第41話 後夜祭2
私…ナタリーは変装してお姉様と屋台を周っていた。恋人達がやけに多い。食べさせ合いっこしたり。私もフェイトランス様にあーんしてあげたい…。
お姉様は気にせずいつもみたいに大量に買っては食べている。
「そう言えばヴィルもシーラもいないねぇ…フェイトくんもザシャくんも…」
いつもいるお姉様の幼馴染がこぞっていなくてお姉様は少し寂しそう。
ザシャさんとは後夜祭の約束で会えるだろうけど…お姉様は告白されるなんて思っていないだろう。
「つまんないねぇ…」
とお姉様は言う。ヴィル師匠は昨日の影響で眠ったままだろうし、シーラさんは男子寮に忍びよるからその手引きでザシャさんは忙しい。フェイト様はどうしてるんだろう?
やはり私との後夜祭は出てくれないだろう。
私がしょんぼりしているとお姉様は
「どうしたの、ナタリー元気ないね、これ食べる?」
とりんご飴を出した。
「ありがとうございます…お姉様…」
ふとお姉様のことが気になった。
「お姉様…あの…お姉様は気になる異性はいないのですか?結婚はどうしますの?いっぱいお見合い写真来ていますわ」
「それはナタリーにもたくさん来ているじゃない。あ、ナタリーはフェイトくんと両思いかあ!」
「お姉様のことを聞いているんです」
「うーん?考えたことない…食べ物と結婚するかな」
「無理ですわそれは。お姉様はその力を残さないといけないから結婚はしないといけませんのよ!?」
「………うーん…そうだけど…興味ないし…」
私は思い切ってカマかけてみた。
「あの…ザシャさんは?」
「え?何でザシャくん?幼馴染じゃん」
その程度の認識!?ああっ!ザシャさんお可哀想!!これはもはや振られる前提!?昨日は皆で身体を張ってフェイトランス様をお止めになったのに!!私は死ぬ所でしたが。
「あー…ザシャさんにもそろそろ婚約話が来ていて今までみたいにお姉様達といられなくなるかもしれませんわ」
と言ってみると
「えっ!?ザシャくんから食べ物貰えなくなっちゃうの!?」
とお姉様はようやくそこに至った。いや、着眼点そこ!?
「あの…普通婚約者が出来たら他の女の人の近くには寄らないでしょう?」
するとお姉様は変な顔をして考え込んだ。
今までどれだけザシャさんがお姉様を餌付けていたのかと…。同情しますわ。ザシャさん!
「………うーん、ザシャくんと結婚したらずっと一緒にいられるけど…。私ってお嫁に行ってもいいのかな?そしたらナタリーは公爵家継がないと行けなくなる。そしたらフェイトくんはどうなるの?フェイトくんの家って赤髪の一族だから血筋絶やしたらいけないような…」
「………うちの家のことを気にしてるなら…お母様とお父様は養子を迎え入れてもいいと思いますわよ?流石に女公爵は私達には似が重いでしょうし」
「んー、ならお母様とお父様にもう1人子供産んでもらってその子が男の子だったらいい話だね!!」
えっ!!!?
「い、いやお姉様…例えそうだとしても男の子が必ず生まれるとも限りませんわよ?」
「そしたら男の子の養子取ればいいじゃない、それからでも遅くはない!よし!ちょっとお母様のとこ行って話してくる!」
「ええ!?」
そんな!あっさりと!
すぐ戻るから食べ物見張っててと言い残しお姉様は転移魔法でお母様の宿まで飛んで行ったみたいです!!
それからしばらくしてお姉様は戻ってきた。
「お、お姉様…?」
本当に話したの!?
「とりあえず一気に話してきたよ。お父様はいつの間にザシャくんと結婚というかお嫁に行くことになったのか驚いていたよ?爵位がどうのこうの言ってたけどお母様は頑張ってと言って、私が頑張るならお母様も頑張って男児をこれからお父様と作ることに決めたって言ってたよ」
「ええええー!!!」
お母様もアレな人だけど急すぎる!!そもそもザシャくんは振られる覚悟なのに!!昨日のあの悲しい闘いは一体何だったのか!?とか別にフェイトランス様私のこと好きじゃないのにどうしようとかとりあえずこのことをフェイトランス様に教えたら別にフェイトランス様お姉様のこと諦めなくてもいいような…ええええ!
やだ!パニック!メモして整理したい!!
もう何の漫画のネタよ!!と考えてしまいます!ごめんなさい師匠!!
私は若干白目になりつつも
「あ、あのお姉様…はザシャさんのこと好きなんですの?あの異性として?」
「ん?食べ物くれるから好きっ!私の好きな甘いもの知ってるし、好みのものばかりくれるの!」
て餌付けられているだけだ!それは!!
お姉様…。それは恋愛にはまだ程遠いです!!
どうしましょう…。
と悩んでいるとお姉様は
「ナタリーこそ!今日の後夜祭ではフェイトくんと頑張ってね!お姉様応援するよ!」
と呑気に無表情で応援されました…。
うっ、フェイトランス様が私のところに来てくれるなんて確率ゼロに近いなんて言えないわ…。きっと家で失恋して塞ぎ込んでいらっしゃるわ…。私はため息をつき、やけ食いを始める。
どうせ私も失恋するなら漫画のネタにしてみせますわーーー!!!
ガツガツガツ!!
*
「こっちです!シーラ様」
とザシャくんが寮の裏口からこっそり手引きした。今は寮長は祭りに出ているしいない。
21時になる前までがチャンスであると言った。
私はお胸を布でキツく縛り苦しいけど我慢して男装した。
こそこそと侵入してヴィルの部屋に案内された。
「それじゃスマホで何かあったら知らせてくださいね?いいですか?お祭りで殆どの生徒は21時まで戻りませんが念のためです!寮長はそれより早く戻りますし!」
とザシャくんはとにかく部屋に鍵をかけてください!と言い残して去ろうとして、
「ザシャくんはお祭りには出ないの?」
と聞くと彼は
「私は自室にいます。時間まで…とてもそんな気分ではないので…」
と昨日の一部始終を陰から見ていただろうザシャくんはそれでもにこにこ顔を崩さず手を振り去った。
私は鍵を閉めて眠るヴィルに近寄る。
奇跡の力を使いすぎて死んだように眠り、物音くらいじゃ目覚めない。こんなところを暗殺者に狙われてはたまらない。
「ヴィル…ごめんね…」
私は眠るヴィルの側に寄り添った。
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