始で、そのくせ休憩時間以外は働き詰め。これじゃ完全にブラック企業だっつーの。」
ブツブツ文句を言いながら私はメイド服に袖を通した。しかし、まだたったの3日目・・・・。一体ゲームクリアするまでに何日かかるのだろう?私が以前プレイした乙女ゲームでは確か長くて1年、短くて3カ月って言うのがあったけど・・・。
「やだ、絶対に1年とかだったら、ほんとに勘弁して欲しい。」
思わず口に出していた。
そうだ、こうなったらひたすらにメイドの仕事を頑張って、スキルポイントを貯めてメイド力アップさせて食器を自動的に洗ってくれる魔法器具・・ああ、長ったらしい。よし、『食洗器』を何としても手に入れるのだっ!
「見てなさいよ・・・。打倒『アースプロダクツエンターテイメント』!」
私はギュッと両手の拳を握りしめるのだった。
きっちり15分で朝の準備を終わらせ、いつもの如くアンに言われた1階の階段下に待機・・・しようとしてやめた。どうせあのアンの事だ。時間内に降りて来るとは到底思えない。ならば・・・。
バンッ!
自分の部屋のドアを勢いよく開けると、隣のアンの部屋を襲撃する。
コンコン。
しーん・・・
コンコンコン
しーん・・・。
ドンドン。
・・・・。
ドンドンドンッ!
・・・。
うう~っ・・・・。
痺れを切らした私は思わずドアノブに手を掛ける。カチャリ・・・
あ、あれ・・・?ドアが開く・・・?
「アン~ッ!!」
アンの名前を呼びながら私は彼女の布団を引っぺがし・・・・。固まった。
何とアンは何も服を着ないで眠っていたからである。
「キャアアアアアアーッ!!」
早朝に響き渡る私の悲鳴—。
「全くさ、布団を剥がれたのは私なのに、何故エリスが悲鳴をあげるのさ。」
アンがむくれながら玉ねぎの皮をむいている。
「だから、ゴメンって何度も謝ってるでしょ。」
私は苦笑しながら人参の泥を洗っていた。あの後、騒ぎを聞きつけた他のメイド達も駆けつけてきて、大騒ぎした罰として朝から昨日の倍の野菜の下ごしらえをさせられていたのである。
「でも、これって絶対にいじめよ!新人イビリに違いないわっ!」
アンが玉ねぎの皮むきに格闘しながら言った。
「アハハハ・・・。そ、そうかもね・・・。ねえ、アン。玉ねぎの皮むきと人参洗う当番変わってあげようか?」
「ほんと?助かるわ~。さっきからうまく剥けなくて困っていたんだよね。」
アンが嬉しそうに人参を洗っている私の側に来ると言った。確かに不器用なアンには玉ねぎの皮を剥くのは少々骨が折れる仕事なのかもしれない。だけどきっと人参を洗うよりはスキルポイントがたまりそうだ。何せ私は一刻も早くスキルポイントをため、メイド力を上げてゲームを進めるうえで有利なアイテムを手に入れなければならないのだから!
