第36話 後夜祭の予約

出店は沢山の食べ物を売っている。

俺はさっきシーラのとこで軽く食べたし、シーラはまだだろうと進めるとシーラは色々と指を指す。


「あっ、シーラ様にヴィルフリート王子様!!美味しい焼き鳥ですよ!どうです?」


「シーラ様可愛いからおまけつけますよ!」


「やったあ!!ありがとう」

とシーラはニコリと笑うとでへへと売っている生徒の心は


(はーん!可愛いなぁ!俺と後夜祭デートしてほしいなぁぁ)

とニヤニヤしておまけをたくさんつけた。

結局どのお店もおまけしてくれた。美少女は得だな。


空いてるベンチに座りシーラは買ってきたご飯を食べ始めた。お腹は空いてたらしくペロリとかぶり付く。あ、タレが飛んだぞ。

俺は無意識に指を伸ばしてついたタレを取ってやり舐めた。

ん、甘いタレだな…。

と思っているとシーラは赤くなった。


「ヴィル…ありがとう…」


「え?何が!?」

と言って俺は今何してたんだと恥かしくなる。

するとシーラは


「ヴィル…最終日は後夜祭…私と出てくれる?」

後夜祭はパートナーと火を囲みちょっとしたダンスを踊るのだ。もちろん、相手は恋人や婚約者同士が多い。後夜祭で告白する男女も多い。


「……しっ仕方ないな、お前が婚約者なんだから…出てやらんと周りの女も煩いし…虫除けには丁度いいしなっ!」

とまた俺は照れてこんな言い方しか出来ないがそれでもシーラは判ってると言わんばかりに笑顔になる。

くっ!そんな笑顔ほんとに俺の前だけにしてほしい。


「あ、そうだ…」

俺はザシャに頼まれたことをシーラにも伝えた。


「何とかザシャに協力しないとなぁ…元天文部の件も手伝ってくれたし」


「うん…シーラも手伝うね、そうだ、フェイトくんを引き留めるよっ!」


「そうだな、だがカップルだらけの後夜祭でザシャ達がゆっくり話せる所ってどこだ?」


「そうだね…天文部ではイチャイチャ禁止でしょ?」


「ザシャがイチャイチャするかよ」


「えー?ザシャくんも男の子なのに。し、死んでるのかな?やらしい思考」


「知らんわ!あいつの思考全然読めんしっ!」


「うん、シーラも無理っ!……じゃあ屋上は?」

とシーラは提案する。


「屋上なんてイチャイチャしにくるやつ多いだろ?」


「鍵をかけておけばいいんだよ。それから立ち入り禁止とか貼って。それでザシャくんに鍵を渡して置くんだ。もちろんミリヤムちゃん以外が誰か入ってこないよう待ってる間も中から鍵をかけておけば誰も入れないよ。ミリヤムちゃんなら転移魔法で入れるけどね」


「そうか…ならやっぱり問題はフェイトか。シーラ…確かにお前なら神獣の力で止められるかもだが、フェイトは強い。ミリヤムとザシャのことを知ったらシーラでも容赦ないかもしれない。俺もフェイトを止めないとダメだな」


「うん!頑張って2人で止めようね!!」

とシーラは嬉しそうだ。って今度はアイス垂れそうだぞ!!


「シーラ…アイスが…」

と言ってる間にポタリと垂れてあーあと思った。でも垂れた場所が胸だし俺はあんまり見ないようにハンカチを渡す。

シーラはゴシゴシと拭いて洗って返すと言った。

ようやくご飯を食べ終わりサブリナと交代の時間で2人で天文部に向かう。そこに女の生徒数人と男子生徒数人がやってきて、


「ヴィルフリート王子!後夜祭私とも一曲踊ってください!」


「私とも!!是非お願いしたいです!」


「私もどうかお願いします!」


「シーラ様!後夜祭僕とも一曲!」


「私とも是非踊っていただきたい!」


「シーラ様お願いです!貴方と踊れるなら死んでもいい!」

と詰め寄られてシーラはビリビリと身体から電気を出して追い払った!


