第35話 邪魔者はどこにでも
「さっきのコンテストほんと面白かったねー!」
とシーラや天文部の皆に子供達は集まりはしゃいだ。
「そうだ、天文部の出展も交代でやろう。入り口にいつまでも警備兵置いてると誰も入らないしな。順番決めとこうぜ」
と俺が言うと
「なら最初は私がいるよ、皆で回ってきなよ!」
とサブリナが一番手を務めた。
「いえ、サブリナ先輩1人はつまらないでしょうから僕も…」
とユストゥスが言うとサブリナは慌てて
「いいんだよ!ユストゥスくん!君はほら先生が壁の後ろから見てるから早く行きなよ!シーラちゃん達も!」
とサブリナは机を出してそこに座り受付をしながら本を読んでいた。
「悪い…お昼頃は俺とシーラが戻るよ…」
と言い残しサブリナは快く手を振った。サブリナの家族が来てないのが何となく気になった。
(皆幸せそうで良かったー!楽しんできてねー!)
と心の中も穏やかだ。
結局ミリヤムとザシャとフェイトとナタリーは芋づる式に蔓みながら周ることになり、俺とシーラにフォルカーとライマーが別れた。
「ごめんよ、シーラ姉様…ヴィル兄とのデート邪魔して」
とフォルカーが言う。
「いいよ、フォルカーとライマーも初めて来たんだから。案内するよ!あ、私…3学年の自分の教室で模擬店当番あるの忘れてた!!ヴィル来てね!!これ無料券あげる!うちメイドカフェするの!」
と渡してシーラは去って行く。
「ごめんねヴィル兄…男だけのもっさり見学ツアーになってさ」
「べっ!別に俺はそんなこと思ってない!シーラなんかいつでもいるし!!」
ととんがってるとそこに
「あら!!ヴィルフリート王子様!!先程ぶりですわね!!おーほほほほほほ!!」
「ロジーナ嬢…何でここに?」
(ふっ!タイミングバッチリですわ!あのシーラさんがいなければこっちのもの!!ん?何かコブ付きですわね?)
成る程、どっかで待ち伏せしてたのかよ。
するとフォルカーはロジーナ嬢を見て…首を傾げた。
「誰この人?」
「えっ!?さっき会いましたわよね?ほら入り口で…王族の方とも挨拶致しましたわ!私!未来のヴィルフリート様の王妃か側妃にしてもらいます、ロジーナ・ディーバー侯爵令嬢ですわ!」
と勝手に宣言している。
「ああ…思い出した!なんか1人で滑っていた人だ!!」
とフォルカーが思い出した。
「滑っ…しし失礼ですわね!」
「どっちが失礼なのさ!ヴィル兄はシーラ姉と結婚してシーラ姉が王妃になるし側妃は置かないと思うぞ」
とライマーも言う。
するとギロリとロジーナ嬢は睨みつけ、フォルカーとライマーはビビった。
「あんな、あんな節操なしの娘!ちょっと可愛くて乳があるだけの男を惑わす魔性の女に過ぎませんわ!神獣だからそういう力で誘惑してるんですわ!きっとヴィルフリート様もその怪しげな力に唆されているんですわ!!私の方が絶対にヴィルフリート様に相応しいのです!!」
と胸を張られた。
めんど臭えー。
「ヴィル兄行こう、相手するだけ無駄」
「そうだな」
「あっ、あっちに面白いのあるぜ!!」
「まっ!待ちなさい!貴方達!ヴィルフリート様!私もご一緒しますわ!!」
とロジーナ嬢は付いてくる。めんど臭え。こいつ友達いねえな?
*
一方、
私…ザシャ・フーデマンはバチバチとミリヤム様を巡りフェイト様と美味しいものを買ってミリヤム様に与える勝負をしている。
ナタリー様はフェイト様のスケッチを取りながら付いてくる。フェイト様はナタリー様には何の関心もないのである意味ナタリー様は哀れだ。
ミリヤム様は美味しそうにいつものように頬張っている。可愛らしいです。
後夜祭…王子は約束を守ってくれるでしょうか?気がかりです。
…私は…今この時くらいしかミリヤム様といられるか判らないのですから…。
私には身分があり、この中の誰より低い。私は伯爵家嫡男…。家を継がなくてはならないし、王家に仕える従者の家系だから絶やすことはできない。ミリヤム様の婿に行くことは出来ないだろう。
だから…何年か想い続けた人を…後夜祭で告白して潔く振られようかと思う。何故今なのかと言うと、私にもお見合いのお話はチラチラ来出したし、ミリヤム様にも軍関係でお見合い話は来ている。
ミリヤム様は恋愛に鈍感というか何とも思っていないだろう。彼女の思考は95%くらいは食べることかもしれないと長い付き合いで判る。だから私の告白失敗率も高い。ちゃんと後腐れないように今は楽しもう。もうすぐフェイト様と争うこともなくなるだろう。力では勝てませんし。
それに振られるなら早い方が心の傷も浅いでしょうね。
「ミリヤムねーちゃん!ほらほらこれ!さっき見つけた屋台の炙り肉!」
とまたフェイト様は肉を進める。ミリヤム様はお菓子が好きなのに。ほんとに邪魔な方だ。
いや、邪魔者は…最初から私なのかな?
