第三章 レトロアメリカン
十一月も下旬となり、都心のほとんどの並木は、葉を落としてしまっていたが、今、悟郎が車を進めている道路の両脇は銀杏並木でまだ落葉しておらず、黄色く色付いている。
悟郎は、聡理との待ち合わせ場所である神楽坂の赤城神社入り口付近の路上に、シボレー・シルバラードを停車させた。道路が空いていたので、予定の八時より十分ほど早い。まだ聡理は来ていないようなので、窓を開けて煙草に火をつけた。深く吸い込み、外に向けてふーっと煙を長く吐く。赤城神社の黄葉した銀杏が目に入る。背景の青空が眩しくて思わず目を顰めた。
今日は、行方不明になっている家政婦について、軽井沢に出向いて調査することになっていた。運転手の沢柳雅彦に対しては、その後も再三の要請をしたが、法廷で証言するなどという大それたことは、自分には到底できないと、拒絶一点張りであった。そこで、先ずは大里サチの行方を探すことに全力を挙げることにしたのであった。
「お待たせしました!」
小走りに歩み寄ってきたのは、アメリカン・グラフィティから抜け出したようなレトロファッションの女性である。カチューシャ風にバンダナを巻いた髪、ぴっちり半そでの黒いブラウス、ボトムはボリューミーなフレアスカート、そして両手には手袋という出で立ちで、バンダナ、スカート、手袋は同色の臙脂色でコーデしていた。車に近づき立ち止まったその女性は、ダークグレーのコートを左手に、大きな旅行バッグを右腕にかけて息を弾ませている。悟郎は、自分に話しかけられたとは思わず、窓から首を出して周囲見回した。しかし自分の他に誰もいない。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
もう一度呼びかけられて、どうやらその女性が聡理らしいと気づき、あわてて車から降りる。
「マジ! 三沢さん?? どうしたんです、その恰好」
今日の聡理はメイクもばっちりで、これでは分からないはずだ。素顔は幼い感じの顔立ちとの第一印象だったが、今日の聡理は、下がり気味の眼にアイラインをしっかり入れて、眼力がアップしている。化粧で女性は変わるものだと、その変身ぶりに驚く。
「矢吹さんの車が、外車のピックアップって聞いたので、それに合わせたファッションにしてみたんですが、いけなかったでしょうか?」
「いや、いけないわけじゃないが」
「それじゃ、私に似合わないと」
途端にしょげて、拗ねる風の聡理を見て、悟郎は、〈意外と面倒な女かも〉と心中思いつつ、フォローする。
「いやいや、そうじゃないよ、とっても似合ってる。うん、なかなかイケてるよ」
聡理は、悟郎の言葉に、素直に反応して笑顔になると「素敵な車ですね、私、こんな車に乗りたかったんです。アメリカにいた頃、友達が自慢げに乗り回していました」といかにも嬉しそうである。
「あぁ、三沢さんは帰国子女でしたね、それならよく知っていると思うけど、この種の車はアメリカでは若者を中心に絶大な人気があるんです」
悟郎は、自分の車を褒められて正直うれしい。それに若い女性と二人でドライブすることもうれしい。我ながら、根が単純な奴だと自嘲する。
「よーし、それじゃ行くとするか」
悟郎は右側の助手席のドアを開け、聡理が乗り込むのをエスコートした。
平日ということもあり、途中さしたる混雑はなく、カーオーディオから流れるオールデイズを聞きながらのドライブはすこぶる快調であった。車で、都心から軽井沢に行くには、首都高速を経て関越道に入り、藤岡インターで上信越道に進む。そこからしばらくすると横川サービスエリアがある。悟郎は、軽井沢に行くとき、このサービスエリアで休息をとり、名物の峠の釜めしを食べることを常としていた。十時少し過ぎであったが、聡理に釜めしを勧めると、ご当地グルメに嵌っているとのことで是非食べたいという。そこでこの日も横川サービスエリアに車を乗り入れ駐車したのであった。
