出会い
11月の交通安全教室に向けて部室で台本とユングを作っていたとき、ぼくははじめて安藤さんに出会った。ぼくに安藤さんを紹介したのは同じく手話・ボランティア部に所属している羽衣さんだった。安藤さんは巨大な胸とお尻を持っていて、すごく太っていた。安藤さんと会ったのは8月がはじめてだったが、羽衣さんがいうには安藤さんも部のメンバーの一人らしかった。
安藤さんは「岡部さんってすごくやせてますね。体重何キロなんですか?」と言った。ぼくが「55キロぐらいです。安藤さんは何キロなんですか?」と応じると、安藤さんは「100キロと110キロの間です」と答えた。そのあとの会話は次のようなものだった。
「どうしたらそんなに痩せられるんですか?」
「体質かなあ。安藤さんはどうしてそんなに太っているんですか?」
「わかりません。意思が弱いからかな」
「太らなければいけない理由があるんですか?」
「ありません」
「もっとゆっくり考えていいですよ」
沈黙。
「きっと太っていることにもなにか良い点がありますよ」
沈黙。
ぼくの何気ない一言のせいでそれから一週間、お盆休みのあいだじゅう彼女はその体重を維持するメリットはなにか考えつづけるはめになった。
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