第18話 美少女ナタリーの初恋

結局歓迎会に出れないまま俺達は7日間の連休に入ることになり、エルネスタ公国に天文部メンバーと後、フェイトを連れて行くことにした。


「エルネスタ公国か…ミリヤムねーちゃんの故郷だったよな…」

とフェイトはミリヤムに聞くと


「そうだよ。田舎だけど母様と私がよく食べるから食べるものには困らないよ」

とミリヤムはモグモグなんか食べてる。

フェイトはそれを見てニヤリと笑い懐から白くて丸いものを出した。


「おいそれ確か…肉まんだっけ?」

フェイトの母親のレーナおばさんも転生者だったなぁ。父上がいろいろ作ってくれた料理の中にこれも確かあった気がするぞ。


「そうだぜ、母上がこれたまに食べたくなるからうちのシェフにレシピ貰って作って貰うんだ。ミリヤムねーちゃんにもやるよ!」

と何故かフェイトはごっそりと大袋に肉まんをたくさん入れて渡して、ミリヤムの目が輝いている。


「ふおううう!フェイトありがとう!!」

完全に餌付けられてるな。すると横からザシャが


「ミリヤム様…私もこちらを持って参りましたよ」

とザシャは揚げ菓子の冷めても美味しい父上の前世料理レシピの一つのドーナツを沢山の味の種類があるやつを大量に渡した。ミリヤムは甘いドーナツが結構好きだった。


「ふわっ!!ドーナツ!!こんなに!!やった!ザシャくんありがとう!!」

とまた餌付けされていた。

瞬間、ザシャとフェイトの間に雷が落ちたような空気を感じた。ザシャの心は読めないがフェイトは結構解りやすい。


(こんの野郎ーっ、俺がミリヤムねーちゃんに食べさせるの邪魔しやがってぇー!!ムカつくわザシャ!!)

となんか知らんがフェイトはどうやらミリヤムが好きなのか?いないと言ってたが。しかしフェイトは俺やシーラを見ると心のシャッターをバシッと閉めた!こいつも制御してきたな…。


ザシャはいつも完璧ににこにこしながらミリヤムが食べるのを見ている。

あれ?ザシャももしやミリヤムが好きだったりすんのか?そういや前も飴とかあげてたしなー…。んー?どっちも小さい頃から一緒に遊んでたりしてたしなぁ…。


しかしミリヤムのやつ…妹より普通の顔してるのに何でモテるんだ!?


「とにかくそろそろ皆行くよーっ?荷物持ったー?」

とミリヤムが転移魔法を使う為に天文部の皆やフェイトに声をかける。


準備が整い、俺たちはミリヤムの転移魔法でエルネスタ公国に一瞬で到着した。

サブリナとユストゥスは魔法に慣れてないから驚いて感激した。


「うわぁーっ…ここがエルネスタ公国…」


「案外緑が多いな」

と俺が言うと


「大自然で鍛えがいがあるなっ!ヴィル兄!後で相手してよっ!」

と戦闘狂のフェイトが髪をザワザワさせて興奮している。闘いに来たんじゃねっつの!


「そう言えばセキおじさん達にお土産渡してこいってお母様に言われてたからまた後日ちょっと私は行ってくるけどヴィルも行く?」

とシーラが言う。シーラの親戚のドラグーのセキリュウさん一家はエルネスタに住んでいるようだ。セキリュウさんは赤い色のドラグーである。


「うん、まぁいいぞ」

と言っておく。

セキリュウさん達は滅多に人型化はしないのだ。


「シーラちゃん?ここにもご親戚の神獣様がいるのね?」

とサブリナが言うと


「すす、凄いですね。ぼ、僕も見た…」

とユストゥスが言うのを遮り


「だめだ!!」

と言っておいた。

えっ?と言う顔で二人は俺を見た。


「シーラはドラグー化してセキリュウさんとこに行くんだ…俺を背中に乗せてな…」

と言うとフェイトが付け足した。


「先輩たち、解んないよな。シーラねーちゃんはドラグー化する時に服を脱ぐんだよ!全裸だ!」

するとユストゥスがシーラを見て


(えっ!!?服ぬっぬっ…うわぁーっ!シーラ様ぜぜ…)