「わあああっ!」

皆は戸惑った。

シーラは怒り


「これ以上シーラとヴィルの邪魔しないで!!後夜祭はそれぞれ別の人と行ってね!!シーラはヴィル以外と踊らないしヴィルもそうなの!」

と怒り、皆は諦めてすごすご帰っていく。


シーラと踊れるかねぇ?フェイトを止めなきゃいけないのに…。


天文部に戻るとサブリナが


「あっ、2人とも交代の時間ね?よろしくね?さっき陛下達が来ていて見て行ったよ?陛下は月のこと自慢してたよ、ふふっ」


「ああ、サブリナ悪い。飯食って自由にして来ていいぞ」

とサブリナと交代しようとしたら


「サブリナ・テンニースさんですね?」

と上級生らしい男が現れた。おっ!サブリナもついに誘われたのか?と思っていたが


「これ君のだよね?」

とどうやらサブリナの持ち物か裁縫具を渡した。

(天文部なんて入ってたんだ…)

その男の心の声がきこえた。


「あ…デッセル先輩…」

(やだ…天文部入ってるのバレちゃったんだ…)

とサブリナは青くなった。


「ああ、王子にシーラ様初めまして、俺、刺繍部員ですよ。サブリナ・テンニースさんも以前刺繍部に入っててこれ退部の時に忘れて行ったので。すぐに返そうとしたんですが、中々タイミングが合わなくてね」

(こいつはいつもいつも逃げ回るしよ!)

と不穏だ。


「ありがとうございます…」

とサブリナは裁縫具を受け取った。その際にスルリと指を絡めたデッセル先輩。


(ひっ!!こ、この人…ほんと気持ち悪い!!)

とサブリナは心の中で言ったので、俺は


「用が済んだならもういいでしょう?先輩」


「ああ、そうですね、そういえばサブリナさんはこれから休憩かな?俺もなんだ!一緒にどう?」

とお昼に誘ったがサブリナは


(ひいいっ!絶対嫌っ!セクハラする気だ!)

と心の中で叫んだ。シーラも反応してキッと先輩を睨んだ。


「あれ?どうしたんですか?俺何かしたんですか?」

俺とシーラは心が読めるがこいつがサブリナにセクハラされたことを話すと不味いだろう。サブリナは性格上そんなことは他人に話さないだろうし。


(ふん、庶民ごときが貴族の俺に逆らうからだ。退部なんて言うから最後にそのスカスカな胸でも触ってやろうとしたのに引っ叩きやがって!庶民のくせに!!この落とし前つけさせてやる!)

とデッセル先輩は思っていた。筒抜けだよ。

そう言うことがあったのか。貴族だから庶民を馬鹿にして言うことを聞かせようとするクズだ。この学院内では身分は関係ないのに。


「サブリナさんほら行こうよ」


「え…あ…あの…」

サブリナにはシーラしか女友達はいない。


「シーラ、サブリナともう少し周ってこいよ!俺は1人でいいよ、友達とも楽しめよ!」

と言うとシーラはうなづき、


「ヴィルごめんね!サブリナちゃん!行こうよ!えーと、なんとか先輩ごめんなさい!」

とペコリと頭を下げてシーラはサブリナを連れて猛ダッシュして連れ去った!あの足には追いつけまい。


「くっ!」

と悔しそうな声を残して先輩は去って行く。

するとそこにキョロキョロしたナタリーが現れ俺を発見した。


「わぁ!ヴィル師匠!よ、良かった!迷っちゃって私!」

(本当は…なんか私仲間外れな気がして抜けただけだけど…)