聡理は、コートを着ることなく、大きなバッグを抱えて車を降りた。半袖じゃ寒いだろうし、周囲の目もある。コートを着ればいいのにと心中思いつつ連れ立ってレストラン棟へ向かった。平日の午前中だが、横川サービスエリアはかなりの人出があり、行き交う人が聡理のことを二度見、三度見している。しかし聡理はそんな視線に全く動じないで、悟郎にまとわりつくようにして歩くのだった。
聡理は今時の娘らしくほっそりした体形をしていたが、いわゆる痩せの大食いのようで、釜めしをぺろりと平らげると、着替えてくると言って大きなバッグを持ち、席を立った。悟郎が煙草を吸い、コーヒーを飲み、スマホのメールチェックなどをして待つこと二十分程、やっと聡理が戻ってきた。
「お待たせしてごめんなさい」
黒のパンツスーツ、大きな丸メガネ、髪は丸いお団子にして頭に載せている。化粧を落としてほとんどすっぴんのようである。もとの垂れ目顔になったが、それはそれで愛嬌がある。
「ホントはこんな格好したくないんだけど、お祖父様がうるさくて」
「お祖父さんって三沢法律事務所の所長のこと?」
「えぇ、弁護士は信用と品位が何より大切っていうのが口癖なの。特に若い女性弁護士は、相手に軽んじられないように服装に注意しろって、でもこんな格好一時間も着ていると息が詰まる」
「仕方ないだろ、誰だって職業に合わせたそれらしい格好してるんだから。こんな俺だって仕事で人と会う時は、一応ジャケット着てるぞ」
「そうね、我慢するわ。その代わり仕事以外では、思い切り好きなファッションにさせて下さいね」
聡理はコスプレすることで、日々の自己から解放され、何とか精神のバランスを取っているのではないかと悟郎は見ている。両親の離婚のため、聡理は幼いころから、祖父母に育てられたらしい。親の愛情に飢えた幼少時代を、今も引きずっているのでかもしれない。悟郎はどう返事したらよいか迷う。聡理はそんな悟郎の思惑など知ってか知らずか、大きなバッグを抱えて助手席に乗り込んだ。
碓井軽井沢インターを降り、県道四十三号を経て、軽井沢の街中に向かう。目指すはサカグチ家政婦紹介所である。大里は、この紹介所を経て長瀬家の家政婦になったことが分かっていた。
サカグチ家政婦紹介所には、簡単に到着することができた。カーナビはこんな時とても重宝する。悟郎は、その狭い駐車場にシルバラードをなんとか押し込んで、聡理と連れ立って紹介所のドアを開けた。訪問することを事前に連絡していたので、所長の坂口が待ち構えていて、二人を室内に迎え入れた。
坂口は、七十歳台と思える高齢の女性であったが、長年、仕事を切り盛りしてきた人ならではの、貫禄を備えていた。
「ずいぶん若い弁護士先生ね」
坂口は、聡理から渡された名刺を眺め、率直な感想を述べた。
「それで、あなたが電話をくれたヘッドハンターってわけね」
「はい、矢吹悟郎と申します。どうぞよろしくお願いします」
悟郎は、丁重に挨拶した。というのも、家政婦紹介もヘッドハンターも、大きな括りでは人材紹介業であり、坂口は同業の大先輩にあたるからである。
「大里さんについて知りたいんだったわね。折角遠くから来て貰ったけど、果たしてお役に立てるかどうか」
「いえ、調査のとっかかりになるような些細なことでもいいので、是非ご存知のこと教えて下さい」
悟郎の言葉に合わせて、聡理も神妙に頭を下げる。坂口は、そういうことなら、と前置きして話し出した。
