第38話 フェイト激おこ

 ナタリーがアスカ様達と俺たちの模擬店にやってきた。ちなみに売っているのはたこ焼きだった。アスカ様は目を輝かせ


「150個頂戴!」

 ととんでもない注文を言い出した。

 150個!?15個じゃないよな!?そもそもどうやって持って帰るんだよ!!


「ごめんよヴィルフリート王子…」

 とカミル公爵も苦笑い。俺たちは急ピッチで作って行く。ミリヤムはたこ焼きを詰めて行く係で他の男子生徒たちや女生徒もテキパキ作業をして行く。もうこれで売り切れそうだ!!

 と思い、なんとか後で来るだろうシーラ達の家族分だけは残して渡すと材料終了で全部売り切れた。

 時間があまり、生徒達はやった!遊べる!とさっさと他の所に行ってしまう。

 アスカ様達はたこ焼きを持ち代金を払い去ろうとしたから呼び止める。


「「ナタリー!」」

 ん?ミリヤムも同時に呼び止めた。


「?何ですか?」

 ナタリーはキョトンと美少女顔を向けた。アスカ様によく似た顔に黒髪。


「ナタリー、今日、うちの女子寮に泊まっていいよ!」


「えっ!?お姉様?どうして?」

 ミリヤムは返事を待たずに


「お母様いいでしょ?後でナタリー送ってくから…」

 とミリヤムが言うとアスカ様は


「それならいいわよ。ナタリー…さっきの制服もう一枚貰ってきたからあげる」

 とアスカ様はミセスコンテストで着ていた制服が気に入り着ていたのと予備をちゃっかり貰っていたらしく、一着をナタリーに渡した。


「私に生徒に変装しろってことですか?見つからないですか?」


「ならこれもあげる。さっきミセスコンテスト主催した生徒に小道具のメガネ余っていたからもらって来たの」

 ??何でそんなことを!?と思っていたら心の声が聞こえた。


(本当はメガネ…クラウディアみたいに似せてかける予定だったけどいいわ。久しぶりにカミル様も照れていたし、帰ったらカミル様の前で着て可愛がって貰おう)

 と。えっっ!!アスカ様!!食べ物のことばっかじゃなくてちゃんとカミル様のこともお考えになってたのか!!

 当人のカミル様はあっけらかんと


(ナタリーも来年からはここに入るしもっと見学は必要だよね。うん、僕からも女子寮に申請を出しておこう。ナタリーもミリヤムも成長したなぁ…ミリヤムのお見合い話はどうしようかなぁ…)

 とか娘のこと考えていた。

 ていうかミリヤムお見合い話来てんのか!?

 こんな奴だけど一応チート級な力持ってるし他国で欲しい奴多いんだろうな。軍事関係者かもしれない…。


 カミル公爵とアスカ様は食べながら去って行く。


「ナタリー…少し話がある」


「うん!ナタリーってフェイトくんのこと好きだったんだね!お姉様全然知らなかったよ」

 とミリヤムが割り込む。


「えっ!ど、どうして?ヴィル様!?」

 と俺が喋ったのかとナタリーは見た。

 …はい、喋りました。


「んもー!言ってよぉ!そうだ、この後フェイトくんに私呼ばれてるから一緒に行こうよナタリー!きっとフェイトくん後夜祭にナタリーを誘うつもりだよ!良かったね!」

 と言われてキョトンとした。


「え…?いや、それはお姉様を誘おうとしているのでは?」

 流石のナタリーも気付いてかどういうことだと視線を俺に向けた。俺はミリヤムの後ろでジェスチャーをした。

 ごめん、後で話す。と。伝われ!

 伝わったのかコクリとうなづいた。

 そこにシーラ達親子がやってきて取り置きのたこ焼きを渡したらにこにこしながら、


「おおっ、ヴィル、お疲れ様。なんかもう終わってるみたいだから相当繁盛したんだな、取って置いてくれてありがとうな!」

 とローマン様が俺を褒めた。


「あ、いえ、殆どアスカ様が買ったんです。150個も」


「えっ!!!?150個!すっげ!!まぁ、あり得るか…」


「ふむ、これ前にジークの奴が一度作ってくれて、我はこの中にタコが入ってると聞いて最初はどうかと思って遠慮したのだが、そんなに美味いのか?」

 とハクチャーン様がローマン様に聞くとローマン様は食べたことがあったのかうなづいて親指を立てた。


「意外と美味かった!!病みつきになる!」

 と。それを聞いてハクチャーン様も


「ならばアスカより先にくれば良かったの。食べ盛りのこいつらもおるし」

 とライマーとフォルカーに一パックずつ渡した。

 ライマー達は初めてのたこ焼きを頬張り


「美味え!!」

「美味ええええ!!」

 と叫んだ。


「材料ないなら今度はジークに作ってもらおうぜ!」


「俺は!お前らの専属料理人じゃないからなっ!」

 と父上と母上がいつの間にかそこに現れて俺は母上に最後の一パックを出して差し上げた。


「お母様!最後のです!因みに父上のはありません!俺が心を込めて作りました!どうぞ!」


「まぁ、ヴィル!ありがとう!」

 と俺は頭を撫でられた。


「こいつっ!俺の分ないって!!?」


「ヴィル!私のも心込めてる?」

 父上とシーラが何か言ってるけど、母上との時間くらい俺もちょっとは欲しい。


「それじゃヴィルまたな!」


「ヴィル兄またー!」

 と父上達はシーラを残して去って行く。

 俺はナタリーとシーラを連れてミリヤムにちょっとそこでドーナツでも食って待ってろと言い、二人に事情を話した。


「えっ!?ナタリーちゃんがフェイトくんのこと好きなのは判るけど、流石にフェイトくんはミリヤムちゃんでしょ?」

 とシーラがちょっと怒る。嘘ついたしな。


「そうですよ!私だってフェイト様がお姉様のこと好きなの見てれば判ります!お姉様だけです判らないの!後、お母様くらいです!」


「でもなぁ…フェイトには悪いけどザシャは何か最近顔にも出ないし心にも出ないけど何か悩んでる気がする。あいつ今までにないくらい最近になって急にフェイトと争うようになったからお前らも見てて判るだろ?それまでザシャがミリヤムのこと好きだなんて俺は全然判らなかった」


