第37話 大文化祭2日目
大文化祭の2日目は初等部の展示を観に行った。家族で行くことが多い。
俺は可愛い妹のステファニーのクラスの展示を見に行った。すると何ということだろうか!!
ズラリと人が並んでいて最後尾の人に最後尾の札を渡されて、父上は
「いや、コミケかよっ!!」
と突っ込んでいる。
ようやく辿り着くと入り口には
【ステファニー王女サイン、握手会】
と書かれている!!
ステファニーは可愛らしい衣装を着て握手会をしていた!!何だこれ!!?教室にはステファニーの可愛らしい写真が貼り付けられ売られてもいる。しかもステファニーがいらなくなって捨てたインク壺とか値段付きで売られていた。要するに唯のゴミだが…。教室の隅ではもはやオークション会が始まっている!!
さらにグッズ販売コーナーも設置されていた。
何だこれ!!?
「すげー!ステファニー…アイドルじゃん!!」
と父上がまた前世らしき言葉を言いやがります。
「お父様!お母様!お兄様!来てくれたのですね!?」
と11歳のステファニーは微笑む。俺の妹可愛い!!
「俺の娘可愛い!!」
と父上もデレデレしている。
するとそこに黒髪で銀の瞳の双子の男子がステファニーに握手してサイン色紙もきちんと貰っていた。
そこにエリーゼ叔母上と隣国アルデン王国のリヒャルト・マンフレート・エーベルス王弟殿下がお越しになっていた。そう双子はこの二人の子供で現在6歳で、リヒャルト様によく似ている。双子は来年から初等部に入学する。
エリーゼ叔母上は現在22歳。つまり…エリーゼ叔母上は16歳で双子を産んだのだ。エリーゼ叔母上はリヒャルト様に溺愛されすぐに子供と共にアルデン王国へまだ婚約者の立場で囲われ18になると直ぐに結婚してしまった。
父上はその時
「最悪だ、あの腹黒野郎!可愛い妹に手出すの早過ぎだろ!!」
「はぁ…エリーゼに他の婚約者をあてがわれないようにさっさと手を付けてしまわれたのでしょう…何という腹黒王子だ…やられた!」
とユリウス叔父上と一緒に嘆いたそうだ。
リヒャルト様はエリーゼ叔母上とは5歳差で頻繁にデートを重ねたりして婚約者の座を狙っていたそうだが、父上とユリウス叔父上は反対してたみたいらしい。しかし護衛をしょっ中撒いて二人は愛し合うようになったという。側からみたら恋愛小説ネタになりそうなロマンスを感じるが父上曰く、
「いや、違う!リヒャルトの野郎はそんな綺麗な奴じゃねぇよ、騙されんなヴィル…あいつ計画的な真っ黒腹黒ロリコンでエリーゼもそれに気付かないんだぜ?エリーゼはボーッとしてるとこあるから。ユリウスと俺やあいつのヤンデレ兄のニコラウスなんかは奴の腹黒を昔からよく知ってんだよ」
と言っていたからリヒャルト様は表向きは完璧だが腹黒なのは間違いなかった。俺は心が読めるから直ぐに判った。
「やあ、ヴィルフリート王子様、お久しぶりです」
「お久しぶりです、リヒャルト様。エリーゼ叔母上といつも仲がよろしいですね、それにエルフィン様とコンラーディン様も元気そうですね」
と挨拶すると
「ああ、僕に似てしまったけどもう一人作る時は必ずエリーゼ似がいいよ…。今から頑張るね」
とニコリと爽やかに言うから怖い。心の中は
(ふふふ…エルフィンとコンラーディンどちらかが奇跡の王子の血統を持つステファニーちゃんを落としたらうちの国にも奇跡の王子の血統が生まれるはずだよね?エリーゼには残念ながらその力はないけど…普通に好きだからいいか。でも息子達には頑張って貰わないとね…)
とか思ってるよおおおお!!