「大里さんが私のところに来たのは六年ほど前だったわ。その前は、この近くの菱野温泉の旅館で住み込みの仲居をやっていたんだけど、その旅館が廃業してしまい、どこか住み込みで働ける先はないかって訪ねてきたのよ。年齢は六十を少し過ぎていたけど、家政婦は健康なら高齢でも働けるから、あちこち紹介したの。だけど、どこも断られてしまってね。大里さんには身寄りがなくて、身元保証人が誰もいなかったのよ。仕方ないので、この事務所の二階に住まわせて、病院の付き添い介護とか短期の仕事を、いろいろやってもらっていたの」
「そんな大里さんを長瀬家は雇ってくれたんですか?」
聡理が疑問を口にする。
「そうなのよ、住み込みで働ける家政婦を至急紹介して欲しいって申し込みがあってね、すぐ紹介できるのは大里さんしかいなかったんで紹介したら、すぐにも雇いたいっていうじゃない、でも後で悶着起すの厭だから、大里さんは、身元保証人となるような身内がいませんよってはっきり言ったのよ」
「えぇ、そうしたら」
「それでも構わないって、認知症気味の父親が軽井沢の別荘で暮らすことになったので、世話をする人がすぐにも必要だというの。まぁそんなことで、大里さんは長瀬家の家政婦として雇われたんだけど、その後何事もなく上手くやっていたようね。でも三か月ぐらい前、あなた方も知っての通り、世話をしていた認知症の父親が死んでしまったの、そうなると家政婦はいらないわよね、それでお払い箱ってわけ」
「大里さんは、次の仕事を頼みにここへやってきたんじゃないですか?」
聡理が意外にも的確な質問をするので、悟郎は感心する。
「長瀬家の家政婦を辞めることが決まって、一度、ここに挨拶に来たんだけど、年を取ったし、長年、少しずつ蓄えた貯金もあるんで、もう家政婦の仕事はやらないって言って帰っていったわ」
「身寄りがないってことでしたが、どこか行く宛てがあったんでしょうか?」
「私もそれが気になって聞いたんだけど、行き先はまだ決めてないようだったわ。あまり言いたくないようなのでそれ以上のことは聞かなかったけどね。あぁでも、昔、世話になった人が横浜にいるので、今後の身の振り方を相談してくるという様なことは言ってたわ」
「そうなんですか」
聡理は帰国子女のせいか、喜怒哀楽が表情や態度にすぐ出る。この時も失望感丸出しで肩を落とした。
「でも、私には行く先を言わなかったけど、雇い主だった長瀬さんには知らせているかもしれないわ。長瀬さんに聞いてみたらどう?」
聡理のがっかりする様子を見かねて坂口が言い足す。
「そうですね、それじゃこれから早速、長瀬家の別荘に行って聞くことにします。矢吹さんいいでしょ?」
聡理は、一転元気に悟郎に同意を求める。
「そりゃ行くのはいいけど、こんな季節に別荘にいるかな」
「そうね、父親が生きてらした頃は、一年中別荘に住んでいたけど、亡くなった今はどうかしらね」
坂口が悟郎に同感の意を示すのを聞いて聡理はまたしても悄気返る。
「でも、とりあえず行ってみよう。誰もいないかも知れないけど、別荘の様子を見るだけでも何かの参考になるからね」
悟郎はそう言って励ましたものの、聡理の感情の起伏の激しさに閉口気味であった。
悟郎が運転するシルバラードは、上の原別荘地の幹線道路から反れて、狭い道路へと進み、今丁度、長瀬家の別荘入り口の浅間石の門柱のところに到着したところであった。左側の門柱には“これより私道、立入禁止”、右側の門柱に警備会社のロゴマークの入った小さな看板がそれぞれ貼り付けられている。
「弁護士先生、この先進んでも構わないでしょうか?」
門柱の看板を見て悟郎は、聡理に聞く。
「ちょっとそれはまずいかも、不法侵入罪に問われる可能性があります」
「でも、用事があって別荘を訪ねるんだから構わないのと違うかな」
「うーん、それもそうね、ちょっと待って下さい」
聡理は、バッグからタブレットを取り出し、何やら検索しているようだったが「用事がある者が、私道を通行しても、道路所有者の受忍限度を超えることはないと思料されます。なので、このまま進みましょう」
「ラジャー、出発進行!」
