第46話 恋の季節

 後夜祭後…カップル達が大量発生した。

 俺とシーラは皆のラブラブな心の声が聞こえまくるので大変な被害を被った。授業中もだ。


(はぁ…早くお昼にならないかな?…俺の為に手作りランチをご馳走してくれるって彼女が言うし…楽しみだわ)


(早くお昼になって彼にあーんして食べさせたりしたいなっ!うふふデザートは私?きゃーっ!!)


 みたいな浮かれた心の声があちこちで聞こえて皆授業なんて聞いてないなこれ。


 完全に恋の季節モードでそれは教師側にも影響していたりする。後夜祭で仲良くなった秘密の生徒と教師とかもユストゥスに漏れずゴロゴロいるんだから。人気のない所を通るともうアウトである。やらしい声に心の声にハートが飛び交い、この学院とんでもないことになってんぞ!!と言いたくなるわ!


 この前なんかなんとロッカーの中でガタガタしてる音が聞こえたから俺はそのロッカーこっそり倒して出れなくしときました。バカ供が!!


 皆ザシャやフェイトを見習って心にシャッターしてほしい!!まぁ無理か。


 昼休みにいつもみたいに食堂に行こうとするとシーラかやってきて、


「ヴィル…今日は二人きりで食べようよ?寮のキッチンで作ってきたの…」

 と赤い顔で言う。

 うぐっ!!


 いやいや、定番だけど!!


「シーラ…人気のない所なんてもはやないぞ!?お前も判るだろ?そいいうとこは皆先客がいるんだよ。後夜祭が終わってからな」


「うん!判ってるよヴィル…だから…空に行こう!」

 とシーラはバサリと背中から翼を出した!!


「お前な!空でどうやって食べるんだよ!空中に庭園とかないんだからなっ!!あほめっ!」


「そっかあ…イチャイチャなら空ならと思ったけど…お弁当食べれないね!」


「俺は当分お前とイチャイチャしないぞ。皆のを見て判るだろ…。すげえうぜえ…」

 と言うとシーラはショックで青ざめた。


「ええー!?皆盛り上がっているのに何で私達だけ!!?」


「そもそも皆がしてるからしようというのがおかしいんだよ!流行りか!?イチャイチャは!」


「流行りだよ!!」

 とシーラが言う。まぁそうだが。


「いいか、シーラ…俺には…やらなくちゃならないことがあるんだ!この数年で大きな天体望遠鏡やプラネタリウム工事に惑星の軌道も調べる。お前とのイチャイチャなんてその後だ!」


「ふえ?なんかわかんないけどそれヴィルがやらなくちゃならないことなの?指示だけ出して誰かにやらせれば?王子様なんだから」


「もちろん、細かいことは学者を集めてたりしている。だがまだ皆、惑星や天体といった認識が薄い。本当なら打ち上げロケットくらい開発して宇宙からこの星を中継とかできたらと思うがまだそれの技術やそれに値するものは不可能だろうしな」

 と父上の前世知識やザスキア様の教えにより俺は宇宙や宇宙飛行士、ロケットなどの知識を持つが、この世界の技術では到底無理だろうし、隕石をズラすにはシーラとの協力次第だ。


「あの…シーラ、ヴィルの言ってること半分以上解んない…。学者みたいヴィル」


「お前は解んなくてもいいんだよ、今は!その時になったら話すから待ってろ…」

 シーラはキョトンとしていたが


「よく解んないけどヴィルが言うなら判った…。でもイチャイチャ禁止はやだな…」


「だからなぁ、今どこもかしこもイチャイチャでいっぱいだろ?判るだろ?どこも空いてないんだよ!」


「むー…判るけど…」

 と膨れるシーラ。


「どこかにヴィルと二人でイチャイチャできるところないかなぁ?」

 目的がもうイチャイチャかよ!!


 そこに…


「ヴィルではないか!おお!シーラも!」

 と何とエロ狐神獣のコンチャーン様が何も無い空間からニョッキと出てきた!!


