第26話 仲直りしてやってもいい

ハッ!

と俺は目を覚ますと隣で寝ていた父上も目を開けた。というか12にもなって父上と隣りで寝るなんて…ついドカッとベッドから蹴り下ろした。


「痛いわ!お前っ!父上に何すんの?後国王陛下に何すんの?」


「うるさい気持ち悪い!」


「くっ!段々と可愛いヴィルが…」


「ヴィル!!」

父上の言葉を遮り俺に泣きながら飛びついてきた物体。シーラだ。


「おやおやおっさんは邪魔だな…ヴィル…解ってんだろうな?ちゃんと仲直りしとけよ?後シーラちゃんザスキアが変なもん飲ませてごめんな?」


「え??女神様??」

シーラはキョトンとしたが


「説明はこのヴィルから聞いてやってくれ!じゃあな!はいはい、皆もちょっと2人にしてやろう!そうだ!俺が久しぶりに夕食を作ってやろう!」

と父上が皆と出て行きながら言うとアスカ様とミリヤムは大はしゃぎで目を輝かせながらヨダレを垂らした。


バタンと部屋の扉は閉まり廊下から

「やったーー!!久しぶりの日本料理ー!」

「お腹空いたーー!」

と騒がしい声が遠ざかっていく。


シーラは静かになった部屋で


「ヴィル…シーラすごく心配した。一日中目が覚めないで…シーラおかしくなってて…ヴィルのこと嫌いなんてなんでか判んない」


「そ、それは…俺が悪かったよ…お前があんまり俺にベタベタするから女神様がちょっと自制する薬をくださってそれを…眠ってるお前に飲ませたんだ…後から判ったんだが、それ自制の薬じゃなくて間違えてシーラが俺を嫌いになる薬だったらしい…」

と言ったらシーラはポカンとし


「そんな…そうだったの…」


「だ、だからお前は悪くないんだ。変なの飲ませた俺が今回は悪い」


「ううん…シーラがもっとベタベタしなきゃ…。学校じゃないからってはしゃいだから…」

シーラは涙をまだ流している。

俺は


「酷いことばっかお前に言った。ごめん…でも俺もそんな素直になれないと言うか…。でもシーラは薬が効いてる中、全部思ってること言っただろう?俺の嫌いな部分」


「!!」

シーラはビクリとした。


「違う…シーラは…ヴィルのこと嫌いじゃない…照れ屋なのも知ってるの…あほって言われるけど確かにシーラあほなところあるし!ヴィルのあほは…本当はシーラのこと好きの裏返しだって勘違いで思うことにしたら嬉しいから…シーラあほって言われても平気なの…2歳も年上なのに…こんなのでごめんなさい」

とシーラはハラハラ泣き続ける。


「シーラ…ほんとあほだな…」

またシーラはビクリとして泣くから俺はギュウと抱きしめた。耳元で小さく


「勘違いじゃない…合ってる…お前…可愛い」

と囁くとシーラはいきなり身体が赤くなりボンっとなる。


「ヴィ…ヴィル…な、ど、どうしたのっ!?ねねね、熱でもあるのっ!?」

とシーラは涙も引っ込みあわあわした。


「……お前に嫌われてちょっと俺も反省しただけだよ…だからな、仲直りしてやってもいいぞ、いや俺が悪いけど」


「仲直り!?うん…シーラごめんね?ヴィルのこと本当に嫌いじゃないからっ!大好きだからね?」


「シーラ…お前が俺のことを好きなのは…番だからその本能が強くて俺と早く子供を作りたいんだろ?」


「確かにヴィルはシーラの番で本能に抗えない時もあるけど…でも、人間の女の子みたいに好きなのも本当なの…。シーラ人間に産まれたかった…。だからシーラ我慢するの…」

とシーラは俺に赤い顔を隠して抱きついている。


「ごめんなシーラ…お前の本能も判る。でももうちょっとだけ待ってくれ。せめてお前の背を超して見下ろすくらいな…。そ、それまで俺はいろいろと素直じゃなかったりするけどさ…」


「うん…いっぱい困らせてごめんね…ヴィルに酷いことしてごめんね?痛かった?」


「ちょっと痺れただけだ。俺も普通じゃないから…」

と言うとシーラは顔を上げた。


「シーラ…倒れる前に言ったのは本当だ…。じゃないと婚約なんてしないし…」


「ヴィル…もう一回聞きたいの…それで我慢する…ヴィルが背を超すまで…」

俺はシーラの頰を撫でた。


「シーラ…えっと…俺からキスしたい時はするから!いやそれ以上はしないっ!まだっ…」

と言うかできないだろ!!それ以上は!


「う…うん…」

とシーラは赤くなりもじもじする。心臓が跳ねて俺は


「シーラ…好きだよ…」

と俺もたぶん赤くなりながら言った。金色の目が嬉しそうに赤い顔の俺を映していた。

それから優しくシーラの柔らかい唇にキスを落とした。


シーラとキスで仲直りした後は2人で食堂に行ってみるといい匂いがする!あ!これ!


「やった!グラタンだ!!」


「ヴィルの好きなやつだね!良かったねヴィル!!い、いつかシーラも覚えるね!!」

俺はシーラにニヤリと笑い


「お前に父上のあのグラタンを超えられるか?」


「う…陛下のグラタン…て、手強い…」

と苦い顔をした。まだまだだなっ!


「行こうぜ!」

と食堂を開け皆はニコニコと俺たちを迎えて久しぶりに賑やかな食事になった。


「ああ、ディアも連れてくるべきだったわ。アスカ…お土産包んで後で俺を送ってくれよ?」


「ジーク…私タクシーじゃないんだけど…まぁ今回は仕方ないわね」

とアスカ様は食べながら言う。するとカミル公爵が


「クラウディア様達ともお久しぶりにお会いしたいので僕も行っていいでしょうか?ね、アスカ…ブッシュバウムの温泉久しぶりに入ろうよ」

と言うとアスカ様は


「そうですね、久しぶりに温泉卵に饅頭もいいですし旅館の刺身や料理も日本を思い出していいわ」

とついでに俺の国で旅行するみたいだ。


「んじゃ、帰ったらディアも誘って皆で温泉行こうぜ!コンちゃんやテオドールくんやローマン達夫婦も誘ってさ」

と大人達は盛り上がっていた。


子供達も俺とシーラは仲直りしたし、フェイトもザシャにやり過ぎたことをちゃんと謝った。ザシャも快く許した。あいつ大人だな。

なんだかんだ幼馴染だもんな。ナタリーは何か必死にメモをして、サブリナとユストゥスは珍しい料理に夢中だ。


それから先に父上達がアスカ様とブッシュバウムに転移してからも俺たちは星の観測をしたりプラネタリウム立地の土地を探して最適なのは

メルト町にしようと言うことになった。メルト町は昔村だったが発展して町になった。田舎町だが星が良く見えるらしい。


そこに俺は天体観測プラネタリウム建設を決めた。まずはその装置の完成や巨大望遠鏡作りを目指し建物も大工達と相談することにした。

シーラ達は俺が大人と話してる間はポカーンとしていたが任せることにしたようだ。


いつかシーラにも話さないとな…隕石のこととか。

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