第40話 後夜祭1
「サブリナちゃん…私のことはいいからもう行っていいよ?ドレーアー君も待ってるから」
とシーラちゃんは辛そうに行った。昨日女子寮に帰ってきて事の端末を聞いたのだ。
「シーラちゃん…本当に大丈夫?これから変装して男子寮に行くって言ってたけど…」
「うん…ザシャくんが途中まで手引きしてくれるって…ヴィルが心配なの…側にいたいの…。後夜祭は出れないけど、私の代わりに楽しんでねサブリナちゃん!」
とシーラちゃんは笑って見送った。
もしバレたら厳罰なのに…。私は心配しつつも待ち合わせの掲示板の所に来て同郷のマックス・ドレーアーくんを待っていた。
マックスくんは私と同じ庶民で靴屋の倅だ。同郷だけど特に話したことは無かった。たまに店の前を通る時に店番をしている彼と目が合うことは有った。それだけで特に何も感じてない。ただ同郷の人。悪い人には感じないけど。
しかし問題はあの子爵家のメルヒオール・デッセル先輩だ。キョロキョロしているとマックスくんがやってきた。何かギクシャクした玩具の兵隊みたいな動きであった。
「おっ…はようございますっ…サブリナ・テンニースさん!、お、俺はマックス・ドレーアーでその…」
「あの…知ってるし、同郷だし、同学年だから…」
「うん…まぁ…そ、その、ヴィルフリート王子がき、君がデッセル先輩に何か不埒な真似をされてると聞いてその…今日はずっと俺が護衛するから…よろしく…」
と言う。
「うん!庶民同士だからそんなに畏まらなくていいよ?私なんかの護衛でお友達との時間とか潰してごめんなさい。…デッセル先輩には…その困っていたし…」
するとマックスくんは
「…俺たちを庶民だって思って奴隷と同じだと勘違いしてる鼻の高い貴族なんか放っておこう!」
「でも…シーラちゃんとかいい貴族はいるよ?ヴィル王子も」
「うん…でもデッセルはダメだ!絶対に!…絶対に俺がサブリナさんを護るから!」
とマックスくんは使命感で燃えている。私なんかを護るなんて少し頼もしい。
気付けば周りには待ち合わせをしてる恋人や婚約者がたくさんいた。
後夜祭は夕方からだけど3日目は来賓の家族達は学院に入れなく生徒達だけのお祭りになる。屋台は業者が引き継いでくれるし、外から移動観劇団みたいなのが招かれて校庭で即席舞台を作り、昼過ぎから上演予定だ。
そこにデッセル先輩がやってきた。
「ああ!サブリナさん!もしかして俺を待っていたのかな?」
と図々しくもいやらしい目で見てきます。
スッとマックスくんが立ち塞がり
「し、失礼ながら…サブリナさんはお、俺と今日一緒にいるので!!」
とキッパリと言い睨むとデッセル先輩は
「君?庶民?何?俺はサブリナさんと周りたいんだけど遠慮してくれないか?」
「いえ、あの!こ、この学院では身分は関係ありませんので!お、俺の方が先に予約をしていたので、先輩と言えども…譲れません!」
とマックスくんが庇う。私も
「ごめんなさいデッセル先輩…私…マックスくんと婚約しましたので!!諦めてくれませんか!?」
「えっ!!?」
マックスくんが驚いて見る。嘘だから!合わせてと目配せするとマックスくんも乗った。
「そうなんです!俺たち将来を誓いあっていて…」
するとデッセル先輩は
「ふうん?ならばサブリナさん…将来はうちに来て働かない?庶民の夫の給料だけじゃ心許ないだろう?」
とニヤニヤした。この人っ!私を囲うつもりだ!妻にはしなくとも使用人として使えさせセクハラする気満々だ!