「うわっ!コンチャーン様!!?学園に何をしにきたのですか??」

 俺は驚いて聞いた。


「うむ、我は保健の先生として赴任することになったのだ!今の保健室の先生が結婚されるようで後任を探しており募集がかかっておったし、暇なので人間の勉強してガッツリ教師の免許を取っておいた。因みに我の領地経営と温泉街経営やなんかも身代わりに任せることにしたのだ!」


「身代わりですか?」


「ふっ!狐神獣にかかれば、この通り!」

 とコンチャーン様は印を作りボワンと自分の分身をお作りになった!


「おお!!」


「どうだ!凄いだろ!!これで片方は領地の方などを任せておる!色街をご利用したくなったら来いよヴィル」


「それはご遠慮します!」


「そうです!ヴィルはそんなふしだらな所に行きません!シーラのなんだから!!」

 とシーラが首に抱きつく。


「ハクチャーンの娘…。お前も大概ふしだらじゃないのか?いい商品があるからヴィルサイズのアレを売ってやろうか?」


「えっ!!?」

 とシーラが悩み始めたので


「おい、シーラそんないやらしいもん買ったら口聞かないからな!」

 と釘を刺しておいた。


「商売の邪魔だぞヴィル!」


「変なもの生徒に売りつけないでくださいよ!コンチャーン様!!」


「軽いジョークだ。そんなことしたらお前のアホな父上に怒られる」


「まぁ、父上はアホですが」

 と二人して国王いじりをしてからコンチャーン様は


「じゃあ、女生徒を誘惑しまくってくるわ!」

 と手を振って去った。

 このコンチャーン様が保健医に就任したことにより、女生徒が骨抜きにされてくのだった。もちろん本気でコンチャーン様は生徒になんか手は出さないが、以来保健室はピンクの保健室とか呼ばれるようになって男子は大変行きにくくなった。また、コンチャーン様は占いができるらしく、占い好きの女子達は休み時間何人かで集まり大変評判もいい。


 しかも保健室を根城にしていたレオンなんかもはやコンチャーン様が鬱陶しくて仕方ないらしく愚痴を溢した。


「俺の居城が取られた!!神獣様ズルイ!!女の子達とのイチャイチャ放課後タイムとか!!くっそー!!」

 とかボヤいている。こいつも頭ん中エロだからな…。


 ザシャとミリヤムはそれなりに進展しているようだし、ユストゥスとシュッツェ先生も仲良くなってるし、サブリナとあのドレーアー先輩も距離は近くなったようだ。サブリナはだいぶ鈍いようだが。

 フェイトとナタリーも普通に仲良くなってる。


 天文部はイチャイチャ禁止令を敷いた。

 もういい加減にしろってくらい外でイチャイチャしてるんだから部活くらい真面目にしてくれ。いや、本来そうだからな。


 後夜祭効果すげえ。恋の季節すげえ。

 結局シーラとは週末外出許可を得てデートに行くくらいに留めた。

 学院内はもはや恋の魔窟と化しているからな。街に出た方がまだ息抜きになる。

 シーラもそれは少しは思っていたみたいで街に出ると


「はあ…皆の頭の中のピンクから解放されたね。ヴィル…」


「まぁ街でも普通に恋人達はいるけど、学院内のピンクよりはまだ全然マシだよな」

 するとシーラは腕を絡めて


「ヴィル!美味しいカフェが新しくできたんだ!行こっ!」

 とだから胸当たってるし!