車が一台やっとすり違える程の砂利道にピックアップを乗り入れる。両側は鬱蒼とした針葉樹の林で昼というのに薄暗い。左カーブを回り込むと、その先は緩やかな上り坂になっている。その坂の上に、山荘風の別荘が建っていた。
別荘は平屋建てだが、会社の保養所ほどもあろうかと思われる大きな建物で、玄関には立派な車寄せまで付いていた。しかし、建物全体は寒々としており、誰も住んでいない感を漂わせている。悟郎は念のため、玄関ドアのインターホンのボタンを押してみた。更にドアも何回か叩いてみたが、なんの反応もない。
「やはり誰もいないようだ」
先ほどまで快晴だったが、午後になって雲が上空を覆うようになってきている。おまけに風も出てきて、周囲の針葉樹の林を揺らした。
「人の住んでいない別荘って、なんだか薄気味わるい」
晩秋の軽井沢は、日差しが途切れると急に冷え込む。聡理はコートの襟を立て、身を竦ませて心細げに辺りを見渡した。
「折角ここまで来たんだ。ぐるっと別荘を見て回ろう」
「いやそれは・・・そこまでやると立派な不法侵入になっちゃいます」
「それじゃ三沢さんはここに残っていて下さい。俺一人で見てきます」
「待って下さい。私も行きますよ。置いてけぼりにしないで下さい」
聡理は悟郎のダウンジャケットの袖を掴んで放さない。それにしても、実に情けない顔をしている。
「それじゃ一緒に探検に行くとしますか」
悟郎が先に歩き出す。聡理は、少し躊躇していたが、慌てて後を追った。
奥へ進んで分かったのだが、建物の周辺の所々に防犯カメラが設置されている。仕方ないので建物に近づくことを避け、遠目にぐるりと観察して元の場所に戻った。別荘の周りは、針葉樹の自然林で囲まれていて、拓けた所といえば、車寄せがあるエントランス部分とその先のカーポート、あとは建物の南側の一角が僅かに芝生の庭になっているだけであった。カーポートは簡易屋根がついており、四,五台駐車できる広さがあった。
遅めの昼食をとり、次に向かったのは軽井沢警察署であった。聡理が、長瀬竜造の不慮の死について不審な点が全くなかったか、念のため確認したいと言い出したからである。悟郎もかねて気になっていたので、その申し出に異存なく、軽井沢署の安西刑事に面談の連絡を入れたのであった。
軽井沢警察署は、周辺の景観にマッチさせる意図であろう、一部が三角屋根の形状をした二階建てで、一般的な警察署のイメージから、かなりかけ離れた造りであった。中軽井沢の駐在所も三角形の屋根であったから軽井沢警察署の統一コンセプトによる設計に違いない。
受け付けで安西刑事と面談の約束をしていることを告げると、応接コーナーに案内された。安西刑事はすぐに現れ、互いに挨拶を交わすと、安西は「その節は、ご協力いただきありがとうございました」と悟郎に向け如才なく言い、次に聡理にも「この季節の軽井沢は寒いでしょう」と、気さくに話し掛けた。歳の頃は五〇歳前後といったところか、当たりは柔らかいが、刑事らしい鋭い眼光の持ち主であった。
「ええ、これほど寒いとは思いませんでした」
「標高がなんせ千メートルですからね、もう夜間は氷点下ですわ。夏はいいが、冬はとてつもなく寒い上に湿気が多くてホント嫌になります」
「そうなんですか!」
聡理は、素直に驚いている。
「ところでご用件は?」
「実は、長瀬竜造氏が亡くなった後、遺産相続についてトラブルになりまして」
と前置きして、聡理は、訴訟に発展した経緯を簡単に説明した。
「成程、それで、長瀬竜造の交通事故の件について聞きたいと」
「ええ、何か不審な点はなかったのかお聞きしたくて」
「ふむ、不審な点とは、具体的にはどのようなことを想定しているんでしょう」
「例えば、保護責任者遺棄罪に触れるようなことはなかったかということです」