そう考えていると口に何か甘いものを突っ込まれた。
「どうしたの?ザシャくんボーッとして?私のマフィン分けたげるよ!」
とマフィンが口に入って上手く喋れない。
「モゴモゴ…」
と言いつつ頭を下げた。
「美味しい?良かったー!!」
と無表情だけど嬉しそうでこちらも良かったです。
*
とりあえずロジーナ嬢を迷路で巻いた俺とフォルカーとライマーはシーラの所に行ってみた。
無料券があるからなんだからな!!
「いらっしゃいませーご主人様ー!猫耳メイド喫茶へようこそー」
と猫耳をつけた学生メイド達がたくさん出迎え
(きゃっ!ヴィルフリート王子だ!!)
(やだー!ときめくうう!)
(シーラ様の弟様2人も可愛らしいわ!)
(将来有望株ね!!)
と女達が心で浮かれていると後ろから目隠しされる。背中には柔らかい見知った感触。
「おかえりなさいませー!ご主人様ー!!」
「こんな悪戯するメイドいねえよっ!!」
と手を振り払って振り向くと猫耳をつけてさらにメガネをかけて三つ編みの清楚だけど胸のある可愛い女がいる!
「シーラ?そ、その格好は…」
「ヴィル…クラウディア様の真似をちょっとしてみたんだー?可愛い?」
ともじもじする。
可愛い…。
他の男が見たら…。
(あの子めちゃくちゃ可愛い!!)
(俺の専属メイドにしたいっ!)
(結婚してくれ!頼む!!)
(おっぱいもメガネも三つ編みも最高だな!!)
既に見られていた。当たり前か。
「大丈夫だよー!シーラはヴィル以外の男の客にはお料理運ばないんだよ!だってロザリオもチョーカーもあるから運んで行ったら逆に料理吹っ飛んじゃうから」
「ああ、そうか…ふ、ふーん」
フォルカーとライマーは
「ヴィル兄照れてる!!ヒューヒュー!」
「シーラ姉!バッチリじゃん!ヴィル兄の好みを抑えるなんて!スゲー!」
「えへへっ!」
とシーラは席に着かせ注文した料理を持ってきてメイドと写真ヴィル専用とカメラで写した。
くっ!何も言えない。
「じゃあ、メイドさんからあーんしますね?あーん」
「おい待て!そんなこと他のメイドしてないだろ!恥ずかしいからやめろ!」
「ごめんなさい…ご主人様…お仕置きしてください…」
とウルウルさせて
「やめろそんな趣味ない!!」
と言うと
(くっ!羨ましいぜ!ヴィルフリート王子!!)
(そこ変われや!!)
(お仕置きしたい!俺こそお仕置きしたい!)
もはや男共の煩悩まみれであり、
「おい、シーラ…いつ交代なんだよ?それまで俺はここにいるから…後で一緒に周るぞ!」
と周囲の男共を睨みつけた。
「うん、後もうちょっとかな…」
「そうか!ちゃんといつもの格好で来いよ!!」
と念押ししておいた。これ以上メイド服のシーラなんか見せられるか!!
シーラの交代の時間で外で待っていると着替え終えたいつものシーラがやってきた。フォルカーとライマーは
「シーラ姉遅いから俺たち勝手に周るよー!後はご自由にー!」
と置いてかれた。
「フォルカー達どこ行ったの?大丈夫かな?」
「鼻が効くから迷子にはならないだろ…行くぞ、サブリナの交代まであんまり時間ねーけどな」
「うん!」
とシーラは嬉しそうにするがまたそこにロジーナ嬢が現れた!
「見つけましたわよ!!ヴィルフリート王子!!あら?シーラ様もいらしたの?」
「……ロジーナ嬢…俺のことは諦めて…」
「嫌ですわ!!」
即答で応えられた!!
(ずっと王子が好きなのにこんな女に取られてたまりますか!!唆されて可哀想なヴィルフリート王子!)
誰が可哀想だ!!
お前のが可哀想な奴だわ!!
しかしそこでフォルカーが戻ってきて
「あ、残念令嬢!丁度良かった!俺たちの案内してよ!ほら行くぞー!」
と凄い力で引っ張られロジーナ嬢は
「きゃあああ!人攫い!!」
と叫んで連れて行かれた。
「………行くぞ」
と俺はシーラに手を差し出した。シーラは嬉しそうに手を重ねて歩いた。
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