「そう言う所はカップルだらけだからやだよ。またピンク思考ばっかりだぞ?」

 と言うとシーラは考えてなかったのか


「むう…そっか…」

 と言うと力なく考える。


「じゃあ、ヴィル…森に行かない?」

 とシーラは言った。


「は?森?…流石に魔物はそんなにいないだろうけど…わざわざ狩でもないのに行くのか?」


「ヴィル!森のことあんまり知らないでしょう?確かに魔物は今は奇跡の力でほとんどいなくなってるけどね、森は神獣達にとって本来は凄く安らげる場所なんだよ?」


「でも今から馬を手配…」


「必要ないよ!ヴィル、シーラがドラグー化するから背中に乗って行こっ!あ、人気のないとこで服脱ぐからこっち来て!!」

 とシーラは俺を引っ張り人気のない路地裏の小物に隠れながら服を脱ぎ俺に渡すとドラグー化した。


 相変わらず金色の美しいドラグーだ。


「ヴィルいいよ、乗って」

 とシーラが言い、俺は服を抱えて赤い髪を吊るみたいに伸ばしシーラの角に絡みブワリと背中に飛び乗る。側から見たら竜使いだな。


 シーラは静かに飛び立ち森を目指した。

 そして木漏れ日溢れる森に着くと静かに降り立った。おお、森の匂い結構いい匂いだ。この辺ではやはり魔物の気配もしない。奇跡の力でやはり魔物は消滅したのかな。


 するとシーラはいきなり人間に戻ったから俺は慌てて服を投げて後ろを向いた。


「あほめ!!戻る時は言えよ!!」

 一瞬見えただろ!!


「別にヴィルになら見られてもいいじゃない?」


「そっ…それは…」

 くっ!シーラめ!俺を誘惑とかやめろ!!

 イチャイチャ禁止!イチャイチャ禁止!

 と俺は必死にコントロールしようとする。


「えへへ!ヴィルったら照れてるうう!可愛い!!」


「うっせ!可愛いとか言うな!!」

 くうっ!シーラのくせに!

 服を着て抱きついてくるのを鬱陶しそうに突き放す。


「えへへ、この森の奥にはね、滝があるんだよ?ヴィル行こう!運が良ければ滝にかかった虹が見れるんだよ?」


「ふーん…」


 シーラに導かれるまま、森の奥を目指す。シーラはその間ずっと俺の手を握って歩いた。途中大きな岩は髪の毛で砕いたりして進む。

 ようやく水の音が聞こえて開けた場所に出ると壮大な滝が現れた。


「おおっ!結構凄い!!」

 と感心するが、虹は出ていないので仕方ないかと思ったらシーラは空を見上げて


「あの雲邪魔だね…」

 と言うと集中した。身体が金色に光りを帯び始め息を深く吸い込み、空に向けて一気にシーラは咆哮し金色の光りを放った。


 滝上にかかっていた雲が無くなり陽の光りが降り注ぎ虹が生まれた!


 何という幻想的な光景!


「おおっ!!」

 俺はスマホを取り出し撮影した。


「えへへ!綺麗でしょ!これを見せたかったの!!」


「お前にしちゃ上出来だな!」


「はうっ!ヴィルが褒めてくれて嬉しい!!」


「俺だってたまには褒めてやるさ!」

 とシーラの頭を撫でてやるとシーラはもう辛抱たまらんと俺に思いきりタックル並に抱きついてきたから


「グエッ」

 と声が漏れ後ろの草の上に倒れた!

 シーラは嬉しそうにスリスリと頬擦りする。


「えへへー!ヴィルー!!好きー!!」

 と言う。


「は、離れろ!あほめ!!イチャイチャ禁止だっつの!!」

 言いつつ赤くなる俺もまだまだだ。

 シーラも赤くなり俺を上から見下ろし迫った。…がシーラの口を手で塞ぎ、


「だ、だからダメだと言ったろ!?」

 と言うとしゅーんと悲しげに顔になる。

 くっ!


「ちっ!このあほめ!!」

 俺は手を離すとシーラの頰を両手で掴み引き寄せキスした。


 一回だけのつもりなのにシーラに火がついて何度もする羽目になる。ていうかいい加減やめんかい!!

 何とか頭を押さえて引き剥がし


「お前やりすぎなんだよ!!あほ!!」

 と言い真っ赤になり怒る。痛くないチョップをするとシーラはニコニコして腕を組んで隣りに座って肩に頭を置いて暫く滝を見た。


 あー…くそ…可愛い。

 俺も恋の季節にかかって今ピンク思考なのかもしれん…。


 恐るべし!文化祭効果!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る