だけど・・・・。肝心の攻略対象の好感度を上げるのが・・・至難の業だ。
「メイド力だけ、あげてもな~・・・。」
つい溜息と共に本音がポロリ。
「何?今の台詞?」
アンが不思議そうに尋ねて来た。
「うううん、何でもないっ!さ、仕事頑張ろうっ!」
私は腕まくりをすると、ますます玉ねぎの皮むきに専念するのだった・・・。
「すごいじゃないか!もう全部終わったのか?!」
下処理の済んだ野菜を全て料理長のガルシアの所へ持って行くと彼は目を見開いて驚いた。
「うん、まあね~っ!何て言ったって、エリスの手際がすごくいいんだからっ!」
何故かそこでアンが自慢げに言う。
するとそこで今日で2度目の液晶画面が現れる。
『おめでとうございます。獲得スキルポイント200をゲットしました。前回よりも効率よく作業が進むと獲得スキルポイントを貰える数値がアップします。この調子でどんどんレベルを上げていきましょう。」
あ~うっとうしい画面だ。貰ったスキルポイントだけ確認できたからもういいや。
つい、画面が邪魔な私は手で追い払ってしまった。
「何だ?何してるんだ?」
「虫でもいたの?」
ガルシアとアンに変な目で見られてしまった・・・。
その後、私はリネン室で洗濯。朝ご飯を食べた後は学食の食器の後片付けと、まるで馬車馬のように働いた。しかし・・・・この身体は中々便利だ。バーチャルの世界のせいか、エリスの身体は何でも器用に出来る設定がされてるみたいだからね。
「ほんと、便利だよね。」
校舎で1人庭掃除をしながらポツリと呟くと、突然背後から声を掛けられた。
「何が便利なんだ?」
ん?もしやその声は・・・・何やら嫌な予感がする。恐る恐る後ろを振り向くと・・・何故か腕組みをして仁王立ちになっているアベルがそこに立っていたのだ。
しかも眉間に青い筋まで見えちゃってるよ。
するとタイミングよくピロンと音が鳴り、再び私の前に液晶画面が現れる。
『ミッション 5 攻略対象のご機嫌を取れ
攻略対象が現れました。何やら相手は機嫌が悪そうにしています。相手のご機嫌を取り、好感度をあげましょう。』
何それ、まるで某RPGゲームの敵と遭遇した時に現れるようなそのメッセージは。
言われなくたって、機嫌が悪そうにしているのは見て分かるって言うの。
そこへまたピロンとなって選択画面が表示される
『 1 朝の挨拶をする
2 無視する
3 良いお天気ですねと言う 』
そんなの決まってる、1を選ぶしか無いでしょう。2は論外だし、3に至っては私達はまだ世間話?をする程親しくなんか無いのだから。
「おはようございます、ジョナサン様。」
ほうきで掃く手を止めて頭を下げて挨拶する。
「おい、エリスッ!」
しかしアベルは返事をせずにいきなり私を怒鳴りつけた。
「は、はい!何でしょうか?」
「お前・・・いつになったら俺の部屋を掃除しに来るんだ?!」
へ・・・?だって、掃除をするように言われたのは昨日の事だよ?たった1日しか経過していないのにいつまでって・・・・。何せ、この男もヒロイン命。それ以外の女子には塩対応しかしないという徹底ぶりを見せていたのだから・・・。
え・・・と・・でも何でアベルはヒロインにすぐ陥落したんだっけな・・。
「おい!俺の質問に答えろっ!」
「は、はい!」
アベルの顔を見て・・・私は青ざめた。た・・・大変だ・・好感度が・・・下がっていってるーっ!
「駄目ーっ!!」
パニックになった私はアベルの好感度のゲージを何とか手で防げないかと思い、彼の頭上にあるハートのマークに手を伸ばし・・・バランスを崩してそのままアベルの上に倒れ込んでしまった。
「うわあっ!」
「キャアアッ!」
ドサッ!
「う・・・・。」
「・・・おい・・・。」
ん?私の下で声が聞こえる・・・。
「おい!いつまで俺の上に乗ってるんだっ!」
「え?」
慌てて身を起こすと、何と私の眼前にはアベルの顔があった。何故か彼は非常に戸惑った顔をしている。
ヒエエエエエッ!大変だ!攻略対象を押し倒してしまった!
「す・す・すみませんでした!ジョナサン様っ!」
私は急いで身体を起こすと、アベルがフイと私から視線を逸らせて立ち上った。
うわ・・余計に機嫌悪くさせちゃったかな・・・。
「本当に、申し訳ございませんでした!あ、あの・・お怪我はしませんでしたか?」
私は言いながらアベルを見上げると、私とアベルの視線がぶつかる。
「・・・・。」
アベルは何故か私を見下ろしたままポカンとしている。あれ・・・?もしかして何処か打ちどころでも悪かったかな?
