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次の日の朝、朝食を食べてすぐ後に、ルーカス・アバントゥーラがすっかり荷造りを済ませて出てきて、Aたちに言った。
「勝手なことを申すようで、たいへん恐縮ですが、わたくしはもう帰らせていただきます」
Aたちを代表して、Aが答えて言った。
「そうですか。できれば、もっといてほしかったのですが。ルーカス・アバントゥーラよ、バカンスはいかがでしたか?」
「はい。わたくしたっての希望で、このような辺境の地に、みすみすやってきてしまったときには、どうなることかと思いましたが、有体に言えば、バカンスは最高でした」
「そうですか。それはよかったです。もう発つのでしたら、駅まで送りましょう」
ルーカス・アバントゥーラは言った。
「お言葉を返すようで、たいへん恐縮ですが、心配ご無用です。迎えの者がまいりますから」
「迎えの者が? 迎えの者が、わざわざ列車に乗って、駅まで来るのですか?」
「いいえ、そうではありません。いきなりのことで、ご迷惑をおかけしますが、迎えの者は、駅ではなく、ここにやって来ます」
「ここに?」
「はい」
Aたちと、ルーカス・アバントゥーラは、家の外に出た。すると、ルーカス・アバントゥーラが、空の彼方を指さして言った。
「あれをご覧ください。ご都合主義的なことに、たったいま来ました」
見ると、山の向こうから、小型の飛空艇が、Aの祖父母の家の地所のほうに、ぐんぐん近づいてきていた。
飛空艇を見て、Aの妹は言った。
「お兄さま。わたくし、飛空艇なんて、初めて見ましたわ」
「ああ、わたしもだ。妹よ」
「もしかして、ルーカスさんは、お金持ちのご子息なんじゃありませんの?」
「……」
そうかもしれなかった。ルーカス・アバントゥーラに真相を尋ねたところで、『お答えしかねます』という返事が返ってくるのは、目に見えているから、みんな黙っていたが。
ルーカス・アバントゥーラを迎えにきた飛空艇は、向こうの台地に着陸した。
ルーカス・アバントゥーラは、台地に着陸した飛空艇の前で言った。
「それでは、わたくしごとでたいへん恐縮ですが、わたくしは、一足先に、失礼いたします」
飛空艇に乗り込もうとするルーカス・アバントゥーラに、Aは大声で呼びかけた。
「ルーカス・アバントゥーラよ! あなたは何者ですか!」
ルーカス・アバントゥーラは言った。
「たいへん恐縮ですが、その質問には、お答えしかねます」
ルーカス・アバントゥーラが飛空艇に乗り込むと、飛空艇はもと来た方角に飛び去っていった。
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