第27話 誕生日と甥
休暇が終わり、ブッシュバウムに戻り寮にも戻ろうと荷物を纏めているとシーラの弟のフォルカーとライマーがやってきた。
「ヴィル兄!もう行くの?」
「何だ?お前達こそまだいたのか?番探しの旅に出ないのか?」
と俺は2人に聞くとフォルカーは
「何かちょっと疲れたし俺たち実家に一年くらい居て、来年度の中高等部から俺もフェイトと一緒に1学年から寮に入るよ。それまでは家で家庭教師つけてもらうんだ」
「うん、俺たちあんまり人間社会学んでないからねー。一年勉強するんだ。学院楽しみだよ。俺は初等部6学年から編入するけどさ」
とライマーも言う。
「お前ら…でも番探しはいいのか?」
「うん…ちょっと休むさ。大体番なんて早々見つからないよ!たった1人のメスだよ?星の数だよ…」
とフォルカーが半ば諦め気味で言う。
ライマーも
「俺もさー、いろんな国にフォル兄と旅してきたけどさ、俺たちくらいの子供は皆学院に行ってて友達と楽しそうなの見てなんかいいなって思ったんだ。番なんて幻レベルだし今まで居なかったしもう学院生活送って俺たちも楽しもうと思ったんだよー」
とライマーが言った。
「まぁお前らがそれでいいなら1年間家で人間社会学んで学院に通えよ。待ってるぞ、フォルカー、ライマー」
と俺は2人に言うと
「うん!ヴィル兄…そうだ!もうすぐさ、ヴィル兄誕生日だね、シーラ姉もヴィル兄の数ヶ月後くらいで15か」
「ヴィル兄はえっと13だね?今度の誕生日で」
とライマーは指を折って数える。ライマーは算術があまり得意ではない。
「そうそう合ってる。よくできたなライマー」
と撫でてやる。
「ライマー…出来て当たり前だ…。初等部で馬鹿にされないよう算術頑張れよ!」
とフォルカーは青髪を揺らしニヤリと笑う。
「判ってるよ…」
と白髪ライマーは剥れた。
「そう言えば王弟殿下のお子様ももうすぐ御産まれになられるね」
とフォルカーが言う。
「ああ…ユリウス叔父上とローゼおば様の子供か…もうすぐか…俺の誕生日とどっちが先だろうなぁ…」
王弟殿下のユリウス叔父上は父上の9歳離れた弟でまだ若い。ユリウス叔父上はまだ24歳だった。ローゼおば様はユリウス叔父上の2歳上だから26歳で、おば様は実は女神界にいた元天使で堕天して羽が無くなりユリウス叔父上と結婚したと言うから驚きである。その事実はやはり少数しか知らない。
人間と天使が恋に落ちることは女神界では禁忌とされておりユリウス叔父上と結ばれるには堕天しなくちゃならなかったらしい。
若い頃にローゼおば様とユリウス叔父上は実は婚前前に子を成したけど、妊娠中事故で子を失い相当な悲しみを負ったそうだ。
それから子供が全然出来なくて困っていた叔父上達は孤児を引き取り長男がいる。名前をヨーナスと言う。ヨーナスは妹のステファニーと同い年であり、初等部に通っている。顔は少し怖くて無口だが心の優しい少年であることは俺は心を読めば判るので知っている。叔父上達は王都に邸を持ちそこで暮らしている。
叔父上のおかげでこのブッシュバウムの王都クラリアンはかなり治安がいい!!そう、父上の弟と思えないくらい叔父上はクールでカッコいいと俺は幼い頃から思っていた。俺にも優しく諭し、人々の為に尽力する素晴らしいお方だ。まぁ裏で悪さを企む貴族は全て叔父上が暴き罰せられてるからな。ローゼおば様が事故に遭い子供を失ったことも貴族の妬みによるものだろう。王都クラリアンは実質叔父上の管理下であると言ってもいいくらいだ。
なのでコンチャーン様がクラリアンに遊びに来た時何回か牢に入れるくらいだった。
「こらあ!ユリウス!貴様いちいち我を牢に入れるな!!顔見知りだし、我神獣だし、侯爵様だぞ!?」
とコンチャーン様が騒ぐと冷静にユリウス叔父上は
「すみませんコンチャーン様…あなたが下品な品物を持ってないか検査する為ですよ…ふふ。このクラリアンは清潔に保ちたいので」
「おいっ!我が汚い物みたいに言うな!!」
とコンチャーン様が突っ込むがクールに笑う叔父上は最高にイケメンでカッコいいと思っていた。
そんなカッコいい叔父上にとうとうローゼおば様との子供が産まれる。
もちろんヨーナスも楽しみにしているし、ユリウス叔父上もローゼおば様もヨーナスのことも愛しておられて本当の家族のように可愛がっている。ヨーナスが孤児など感じないほどに。
「俺も叔父上が父親の方が良かったかもしれないな…」
と言うとフォルカーとライマーも
「「判る!!なんて言うかユリウス王弟殿下スッゲーカッコいいよな!!王都の女なんて未だに目をハートにして発情してるもん」」
と言う。発情って。言い方。
まぁ事実叔父上はかなり女にモテる。まぁ王家の血を引く者はと言うかブッシュバウム自体何故かイケメンが多い。父上は昔
「あー…まぁ恋愛ジャンル世界だから多いんだよ。イケメン」
とか言ってたな。まぁ確かに多い。
「赤ん坊メスかな?オスかな?楽しみだよなーっ!?お祝いどうしようかな?」
とフォルカー達は楽しみにしている。
*
俺の誕生日が来て当日は寮で簡単にケーキとかが振る舞われるだけだったが、後でシーラに呼び出されて俺はプレゼントを貰った。俺は男子からのプレゼントは貰っておいたが女生徒からはシーラのしか受け取らなかった。
シーラは空き教室で包みを渡した。
何だろうと開けると中には腕に着けるカッコいいブレスレッドが入っていてシーラが父上に聞いて職人にこっそりと頼み込んで更に父上に女避けアクセサリーにしてもらったらしい。俺が前にシーラに上げた男避けのロザリオと似たようなものだがシーラも不安だったんだろう。いくら心が読めるからと言って。
「お前にしてはセンスがいいなこれ」
「気に入った?ヴィルの好みそうだと思ったからシーラ頑張ったよ!!」
と照れ臭そうに笑う。
するとスマホが鳴った。何だ?