その時、アベルの頬が土で汚れているの気が付き、咄嗟にその泥を落とそうとアベルの頬に触れた時・・・
「な・・・何するんだよっ!!」
パンッ!
その手を大きく振り払われてしまった。あ・・・そうだよね。私はアベルに嫌われている悪役令嬢エリス。大嫌いな女に触られるなんて嫌に決まっている。
それなのに・・・何故か私の手を叩いて振り払った瞬間、アベルがハッとした顔を見せたのが気になった。
「あ・・・。」
何故かばつが悪そうなアベル。
「失礼な事をしようとして、申し訳ございませんでした。」
よし、ここは素直に謝っておこう。
「い・いや・・・。そ、その・・・悪かった。いきなり手を叩いたりして・・。」
何故か若干頬を赤らめながら、なんと!アベルが謝罪してきた。え・・?あのアベルが大嫌いなエリスに謝罪・・・?
「い、いえ。いきなり無礼な真似を働いたのは私ですので・・・。」
改めて頭を下げると、アベルは鼻の頭をポリポリとかきながら言った。
「い・・・いや・・。き、気にするな・・・。」
へ?今何て・・・。その時私は気が付いた。何といつの間にかアベルの好感値が一気に10も増えている事に。
な・何で・・・いつの間に・・・?私は何もしていないのに・・・?
「それじゃ、仕事頑張れよ。」
最期にアベルはそれだけ言うと、背を向けてさっさとその場を立ち去ってしまった。
『おめでとうございます!ミッションクリアです。』
そして液晶画面が表示された—。
う~ん・・・。それにしても分からない。私は1人校舎のトイレ掃除をしながら先程のアベルとのやり取りを回想していた。一体何故だったのだろう?私の前に現れた時のアベルは確かに物凄く機嫌が悪かった。その上、好感度の数値まで下がって行った。なのに・・何故、数値が上がったのだ?思い当たる事と言えば・・・あの時かな?アベルの上に倒れ込んでしまい・・その後彼の頬に触れて・・。
そこで私はハッとなった。
そう言えば・・・アベルと言えば、ある意味物凄く純真なくらいピュアな男性だった。女性の免疫が極端に低い環境で育ってきたせいか、スキンシップ?に弱かったという事を今思い出した。ゲーム中でも確かヒロインとの最初の出会いがアベルが園庭で昼寝をしている所を、たまたま通りかかったヒロインがつまずいて転び、アベルの上に倒れ込んでしまったのがきっかけだったっけ・・・。
「な~んだ。それじゃ私、無意識のうちに同じような事していたんだ。」
思わず口に出していた。だけど、この先は慎重に行動しなければ。今回はたまたまアベルの好感度を上げるのに有利に事が進んだけども、忘れてはならないのが私とヒロインとの違い。
それは・・・このゲームはヒーロー達に徹底的に嫌われたエリスがメインのゲームだと言う事に。大抵の男性なら自分が大嫌いな女性から必要以上に接触されれば、ますます相手を嫌うに決まっている。
良し、今晩からはこのゲームの内容をよく思い出して、メインヒーロー達の性格をもう一度よく思い出しておさらいしておかなくては・・・。
「その為にも、もっともっとスキルポイントを貯めて、メイド力を上げないとね。」
私は自分自身に言い聞かせた—。
夜の6時—。
そして、この日も何とか1日一生懸命に働き、ようやく仕事が終わった時にアンが声を掛けて来た。
「ねえねえ、エリス。今夜はもう誰かと予定入れてあるの?」
「え?予定?一体何の事?」
ポカンとして私はアンの顔を見た。すると驚いたのはアン。
「嘘っ!やだ・・・知らなかったの?!」
「?知らないって・・・一体何の事?」
さっきっからアンは何を言ってるのだろう?さっぱり意味が分からない。
「うわああ・・・ありえない・・・。」
アンが大袈裟なくらいによろめいて私を見る。
「だから、一体何の事なの?」
アンの両肩を揺さぶって私は質問した。
「ちょ、ちょっと!ゆ、揺らさないでよ~っ!言う、今言うからあっ!」
「ふう・・・全く・・・。」
アンはメイド服の胸元を直しながら言った。
「いい?今夜はね、この学園の花火大会が行われるんだよ。」
ええ~っ!花火?!花火って、もしかして夜空に打ち上げるあの大きな打ち上げ花火の事・・・?
