第47話 スキー合宿1

 この世界にはスキーがあった。

 言わずもが、前世日本人である現国王陛下である父上が考案したものである。ブッシュバウムの北の雪山にスキー場なるものが作られ毎年冬になると学院の生徒達が研修に行くことになったのだ。ちなみにこれは強制でなく全学年自由参加という形を取ってある。


 そんなわけで訓練のおかげか最近少しだけ筋肉がついてきた俺は楽しみになる。

 スキーは子供の頃父上と母上とステファニーがまだ3歳の頃に行った。

 俺は例の如くすぐにスキーの乗り方をマスターして父上と中級者コースに行った。俺は上級者でもいいけど?と言うと父上は


「お前!雪山舐めんな!!ていうか上級者コースなんて俺は前世でも行ったことないわ!ていうか、俺基本インドア派なんだからなっ!」

 と言う。


 前世父上はフィギュア職人とか言うやつ?だったみたいだし。今じゃそれはどこのお土産屋にもある。ブッシュバウムの名産品で母上の若い頃のクラウディア人形が可愛らしいポーズで売られているのだ。母上はもはや慣れたようだが、最初の頃は赤面して大変な可愛らしさだったと父上が惚気ていた。


 髪の毛の素材はもちろん母上のものだしね。俺の自部屋にもいくつかある。流石に寮への持ち込みはやめておいたけど、王宮に帰った時はこよなく管理を徹底している。俺も相当な母親好きだ。ま、母上は国一番美しいものな。


 そんなわけでナターナエル学院も昨年ほどから参加者のみでスキー合宿を始めたのだ。参加者のみというのはやはり寒い所に抵抗ある生徒等もいるため配慮している。


 シーラ達神獣は例に漏れず寒い所がダメであった。なのに。


「ヴィルが行くなら行くもん!!」

 と言って聞かなかった。


「でもお前…寒いぞ?雪山だぞ?冷たいぞ?いいのか?確か神獣の力が弱まるとかハクチャーン様に聞いたから北の寒い国なんかは神獣はいないとか聞いたな」


「う…うん…でもっ…ヴィルと離れるなんていっ時でも嫌だし…ヴィル邪魔?シーラのこと…」

 と上目遣い。

 くっ!

 俺は赤くなりつつも


「俺は知らないからな!一応止めたからな!ま、まぁなんかあるなんて思えないけど万が一危険があるなら俺が守ってやらんこともないし?俺天才でハイスペックだしな!!べ、別にシーラだけじゃねぇから!皆雪山初めてなんだろうしな!!」

 と照れながら言うとザシャとミリヤムは


「あ、王子私は行ったことあるじゃないですか。王家付きの執事ですからねうちは」


「ああ、そうだったなザシャはフェリクスさんと付いてきたな」

 ザシャはスキー場に初めて行った時は雪だるまとか雪の彫刻とか作り初めて遊んでたけどほとんど。小さい頃だったし雪は珍しかったからなー。


「あの頃はほら私はまだ王子や陛下みたいにスキー板で滑るのに抵抗がありましたのでソリ?でしたっけ?それでそろそろと低い所で父上達と遊んでいたのです」


「あー…ソリな。うん、子供にはそれで充分だろうな」


「王子も当時子供ですよ?全く何でもできるんですから!」

 とザシャが言う。ミリヤムは雪すら見たことなく


「ザシャくん?雪はそんなに冷たいの?お母様は知ってるみたいだけど」


「ええ、とっても冷たいし寒い所なので暖かい格好でないと寒くて死んでしまいますね」


「死!!?うそ!!」

 とミリヤムは驚いたが


「大丈夫です。ミリヤム様…私が温かいものも用意していきますし!」

 と胸を張るザシャ。なんか結構こいつ頼れる男になってきたなぁ。


 ユストゥスは


「はぁ…スキーなんてとても滑れる気しないな…」

 と落ち込んでいたがシュッツェ先生は


「ユシーが滑れないなら私が教えよう!!雪山訓練だって私はしたことあるんだ!!雪山で遭難した時の生き延び方もな!!」

 シュッツェ先生は体力めちゃくちゃありそうだしな!


 残念ながら今回、サブリナはパスした。寒い所と聞いて


「ごめんなさい!私苦手で。あんまり寒いと体調崩すから…シーラちゃんごめんね?」

 と言っていた。シーラは


「いいよ!私も苦手だけどヴィルがいれば温いもん!」

 と言ってた。俺がいようがいまいがめちゃくちゃ寒いぞ?


 スキー場に行く前に夢の中でいつものようにザスキア様のとこで報告してたら父上もやってきて


「おお、スキー場な、小さい頃行ったよな。ヴィルの野郎、あんな子供なのにスイスイスキーもマスターしやがって!!お前ほんと何でも出来過ぎだよ!!どうせスノボとかもできんだろな!」


「ん?スノボ?何それ?それも前世の?スキー板以外にも何かあるんですか?」

 と聞いたらザスキア様がスノーボードを映像で見せてくれたりスノボ板を見せてくれた。


「へええ?中々面白そうじゃん!」

 俺は感心したが、父上とザスキア様が注意した。


「おい、スノボはスキーよりかなりスリリングなスポーツだ!初心者だって下手すりゃ骨折したりすることもあるんだ。だからスキー場作っても俺はスノボは広めようとはしなかったんだよな。そりゃ前世ではスポーツとして認められてはいたけどプロ選手とかいたし…でもあんまり怪我とかして欲しくないんだよな。この世界の人達には」


「まぁヴィルとジークは奇跡の力で何とかなるけど、他の人は違いますからねはい!」

 と心配された。危険なスポーツなのはわかったけどさっき見せられた映像がカッコ良かった!!空中で板に乗って回転とかしてるし!ただ滑るだけのスキーと違うとことか!


「なら、俺一人でこっそり滑っていいですよね!大丈夫!見られなきゃ広まらないし!」


「お前っ…そう言うこと言ってると遭難するぞ!?パターンだわ」

 と言う。遭難なんて俺がするかよ!!


 と思いつつ、俺は自作したスノーボードをこっそり用意して持っていくことにした。


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