と想像し出したので俺はユストゥスをボカリと髪の毛をハンマーにして殴り気絶させた。


「想像すんなこのあほめ!」

と言う。まぁ聞こえないだろうが。ザシャはユストゥスを軽々おぶり、皆でとりあえずミリヤムのリーンハルト公爵邸に転移した。


「いらっしゃいヴィル一行モグモグ…」

と無表情の黒髪美女の魔女アスカ様…ミリヤムの母親が何かを食いながら娘同様歓迎した。

夫のカミル公爵は苦笑いをしつつも歓迎した。


「お母様…肉まんとドーナツもらった!」

とミリヤムがザシャとフェイトから貰ったのを見せるとアスカ様も目を輝かせた!


「ドーナツ!!肉まん!!カミル様っ!!ドーナツと肉まんです!」

と夫に勧めるアスカ様。


「う、うん!ドーナツと肉まんか。うん!美味しそうだね!!お土産ありがとう!えっと、皆の部屋に案内して夕食はたくさんミリヤムの好きなもの出そうね。おかえりミリヤム」

とカミル公爵はミリヤムの頭を撫でた。ミリヤムは猫みたいに気持ち良さそうにしている。アスカ様はそれを見て


「カミル様私も私も」

と頭を出してカミル公爵は同じように撫でた。


「そうだ、ナタリーもいるよ。フェイトくんに後他の子も会ったことないよね?ヴィルフリート様達は小さい頃以来だね」

アスカ様は肉まんを頬張りながら


「ナタリーのやつオタクだ。漫画描いてる。でも私にも絶対見せない…きっとエロい漫画描いてる…」

とアスカ様が言い、カミル公爵は慌てた。


「さ、流石にそれはないんじゃないかな?ナタリーは恥ずかしがり屋だから…」

(ううーん?ナタリーがエロいもの描いていたらどうしたらいいんだろうかー!??)

とカミル公爵は困っているようだ。


「よし、公爵様俺がそのナタリーの漫画奪ってきてやるぜ!いかがわしいやつ描いてたらガツンと叱ってやれ!!」

とフェイトが従者を捕まえてナタリーの部屋を聞き出して掛けて行った!


「お、おい!待てフェイト!!ナタリーが驚くだろ!!お前の顔知らないんだぞ!」

と言うがフェイトはもはや聞く耳持たずで突っ走りやがった!ヤバイ!あいつならナタリーの部屋壊しかねないぞ!


「とにかくナタリーの部屋に急ごう!!」

と俺たちも追いかけた。



ドタドタと物凄い音が聞こえる。

ナタリーはペンを止めて反射的に机の中に描いたものをしまった。

するとドンドンと扉が乱暴に叩かれビクリとする。


「なっ何!?まさか強盗!?…お父様達は?でもお母様がいるのに何故!?」

ナタリーは武器になりそうなものを探して花瓶を構えるしか無かった。


バキッ!ミシッ!


とドアが破壊される音と共に赤髪の自分と同い年くらいの少年がいきなり現れてナタリーは息を飲んだ。思わず花瓶を落としてしまうくらいその男の子は勇しくカッコよくて赤い瞳に釘付けになる。


「お前がナタリーか!?」

と何故か自分の名前を知っている!

ナタリーは赤くなる。これは…もしや、物語で言うところの王子様で私をこの後攫いに来たとかいう展開だったり??

と赤くなる。


「う、あ…あの…」

と戸惑っていると彼は近づいてきて


「お前ナタリーか?」

ともう一度聞く。コクコクと綺麗な顔立ちの子にうなづくと…


「ふーん、じゃあ漫画出せっ!」

と言ってきた!!ええええ!?

とそこで


「おおい!フェイト!!お前っやりやがったな!!何ナタリーの部屋のドア壊してんだこの破壊魔!!」

と彼とよく似た赤い髪に蒼い瞳の年上のお兄さんが現れてその後に金髪金目のお姉さんが続きその後にもぞろぞろと何人かが部屋に入ってくる!!

な、なんなの?

するとお姉様がひょいと顔を出した。


「お、お姉様!こっこれは一体!?」


「ナタリー…ほら、ヴィルだよー、シーラ、んでザシャくん覚えてる?」

と小さい頃そう言えば数回だけ会ったお姉様の幼馴染のような彼等を思い出した。


「あ…」

ではこちらの赤い髪の方はヴィル様の弟さん??


「ナタリー久しぶりだな。その破壊魔は俺の従兄弟のフェイトランス・バルシュミーデ…フェイトだ。すまん、ドア壊して」

と謝られた。


「おいそれより漫画寄越せ!お前やらしいの描いてんだろ!?怒られろ!」

とフェイト様がおっしゃり青ざめた。


「ええ?あの?やらしいとは??」

(私そんなの描いてない!!どうしよう!!)


「フェイト!落ち着け!そんなの描いてねーよ!」

とヴィル様が宥めた。


「じゃあ、何描いてんだよ?俺たちに見せれないのか?」

とフェイト様が迫り私は心臓が止まりそうですわ…。


「あのっあのっ、わ、私…」

机を開けて恥ずかしくて涙目になりつつも皆さんにお見せしてしまった。だってもう隠せないわ…。

ああ、バレてしまいましたわ!家族にも内緒でひっそりと描いていた漫画!

恋愛漫画を!!


ヴィル様にシーラ様にフェイト様達は渡された物を見た。


「うっ…うめえ…」

とヴィル様が唸った。


「へえ?変わった絵柄だけどなんか繊細で綺麗だね」

とシーラ様。もう一人のお姉様は横から見て


「まぁこれ!内容もしかして恋愛ものかしら?漫画ってこういうのもあるのね!!」

と驚いた。


「ああ、一応俺が描いたやつはなんていうか男が主人公のものだったり戦ったりするやつメインだから、ナタリーのこれはきっと女性向けだな」

とヴィル様が言う。そう言えばヴィル様ってこの世界に漫画を広めた…


「ままま、漫画の神様!!!」

と私はヴィル様にひざまづいた!


「いや、違うけど…何言ってんだよナタリー…」

とヴィル漫画神様が私目に口をお開きになられた!


「ヴィル神様に比べたら私など赤子の手を加えたようなものですわ!!」

と言うと


「いや、お前普通に絵上手いし売れば?絶対売れるぜこれ?」

と神様が私の描いた漫画を認めてくれて私は涙を流した。ヴィル神様がぎょっとして


「おい、やめろ泣くな!後俺は神様じゃねぇ!!」

と突っ込まれた。しかし横のフェイト様は


「俺…ヴィル兄の描いた漫画の方が面白いし好きだなぁ、これ女向けなんだろ?なら男の俺には読めねぇや」

と興味を無くされた…。

ああああっああっ!フェイトランス様ああああああ!


まさかの展開に俺は驚きを隠せない。数年ぶりに会ったミリヤムの妹はかなりの美少女に成長しており、正直フェイトと並ぶとお似合いだった。しかも心を読んだ俺はナタリーがフェイトに一目惚れしてしまったのを知った。


んで何故か俺は漫画の神様にさせられるし。

するとナタリーはまたひざまづいて


「ヴィル神様!!どうぞ!どうぞ私を弟子にしてください!フェイトランス様が好きな絵柄をマスターしてフェイトランス様がお好きなストーリーを描きたいです!!」

と弟子入りしようとしてきた!!


「おいやめろ!お前は女子受けするやつ描けよ!売れるって言っただろ?」


「しかし!!それではフェイトランス様が好きなものが描けません!」


ひっひいいいい!!あくまでフェイト基準だ!!フェイトはもう興味無さげにしてるぞ!?おいこらフェイト!責任とれバカ!

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