と少ししょんぼりしていた。

そっか、こいつフェイトのこと好きだったな。しかもフェイトは全く相手にせずミリヤムミリヤムと言い続けてザシャと争ってるからナタリーも見てて流石に辛いんだろうなと察した。


「まぁ丁度いいからお前も受付手伝えば?」


「そういえばシーラ様は?」

俺は事情を話すと


「ええっ!?なんですかそれ師匠!セクハラなんて訴えればいいじゃないですか!先生とかに!」


「うーん、それな…サブリナは庶民だから貴族には逆らえないんだ。この学院は確かに身分を感じない接し方をしろと言う教訓なんだが…それは学院内の表向きの話と捉えてる生徒は多い。それに庶民の家なんて簡単に潰せる。サブリナもセクハラされたなんて大声で自分から名乗った所で揉み消されるのが落ちだな」

とナタリーはそれをメモって行く。おい、ネタじゃねーんだよ!


「酷い男ですね!そのデッセル先輩!サブリナさんにも良い人ができればいいですね…」


「それを願うけどな。でもいない場合は困ってる時は友達が助けてやるんだ。後夜祭…シーラと約束したけどサブリナも一緒にいられるようにしないと危険だな…」

するとそこにまた上級生の男が現れた。


「あ、ヴィルフリート王子…ご機嫌よう…あのっ、ここにサブリナ・テンニースさんはいますか?」


「あなたは?」


「お、俺はえっとサブリナさんやシーラ様と同学年で俺庶民でサブリナさんと同郷のマックス・ドレーアーと言います…でも、別に幼馴染とかじゃないです!俺はしがない靴屋の倅ですから…」

と言う。


(サブリナさんのことは好きだけど…後夜祭に誘いに来たけどやっぱりダメだな。いつもタイミング合わない…帰ろう…)

と聞こえた。


「おい!待て!ドレーアー先輩!」

ドレーアー先輩は足を止めた。


「?何ですか?ヴィルフリート王子」


「あの…お前さぁ?見たところ凄く誠実そうだな!サブリナに似合いそうだ!」


「えっっ!!?」

とドレーアー先輩は赤くなる。こいつは誠実だ!サブリナの気持ちは知らんが後夜祭にサブリナをあの貴族から守ることくらいは出来そうだ!


「実はサブリナ…ちょっと変な先輩に付き纏われているみたいだぞ?刺繍部のデッセルだったかな?」


「ああ、デッセル…メルヒオール・デッセル子爵家の嫡男様ですか。一応同学年ですね。自分と。…え?付き纏われてる?サブリナさんが?デッセル様に?」


「そう、本人からは言い出せないようだがシーラが何となく気付いてさ…どうもその先輩にセクハラされてるらしくてさ、さっきも昼を誘いに来てたからシーラがサブリナを連れて先輩から引き離したとこだ」

するとセクハラと聞き、ドレーアー先輩の目が怒りで燃えた。


(なっ、何だってええええ!!?セクハラだとおおおお!!?……サブリナさん可哀想に!俺が勇気を出して声をかけていれば!!いつもいつもそうだ!後ちょっとで話しかけようとしてタイミングを逃す!後夜祭で何とか告白しようと思っていたのに!でもセクハラ貴族なんかにサブリナさんを渡せない!)


「ドレーアー先輩…先輩サブリナを当日守ってほしいんですが…俺とシーラ…実はちょっと用事があって…」


「そ、そうですか…判りました…」


「おお!ならば俺からシーラやサブリナに伝えておきますから!!ドレーアー先輩は当日の朝から男子寮と女子寮の間の連絡通路にいてください!たぶん、デッセル先輩も来るからそれより先にサブリナを保護してやってください!えっとまぁ恋人のフリでもするようにして。サブリナにも合わせるように言っておきますよ」

と俺はにっこり言った。

こうしておけばシーラとフェイトを全力で止めれることに集中できる!


「判りました!!俺!頑張ります!!」

とドレーアー先輩は燃えた。

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