「認知症の老人がトラックに轢かれたんだから、家族の責任はどうなんだというわけですな」
「ええ」
「弁護士のあなたには釈迦に説法ですが、認知症の老人が徘徊して交通事故に遭うというのはよくあることで、よほどのことじゃないと保護責任者遺棄罪に問うことはできません」
「保護しないと生命に危険が及ぶ状態での放置しか適用にならないのは分かっています。でも、三ヶ月ほど前に夜の国道を徘徊していたのですから、家族は同様なことが、また起こり得ると予見できたはずです。充分な徘徊防止策を講ずるべきと思いますが」
誠に弁護士らしい指摘である。
「長瀬家では、夜の国道で徘徊して保護されたその以降、掛かり付けの医師から睡眠剤を処方してもらい、就寝前に竜造に飲ませていたということで、その後は夜間に徘徊することはなかったそうです。就寝後も、時々様子を確認するなどの対策を講じていたということなので、それなりに策を講じているんで罪に問うわけには行きません。まさか部屋に鍵かけて、閉じ込めておくわけにもいきませんからね」
聡理は安西の説明に納得したようだが、悟郎は、しぶとく食い下がった。
「しかしですね、長瀬家の誰かが、認知症の竜造を連れ出して国道付近に置き去りにしたらこれは犯罪ですよね」
「おっしゃる通りです。実は我々もその点について調べました。疑わしきは調べる、まぁ刑事の習性のようなもんですな」
安西はにやりと笑い、調査の概要を二人に説明をした。
「事件の数日後、長瀬家の別荘に行き関係者から話を聞きました。聴取したのは,長瀬彩乃、 家政婦の大里サチ、それに運転手の沢柳雅彦の三人です。竜也は、週末にしか別荘に来ないし、事件のあった夜も別荘にはいなかったので聴取していません。彩乃は、事件のあった夜は、いつものように七時過ぎに夕食を取り、風呂に入って後、自分の部屋で好きな音楽を聴いていたとのことでした。家政婦の大里と沢柳は、八時頃、台所で夕食をとり、その後ずっと一緒にフィギュアスケートの中継などを見ていたそうです」
「竜造が家を抜け出したのを、誰も気が付かなかったのですか?」
「家政婦が、夕食を済ませた九時ごろ竜造の寝室を確認した時は、確かにベッドに寝ていたそうです。抜け出したのは、その後ということになりますが、家政婦と運転手は、テレビの中継に夢中だったので、何も気が付かなかったようですな」
「彩乃さんは、音楽を聴いていて気が付かなかったという訳ですね」
「その通りです。何時ものように十時ごろ家政婦が竜造の部屋を確認すると、もぬけの殻なので大騒ぎとなったということです」
「竜造は九時以降に、別荘を抜け出し、徘徊の上、国道でトラックに撥ねられたという訳ですね」
「そういうことになりますな。とにかく特に疑わしいことはないということです。まぁ、以前にも徘徊して国道で保護されたという事実があるので、今回の事件も、徘徊の上、撥ねられたと考えるのが妥当という訳です」
「はぁ、なるほど」
「さてと、私はこれから会議に出なけりゃならんのでこれで失礼します」
「あっ、どうもお忙しいところお邪魔して申し訳ありませんでした」
「いろいろ教えていただきありがとうございました」
悟郎と聡理は立ち上がり謝意を表した。
「しかしなんですな、遺産は莫大でその相続を巡ってトラブルが起きたってことになると、なにやら匂わんでもないですな」
「えっ?」
聡理が驚いて身を乗り出す。
「いや、なんでも疑ってしまうのが刑事の性ってやつでね。聞き捨てて下さい」
安西は、そう言い残して立ち去った。
軽井沢警察署を出た時はすでに午後四時を少し回っており、夕闇がすぐそこまで迫っていた。二人は何か釈然としない気分を抱えたまま、東京に戻るべく二人はシルバラードに乗り込んだ。
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