「お断りします!!」
マックスくんが睨み、デッセル先輩とバチバチと火花が散る。
「ふん!仕方ない、今日は君に譲ろうか…。サブリナさん…何かあったらいつでも俺のとこにきなよ…」
とデッセル先輩は去った。ホッとした。
しかしマックスくんはまだ怒りを隠せない。
「マックスくん、ありがとう。あんな嘘に合わせてくれて…」
「え…お、俺は別に…」
と怒りを収めた。きっと困ってる人を見過ごせない優しい人なんだろう。でないと私みたいなブスには構わないし。
「いやっ…その…本当に俺、今日後夜祭でサブリナさんを誘うつもりだったんだ!!」
とマックスくんが言って驚くが
「ああ!私達庶民同士だものね!!判るわ!貴族の綺麗なお嬢様を誘いにくかったんでしょ!?」
「い、いや、貴族に好きな女の子なんかいないし!お、俺は靴屋の倅だから後を継がないといけない…庶民だけど靴職人だから…でも学院に入って学は身につけておきたかったし」
「うん、私も…貴族様はここに結婚相手とか見つけにくるのが第一だもんね…まぁ貴族様に見染められて結婚する庶民もいるだろうけど…私はまだ特にそんな人いないし…デッセル先輩は嫌だわ…私の身体目当てだし…」
するとマックスくんはまた怒る。
「俺も刺繍部に入ってれば良かった…ごめん」
「やだ、そんな事で謝らないで?この学院…寮でイチャイチャ出来ないからって部活を隠蓑にする星読み部みたいな人達沢山いるし…。私は純粋に刺繍の腕を磨きたかったんだけど…」
とセクハラされた時を思い出し気持ち悪くなる。
マックスくんは
「大丈夫?…もう何も考えなくていいよ。今日は生徒の祭りだし楽しもう!ね?」
と笑ってくれたからそれにホッとした。この人は良い人に違いないし私が若干男性恐怖症を覚えているのを悟ったのか手を無理に繋ぐことはしない。
「ありがとうマックスくん!行こう!」
と私達は一緒に周り始めた。
*
僕はユストゥス・ケストス男爵子息。男爵と言ってもほとんど庶民と同じように貧しい男爵家であり、僕も年頃になったので婚約者の話は出ていてシュッツェ家と言うことしかぼんやりとしか覚えてなかったけど、まさか剣術の先生のマルグレート・シュッツェだとは思わない。
僕はマル先生と3日目を過ごすことを約束させられていて…。ていうか無理矢理。
どうもあの人は僕を可愛いと思っている。僕も成長期男子なのに。…でもか細くて色白だから女の子みたいになよなよしてる僕なんて…。
と待ち合わせ場所の職員室に入る。
流石に先生達は祭りの間は出店を手伝っていたりするのだが、なぜマル先生はいるの!?しかも職員室にポツンと待っている。
朝黒い褐色肌で僕とは対照的。そしてやはり胸が大きい!!僕はやはりスケベでそこばかりに視線が行ってしまう!!しかも職員室で2人きりなんて!早くお祭りに行かなきゃ!
しかしマル先生は
「ユシー!!待っていたよ!!」
といきなり僕に抱きつきその豊満の胸が僕の顔を包んだ!
あっー!!柔らかい!! くっう!しっかりしろユストゥス!!持っていかれるな!!(理性)
「く、苦しい…」
と言うとマル先生はやっと僕を解放した。お胸で窒息するところでした。
「いやあ、ユシーと2人きりだと思うと興奮してきたよ!つい!」
ひいっ!!何なんだこの人っ!
「こ、婚約者と言っても僕はまだまだ子供なのに…。マル先生僕をからかって楽しんでるでしょう?」
と抗議すると
「ふあっ!からかうだなんて!!ユシーが可愛くて可愛くて!今すぐ食べちゃいたいのに!だがここは学院の規則にのっとり私は大変我慢をすることにしたよ!だから安心してくれユシー!私は君を学院内で無理矢理犯すなんて真似はしない!先生だからね!」
と聞き、おお!意外と先生としては立派な思想は持っていたんだ!
と感心した。
「しかし!学院から出たら何をしても文句はないよな!休日デートは楽しみにしているぞ!もちろんたっぷりと可愛がるつもりさ!」
と言われて血の気が引いた。いや、学院を出たら確かにただの婚約者だけど、休日!!?デートって!!可愛がるって!そんな!僕ついに大人になっちゃうようなことされちゃうの!?
と恥ずかしい脳内妄想が起こっていると
「さあ、ユシー、祭りを楽しみに行こうか。このままユシーと2人きりでユシーの吐く息を吸ってても良いんだけどな…」
「い、行きましょうよ!早く!!」
思わず真っ赤になる!!
「まぁ婚約者だし手ぐらいはいいだろう!先生が許可します!」
とマル先生は僕の手を繋いだ。
あっー!女の人の手!!
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