「はい…なんだ父上か…切るぞ?」
「切るな!!バカ!!ローゼちゃんが陣痛に入ったぞ!今日か明日には産まれるぞ!」
「ええっ!!?ほんとか?じゃあ、今すぐ行くわ!!」
と電話を切る。
「どうしたのヴィル?」
シーラに事情を話すと
「じゃあ、寮長や先生達に特別外出許可取ってくるから待ってて!」
とシーラはダッシュで伝えに行き、俺はザシャを呼びに行って馬車の手配もした。
「まさか王子と同じ誕生日になるんですかね?」
とザシャが言う。ユストゥスやサブリナは寮に残り気をつけてと見送りシーラとザシャと俺とで王都へと急いだ。
王都のユリウス叔父上の邸に着くともう親戚達は皆集まっていた。フェイトもフォルカーとライマーに親達もいる。ユリウス叔父上はいつもとてもカッコいい顔をしていたがこの時ばかりは不安そうに落ち着きなく廊下を何周もウロウロしていた!!
(ああっ!ローゼ!!大丈夫だろうか!?無事に産まれるだろうか?苦しいだろうね!!どうしよう!!君の痛みが僕にも分かればいいのに!!あ…トイレ行きたい!!)
と普段クールに心のシャッターをしている叔父上が!!めちゃくちゃ心配してる!!
父上が呑気に
「大丈夫だって!ユリウス!ちょっとトイレ行ってこい我慢すんな」
と言うが
「兄上!トイレ行ってる間に産まれたら僕は赤ちゃんの第一声を見逃します!!」
母上は
「大丈夫ですよ、ユリウス。きっと深夜になると思いますわ」
と言う。流石母上落ち着いている。
すると父上とユリウス叔父上の妹のエリーゼ叔母上も数日前から隣国アルデン国から来ていて
「そうですよ、ユリウスお兄様…」
とエリーゼ叔母上が言う。
「そ、そうだね僕…少し行ってくるよ」
とトイレに向かいヨーナスに
「ヨーナス!ちょっとだけ外すから赤ん坊が鳴いたら知らせてくれ」
「お父様…知らせてくれって…とにかく早く行きなよ?顔が我慢し過ぎて土色になってくよ?」
とヨーナスに言われて叔父上がダッシュでトイレに走った!!どんだけ我慢してたんだろ!?
しかし叔父上がトイレに入って数秒して
「オギャーー!!」
と赤ちゃんの第一声が聞こえてその場の者は全員喜んで良いのか一瞬戸惑った!!
父親はトイレ中!!
俺はヨーナスの肩を叩いた。
「ヨーナス…しょうがない」
「うん…ヴィル王子…」
とヨーナスは怖い顔をしながらも苦笑いした。
結局可愛い紫の髪に叔父上の蒼い瞳の可愛いらしい甥っ子が産まれた。俺と同じ日か。
緊張でお腹を壊した叔父上は第一声を見逃して絶望していたが赤ちゃんを見てクールな顔がまた崩れてしまった!!
しかも泣いてる!!
「ヴィル王子…そりゃ泣くよ…自分の子供だし」
とヨーナスはちょっと寂しそうに言うが
「ヨーナス!!おいで!!お前の弟だよ!!」
と叔父上が呼んでヨーナスは…怖い顔で赤ん坊を見て…叔父上と同じように泣いてしまった。
「可愛いな!こいつ!!うっ…俺…俺のおとうと…」
と叔父上とローゼおば様は優しくヨーナスのことも抱きしめた。俺たちは優しく見守った。
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