「あ、うん…それはシーラも。最近やっと判ったもん」


「そうなんですか?だからフェイト様も必死に?」

 とナタリーはちょっと辛そうだ。


「だからナタリーも協力してくれないか?何とか明日フェイトと一緒に後夜祭出れるよう」


「でも…フェイト様はお姉様のことしか…」


「しっかりしろ!フェイトのことお前だって好きなんだろ?あいつはバカで破壊魔だが横で叱ってくれる女がいた方がいいんだ!ミリヤムには無理だ!あいつ鈍感だから!ナタリーお前がしっかりしてフェイトを叱って尻にしけ!レーナおばさんみたいにな!」

 それにシーラは


「さ、流石にヴィル無理だよ。ナタリーちゃんは普通の美少女だし、あのフェイトくんを叱るなんて…」


「………そうですよ…」

 とナタリーも弱気だ。こうなれば


「ナタリー…実は今…俺…父上に頼んで出版社とかいう企業を起こそうとしているんだ。それが何か判るか?」


「いいえ?」


「ナタリー…お前そこで漫画家になれ!今まで漫画は俺が一冊くらい書いて見本として博物館とか学院に寄贈したくらいであまり同じものはないだろ?だが、出版社はそれを大量に複製し国民達でも気軽に読めるように複製機を開発中なんだ。それなら国民が同じ漫画を買って利益も増える。お前の漫画が国民一人一人に読まれる。どうだ?なっ!だから協力してくれ!」

 と言うとナタリーはギラリと目を光らせた。


「わ、私の漫画が!沢山の人の目に!?……………やります…フェイト様を何とか引き留めること協力します!!」

 とシーラと俺とナタリーは結託に成功した。後はミリヤムだ。本当のことは話せないがザシャの元に行って欲しい。


「俺たちもカバーはするから…それでもダメなら…俺がフェイトを押さえつける!」

 するとシーラは驚く。


「むっ!無理だよ!フェイトくんにはあの馬鹿力があって… 」

 とシーラは心配する…。でもフェイトくらい止められないと…未来に落ちてくる隕石とかどころじゃない。


 俺は実は先見でフェイトかザシャかどちらがミリヤムとくっつくか視てしまった。フェイトとくっ付いたミリヤムはいつも通りだったがフェイトがお肉ばかり差し入れてくるからたまには甘いものが欲しいと言うと喧嘩になってた。


 一方でザシャとくっ付いた方の先見では二人はとても幸せそうに寄り添っていた。そしてザシャは俺にお礼を言いに来た。夢の中だけど、ザシャは…初めて心から笑ったんだ。あのザシャが。俺はそれを現実でも見たいと思ったんだ。

 それだけだった。


 模擬店も終わり、ザシャにスマホで連絡したミリヤムはそこで、後は任せろと俺たちが言うので他の食べ物探しの旅に出た!


 そしてナタリーとシーラとフェイトの所に向かい、フェイトは待ち合わせ場所でウキウキしながら後ろに花束を持って待っているのが遠くから判った。壁からそっと3人で覗いて、


「うわっ…告白する気満々だな!フェイト!」


「ど、どうしよう…流石に可哀想かも」


「心が痛いです。本当のこと言うと絶対に私嫌われます!」

 とナタリーは言うが


「……ナタリーすまん!本当に。お前には嫌な思いさせるかもしれないけど…何とか説得してみる」


「はい…!」

 と決意し、俺たちはフェイトの元に行くとフェイトは


「あれ?何でヴィル兄にシーラ姉…ナタリーまで……」

 とフェイトは俺たちを見て察した。俺が心を読めること…そして睨みながら


「ミリヤム姉ちゃんは?……」


「ミリヤムは来ない。明日の後夜祭はザシャのとこに行く」

 と告げるとフェイトは


「何でだよっ!ヴィル兄!何でザシャの協力すんの!?あいつ頭がいいからって!ヴィル兄の親友だからって!!何でだよ!?シーラ姉もナタリーもかっ!?」

 と怒りのオーラを発する。


「………フェイト…ごめん…。俺はザシャに協力するって決めたんだ!お前じゃたぶんミリヤムを幸せにはできない!」


「そんなことあるもんか!!出たら目言うな!」

 とザシャは拳を振り上げて壁を殴りビキっと亀裂が走る。やはり話合いは無駄か。こいつには。


「頭で考えろよ。フェイト。叔父さんの子だろ」


「だって協力してくれないならヴィル兄もシーラ姉もナタリーも皆俺の敵じゃん?ヴィル兄からぶっ飛ばす!そんでミリヤム姉ちゃんに今日告白するんだ!ザシャなんかに渡さない!」

 とフェイトは俺に拳を下ろしてくる。

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