幕間
さて、漫才の途中ですがここでちょっと深呼吸。みなさんお昼ごはんが終わって眠くなってきたころでしょう。伸びをして眠気を覚ましてください。みなさんはまだ子供といわれる年齢ですが、ぼくにも子供のころがあった。ぼくは子供のころ、いろんなものが怖かった。夜寝るときに、電気を消して横になって白い漆喰塗りの天井を見ていると、ときどき光がぶわーって通っていった。今思うと自動車のヘッドライトなんだけど、子供のころはうわーなにかが家のまわりを取り囲んでいると思って、すごく怖かった。
ぼくはお父さんの記憶ってほとんどない、いつも家に帰ってくるの遅かったから。でもお父さんの葬式のことはよくおぼえている。それまであんまりかいだことのなかった線香のにおいが、鼻について体に染み込むような感じがした。骨上げのとき、みんなが箸でつまんで骨を壺に入れているのがすごく気味悪かった。
骨をお墓に収めると、親戚のだれかが「お父さんは天に召されたんだね」と言って、私の頭をなでた。後で「お父さんは天に召されたっていわれた」と母に報告すると、母は「キリスト教ではそういう言い方をするの」と教えてくれた。それで子どものころのぼくはキリスト教の神は人間を食べるのだと思い込んだ。おそらく「召し上がる」という語との連想からそういう勘違いしたのだろう。本当にお父さんが神に食べられたと思ったわけではない。ただ、キリスト教徒はそういう神を信仰しているのだと思った。
ぼくはそれ以来たびたび、骨を食べる夢をみるようになった。骨を食べる夢をみた日は夜まで食欲がなくなった。
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