実は私は大の花火好き。自宅から行って帰って来れるくらいの距離で開催される花火大会なら何処にでも足を伸ばすほどの花火通なのだ。
「ほ、本当?!何時からやるの?!」
「夜の8時からだよ。ほら、この学園の近くにある湖で打ち上げるんだよ。私はガルシアと一緒に行くけど、エリスはどうするの?もし誰とも行く予定が無いなら私達と一緒に行く?」
・・・冗談でしょう?恋人達との仲に割り込むほど、私は野暮な女では無いのだよ。
「うううん、大丈夫。私は1人で観に行くから気にしないで、ガルシアとのデート楽しんでね。」
「いやだ~デートだなんて~。」
アンは頬を押さえて腰を振りながら照れている。はいはい、ラブラブなんですね~。
どのみち、私は1人で観ようが大勢で見ようが花火さえ見れれば満足なのだ。
「さて・・・何を着て行こうかな・・・・。」
自室に戻った私はクローゼットから自分の私物の服をベッドの上に並べた。
が・・・。
「う~ん・・・。やっぱりこのゲームのクリア後の世界だから・・・ものの見事にエリスの私物が没収されたようだなあ・・・。大した服が無いじゃない・・・ん?」
その時、ピロンと液晶画面が現れた。
『おめでとうございます。これまでゲーム中で全てのミッションをクリアされた方にスペシャルなプレゼントをご用意しました。これよりフリーモードに入ります。素敵な夜をお過ごし下さい。』
うん?素敵な夜・・・?一体何の事?
そして突然パッと空中から大きな箱が現れたのである。
「わっ!びっくりした!」
ボフンと音を立て箱がベッドの上に落ちて来る。
「え・・・・?一体これは何・・・?」
恐る恐る箱を開けて中を見て・・・私は息を飲んだ。
何とそこには浴衣セットが入っていたのである―。
「うわああーっきれーい!」
ここは湖で行われている花火大会。私は集団から少し離れた静かな湖のほとりで1人花火を鑑賞して楽しんでいた。
いや、最初は皆と同じ場所で見ていたんだよ?だけど私の人目を引く浴衣姿と嫌われ者のエリスが来ていると、学園中の生徒達がジロジロ私を見る物だから、群衆から離れて、静かな場所で花火を楽しんでいたと言う訳。
あーでも楽しいなあ。ずっとメイドの仕事で頑張って来たから、今回の花火大会の企画はひょっとしたらこのゲーム会社の私に対するちょっとしたご褒美だったりして・・・・。
等と様々な事を考えていたので、私はちっとも気が付いていなかった。
背後から近付いて来たある人物に—。
「おい、ここ・・・一緒に観てもいいか?」
不意に声を掛けられた。え?誰だろう。
振り向くと、何とそこに立っていたのはアベルだったのだ。
「ジョ、ジョナサン様?!な、何故こちらに?!」
私が慌てて立ち上ろうとするとアベルが言った。
「あ~別に立たなくていい。」
そして何故か私の隣にドカッと腰を降ろす。え・・・?どういう事・・?
