第三章 第四話「なんか邪魔してくる剱さん」
キャンプの準備が何もできていないのに、下校のチャイムが鳴るまであと一時間も残されていない。
うちの学校は時間に厳密なので、よっぽどのことがなければ居残りは許されない。
楽しみにしているキャンプに行くためには、この一時間が勝負だった。
「ごめんね……千景ちゃん。こんなポンコツのお姉さんで……」
「ほたかのせいじゃ、ない。ボクも忘れてた」
落ち込むほたか先輩に引きずられるように、千景さんも
「……覚えてたら、プリンなんて持ってこない……。副部長、失格。……全部、ボクのせい」
「うわぁ~~! 千景さん、
二人とも、基本的にはすごい人のはずなのに、どうやらメンタル面では
千景さんは知っての通りだし、ほたか先輩も思い起こせば、私が入部するしないというだけで一喜一憂していた気がする。
そういう弱い部分は親近感がわくけれど、今はなんとか立ち上がらなければならない。
私は元気づけようと、必死に二人に言葉をかける。
「千景さんはすごい人なんです。私、知ってますから! 全力でサポートするので、頑張りましょう!」
「ましろさん……」
「ほたか先輩だって、なんでも背負い込む必要はないんですよっ。指示してくれれば動きますから!」
「……お姉さんにできるかな?」
すると剱さんも私の横にしゃがみ込み、先輩たちの手を握った。
「そうっすね。
私たちの言葉が届いたのかもしれない。
千景さんの目には光が宿り、立ち上がる。
「ほたか。……ボクたちがこんなんじゃ、困らせるだけ。やろう」
そう言って千景さんは黙々と動き始めた。
千景さんに引っ張られるように、ほたか先輩も立ち上がる。
「えっと、千景ちゃんにはコッヘルとかバーナーとかの道具をお願いしようかな。お姉さんはテントとシュラフとかの点検とパッキングと、えっと……えっと……」
「あの。アタシらは何をすれば?」
「えっと……えっと……」
ほたか先輩は妙にうろたえており、上手く指示が思いつかないようだ。
もしかすると、想定外のことに弱いのかもしれない。
「ほたかはテントの点検と……パッキングをしてくれれば、いい。後は、ボクが」
そう言って千景さんは部室の棚やロッカーを開け、次々と荷物を取り出している。
さすがに銀髪の『ヒカリさんモード』になっていないので店員の時のような
しかし、棚の高い場所には手が届かないようだ。
千景さんが頑張って手を伸ばしているので、私は手伝おうと駆け寄る。
すると、横から剱さんの手が伸びて、棚の荷物をさらっていってしまった。
「あ……」
偶然おなじ荷物を取ろうとしたのかと思い、しかたないのでその隣の荷物に手を伸ばす。
すると、隣の荷物までも剱さんが奪うようにつかんでしまった。
どうして邪魔をするのかと思って剱さんのほうを見ると、なぜか、これ見よがしと言わんばかりに鼻息を立てている。
「あ、あぅ。……私も手伝いたい……」
「
「あぅぅ……」
いつの間にか剱さんと千景さんがペアとなって動き、私だけが何もせずに呆然と立ち尽くしている状況になってしまった。
さっきから感じていた剱さんの違和感が際立ってきた。
剱さんって、千景さんと一緒に居たいのだろうか?
なんか不機嫌なのって、私が千景さんと仲良くなったせいなのかな?
どうなんだろう。わからない。
剱さんの事は、そういえば何も知らない。
剱さんのことが無性に気になり始めてしまった。
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