父上にもバレているのか、父上はギロリと睨みつけ
「ステファニー…こんな子供はあまり相手にしないようにね?お前にはもっと優秀で誠実で良い婚約者を探しているからね!!と言っても、身分なんか関係なく好きになった人と一緒になってほしいなぁ!お父様!なんなら庶民でも全然お父様は許しちゃうから!その辺他の国よりうちはゆるゆるだから!貴族とか別に無理しなくたっていいんだからな!!」
と念を押していた。まぁ、父上も自分の娘には幸せになってもらいたいし、俺も可愛い妹に変な男と一緒になって欲しくはない。まぁあの双子とステファニーは6歳差だし、ステファニーだって流石に構わないだろう。
しかしリヒャルト様は
「ふふふっ、ジークヴァルト陛下…愛に歳の差なんて関係ありませんよ?大きくなればそれこそ僕とエリーゼの様に熱い恋ができますよ」
とニコリと笑うので怖い。
「ひっ!やめろぉ!うちの王家の子達を狙うなあああ!」
と父上が叫んだ。
「おや?なんのことでしょうか?陛下達は私の心でも読んでいるのでしょうかね?そういう力もあるのですかねぇ?ふふふ…」
と言い、ギクリとした。リヒャルト様…わざと心の声を俺たちに聞かせてる!!黒い!この人黒い!!
そしてその双子達もそう仕込まれていたらかなり怖いことになる。ステファニー!!頼むからこいつらの手玉に落ちないでくれよ!?
お兄様は心配だよ!!
*
それから今度はフェイトたちの展示に行くとビビった!
【フェイト王国】
と言う展示で教室内がミニ玉座になり、中央にフェイトが血塗られた王様のマントと王冠を被りドシリと座っていてなんかザシャに似た人形が転がっていて、ミリヤムに似た人形が王妃の椅子に座っていた。フェイトの周りには何故かボコボコになった穴の後がある。
何の展示だよ!!!
と思ったが壁にフェイト王国の仮の歴史やらフェイト王国の仮の模型やらフェイトの壊した初等部の廃材とかがあった。……おい、恐怖政治じゃねーか!フェイト王国って!
「あ、ヴィル兄!来たな?フェイト王国では通行証代わりに俺と腕相撲するんだよ。男は腕相撲で女は手加減して指相撲だよ」
と言う。
「それお前の一人勝ちじゃねーか」
「まぁな!?俺に勝ったら記念撮影と肉まんプレゼントだ」
なんだよそれ、しょぼっ!
「やろうぜ、ヴィル兄!」
やらねーよ!負けるわ!!
穴ぼこの意味が判った。しかしそこでスッとレーナおばさんが現れた。
「げえっ!!お母様!!」
「ふーん、フェイト王国ねえええ?王様と指相撲したら肉まんは私のものかしらあ?」
とボキボキ指を鳴らすレーナおばさんに震え上がる。フェイト…指骨折決定。
「どうせこの展示もお前が仕切って作らせたんだろ!このバカ息子おおお!」
とフェイトの指を親指どころか全部折ってフェイトは
「んぎゃああああ!!」
と悲鳴を上げた。後で俺が治すけど。
そして代わりにレーナおばさんが玉座というか四つん這いで椅子になったフェイトの上に乗って肉まんを食べていた。
アスカ様とナタリーにミリヤムもやってきてフェイトは情けない姿をミリヤムに見られて落ち込んだ。ナタリーはそれでもポーッとフェイトを見ていたが。
ミリヤムはキョロキョロと見渡して
「あれ?ザシャくんここにもいないね」
と言うから俺は
「ザシャなら俺たち中高等部1学年2日目は午前の部で模擬店当番だろ?ミリヤム…俺たちは午後から当番だからな。忘れんなよ」
「あっ…忘れてたよ。そっか。当番だった」
俺たちの1学年模擬店は大文化祭の2日間でA.Bグループに分かれて午前の部と午後の部を当番することにしている。俺とザシャとミリヤムは2日目でザシャだけは午後の部に組み込まれてしまったのだ。
売ってるのは焼きそばにたこ焼きにイカ焼き、カレーうどん、ドーナツ、ケーキ、チョコバナナ、りんご飴、綿菓子などだ。
グループ内で班を作りそれぞれの担当の食べ物を売り上げるのだ。
ちなみに教室展示は俺たちは受付不要の絵なんかを適当に飾っている。俺の描いた少年漫画なんかも置いてあり、椅子を適当に並べたちょっとした休憩室になっている。
シーラ達も久々に家族で集まって回ってるらしい。邪魔はすまい。
午後になったからミリヤムと交代で模擬店の方に行ったらザシャはエプロンを脱いで畳んでいた。ミリヤムを見るとニコリと笑い、お昼を俺たちの分をとっといてくれて渡した。
「サンキューザシャ!お疲れ様!」
「はい、ミリヤム様も王子も頑張ってくださいね」
「うん!ありがとうザシャくんも回ってきてね!」
「はい、うちも両親が来ましたから合流する予定です。あ、ミリヤム様…ドーナツも担当班から貰っておきましたから疲れたら食べていいですよ」
とザシャは結構たくさんの在庫を置いている。おい、客に出せよ!!
「やった!ありがとう!!」
「では王子よろしくお願いしますね」
と肩を判ってますよね?とギリギリ掴まれた。
わ、判ってるから!!
ザシャが何で俺とミリヤムに当番を任せたのかは言わずとも…ミリヤムに明日の後夜祭のことをザシャと予約させるつもりだ。ザシャは言えないから俺に言わせるのだ。
それからミリヤムに後夜祭のことを聞いた。
「ミリヤム…後夜祭どうするんだ?誰かと行くのか?」
「ん?後夜祭?食べ物ないしー…もう寮戻って寝ようかなー」
不味い!後夜祭は参加自由なのだ!夜21時までやるから!!帰宅は自由だし。参加も自由だった。ご飯は各自持ち込みがオーケーされてる。
「あっ、あのさぁ!ザシャがお前と話があるらしいぞ!?屋上で20時に待っているからってさ。他の奴に知られたくないから鍵をかけてる。でもミリヤムなら転移魔法で行けるよな?」
「うん…行けるけど何のお話?」
ミリヤム疎いなぁ。まぁ気付かないよな。こいつの頭の中食うことしかないし。
「でもさっきフェイトくんも後で話があるから模擬店終わったら話そうって…」
「な、何!?フェイトが!!?」
しまった!先手が!俺に心読まれないようにフェイトの奴隠していたな?
フェイトが今日ミリヤムに告白して明日の後夜祭一緒にいることになったら不味いいい!ザシャ屋上でぼっちじゃん!!
なんか寂しそうなザシャの姿がつい浮かんでしまった。
「ミリヤム!!フェイトなぁ、明日の後夜祭のことでお前に相談があったんだよ!!ほほほら!ナタリー今日国に帰るだろ?アスカ様と!だからナタリーと過ごせなくて寂しいんじゃないかなっ!?その相談だよ!」
「ほほう…フェイトくんうちの妹に惚れたね?いつも私の方にしか話しかけないもんね。照れてたんだ」
違うし!!フェイトごめん!!
「じ、実は!俺もナタリーに相談を受けていたんだ!ナタリーはフェイトのことが好きなんだよー!」
「えっ!?そうなの?知らなかった!!じゃあ両想いだね!!」
「だから!フェイトのとこには今日行かなくていいよ!ナタリーを向かわせるから!!」
なんか変な汗が出てきた!!やべえ!大嘘ついちまった!!
こうなったらナタリーに事情を話すしかない!
と思ってたらナタリーがアスカ様達とお客様としてやってきた。さて…どうするかな?
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