「あの・・・ジョナサン様・・・?な、何故・・・こちらに・・・?」
「・・・。」
しかしアベルは答えない。
「ジョナサン・・・様?」
「・・・見えたから。」
うん?何て言ったのだろう?聞き取れなかったなあ?首を傾げるとアベルが再び言った。
「お前が、こっちに歩いて行く姿が見えたからだっ!」
「え・・?」
「な、何だよ。何か文句でもあるかっ?!そ、それとも・・・お、俺が邪魔かっ?!」
暗闇でアベルの顔は良く見えないが、何やら焦った様子が手に取るように分かった。
「いえ、邪魔って事は無いですよ?」
私はアベルの顔をじっと見た。
「な・何だ・・・?お、俺の顔に何かついてるのかっ?!」
いえ・・・ついてると言うか・・・・何故?何故?好感値を表すハートが今は見えない訳?!な・謎過ぎる・・・。
「い、いえ。何もついておりません。相変わらず凛々しいお顔だなと思いまして。」
胡麻をすったつもりだったが・・・・確かに、このアベルという男性、背は低いけど、流石メインヒーローだけあってイケメンなんだよね~。
「な・な・何いってるんだ?!いきなり!」
あ、怒らせちゃったかな。
「いえ、すみませんでした。出過ぎた事を言ってしまいました。」
怒らせたら厄介だ。花火もゆっくり鑑賞したいし・・・謝って置こう。
そして私は再び花火に目を向けた。
上空に浮かんだ花火が湖面に映し出され、キラキラ光ってとても綺麗だ。
「綺麗・・・・。」
思わず口に出して言うと、隣に座っているアベルも言った。
「ああ・・・綺麗だな・・・。」
おお!気が合う!そう思ってアベルを見ると、何故かアベルは花火では無く私の事をじっと見つめていたのだ。
「ジョナサン様?・・・花火は向こうですよ?」
すると、何かに撃たれたかのようにハッとするアベル。
「う・う・うるさいっ!そ、そんな事分かってるっ!」
そして視線を逸らし、花火を見た。その後は花火が終わるまで2人でじっと鑑賞をし続けた—。
「寮まで送る。」
帰り際の事—。突然アベルが言った。
「はい?!ほ、本気ですかっ?!」
「な・何が本気ですかだっ!い、一応仮にもお、お前は・・女だから・・・送ってやると言ったんだっ!」
「やめておいた方が良いですよ?」
「何故だ?」
ムッとした表情をされてしまった。
「いいですか?私は嫌われ者のエリスですよ?私と一緒にいたらジョナサン様の評価が下がってしまいます。」
「俺の為を思って・・・言ってるってわけか・・?」
何故か傷付いたような顔をされてしまった。
「それは多少はありますが・・・。」
ああ・・・・もう正直に言うしか無いか・・・。
「では正直に申し上げます。ジョナサン様は白銀のナイトでこの学園のスターです。そのスターと一緒にいると、只でさえ嫌われている私の風当たりが強くなるんですよ。」
言うと下を向いて、思わずため息をついてしまった。は!ま・まずい・・・思わずため息をついちゃたよ。
「そう・・・か。悪かったな。気が付かなくて。」
え?今・・・謝った?
顔をあげると、そこには驚く程至近距離のアベルが私の事を見下ろしていた。
「ジョナサン・・・様・・・?」
「・・・中々・・・いいものだな。」
「はい?」
何がいいものなのだ?
「自分より背が低い女を見下ろすのは・・・。」
意外な台詞をアベルが言った。
え・・・?
「あ、あの・・・?」
戸惑いながら声をかけると、アベルは今迄一度も見せた事の無い笑顔で言った。
「お休み。エリス。気を付けて帰れよ。」
そして私に背を向けると立ち去って行った。え・・・?一体今のは何だったの?!
その時、ピロンと音が鳴って私の前に液晶画面が現れた。
『おめでとうございます!ミッションクリア、大成功です!これよりアベル・ジョナサンが通常モードから恋愛モードへと移行します。この調子で今後も頑張ってミッションクリアを目指してください。』
そして最後にこう表示された。
『第3日目終了』と―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます