第17話 一触即発新入生歓迎会2

「シーラちゃんが!どうやら毒を飲んで倒れたの!ヴィルくん医務室に早く!!」

とサブリナが言い、二人で医務室に急いだ!


シーラ!何で毒なんか!?お前心読めるだろ!?バカ正直に飲むなんて!そこまであほだったのか!?と思ってたらサブリナが走りながら説明した。


「今日は午前中で授業終わりでしょ?お昼は食堂閉まってて寮のキッチンで簡単に取る子が多くてね、私とシーラちゃんも女子寮のキッチンで軽くサンドイッチ作って食べたの。その時水差しの余ってた水をシーラちゃんが全部飲んだから私は新しいのを出して飲んだの…たぶん水差しに毒が…って私じゃないよ?もちろん!!」


「判ってる!サブリナはそんなことしない!それじゃシーラも気付かないよな!」


「それからしばらくは普通でとりあえずシーラちゃんの髪を結おうかなって話してたらシーラちゃんがどんどん顔色悪くなって…倒れて…」


「倒れたのはさっきなのか?昼が終わってすぐじゃないなら即効性の毒じゃないよな」


「う、うん、シーラちゃんがうわ言みたいにヴィルくんとの待ち合わせ場所教えてくれたから私が代わりに!」


「判った…」

即効性でないとは言え…毒が周りシーラが苦しんでいる…。誰だ!?毒なんか!!………俺を狙った女子のせいか!


「今、先生がロジーナ嬢を捕まえて問いただしてるんだ…一番シーラちゃんに喧嘩売ったりしてたでしょ?」

ロジーナ嬢か…確かにな…。

だが、今はシーラだ!もしシーラが即効性の毒で死んでしまったら俺は…。


考えていると医務室に着いて扉を開けるとザシャやミリヤムにユストゥスがいて、ユストゥスは俺を見て立ち上がりサブリナを押しのけて走った!


一瞬だけど心の声が聞こえた。


(ど、どどどうしよう!僕のせいだ!!)

と。


「ザシャ!!ユストゥスを捕まえろ!あいつ何か知ってる!!」


「え…はい!」

とザシャは瞬時に理解してユストゥスを追いかけた。ザシャやミリヤム達は俺とシーラとの付き合いも長いから心を読めることは何となく知ってる。ユストゥスは知らない。

だがユストゥスが何か知ってるのは確かだ!


「ヴィル!シーラ姉ちゃんに一応毒消し薬飲ませたけどまだ効いてない…」

とミリヤムが言い俺はシーラの苦しそうな顔を見た。青くなり額から汗が球のように浮かび


「ううう…」

と呻いていた。すぐにシーラの手を握り俺は力を使った。毒の浄化が始まり、シーラは楽になっていく。良かった。


サブリナは気を利かせて


「ミリヤムちゃん、先に歓迎会に行こう?」


「う、うん…ヴィル…シーラと後で来てね」


「ああ…」

と言うとミリヤムたちは出て行く。


「ヴィル…毒を浄化してくれたんだね…ありがとう」

俺は手を握ったまま


「あほめ…もっと注意しろよ…」


「ヴィル…泣きそう…」

シーラが起き上がり大丈夫だとガッツポーズを取るが


「あほめ!お前死ぬ所だったんだぞ!!」

と抱きついた!


「ふぐっ!?」

何がふぐっ!?だ!あほめ!

俺は震えていた。


「ヴィル…心配かけてごめんなさい…シーラ…もっとね、ちゃんと髪の毛きちんとして髪の毛リボンとか飾って可愛くするつもりだったの…ヴィルの心臓射抜くくらい…」


「そんなもん…どうでもいいわ!」


「ええ?良くないよぉ…女の子だもんシーラ…」


「何もしなくても可愛い…」


「えっ……」

シーラが驚きの声を上げて俺の顔を見ようとしたので俺は見せるか!とばかりにちょっとだけ力入れて抱きしめた。


そうするとシーラは大人しくなり二人とも黙ったまま時間が流れていく。



ザシャはユストゥスを追いかけていた。まさかルームメイトで仲も良かった彼がシーラ様に毒を盛るなんて何かの間違いと思いたいがきっと何か事情があると思っていた。王子は心が読める。それを知ってる人は少ない。


逃げ足が意外と早いユストゥスは行き止まりの壁に追い詰められたので私は爪を伸ばして彼を捕らえた!これは私の父上の能力を受け継いだものだ。壁に爪は突き刺さりユストゥスは逃げられなくなった。


「ひっ!ザシャくん!のっ能力持ってたの!?」

とユストゥスは怯えた。


「まぁ…持ってますね。見れば判るでしょう?ユストゥスくん…君は何を知ってるのですか?」

と問いただした。


医務室には未だに抱き合う俺たちがいた。

ヤバイ…離れるタイミングが…。何か憎まれ口でも…いや流石に…。ど、どうしようか。キツく抱きしめてるからシーラの柔らかい胸当たってるし…顔見られたら真っ赤なのバレるし…。シーラも離してとか言えよ!!

全然っ言わんなっ!


むしろシーラも背中に手を廻してガッシリ抱き合ってる!!シーラはモゾモゾ動いて何とか顔を見ようとするから俺もやけになって頭を押さえつけるがシーラは背中から手を外して俺のシャツのボタンを外し始めて


「な、何しとんじゃい!こら!!」

と勢いよくベッドにシーラを押すと俺の頭を咄嗟に掴んだシーラと共に倒れてしまった!


「ヴィル…」

とシーラがまた背中に手を廻しかけたところでザシャとユストゥスが戻ってきて俺たちを見ると


「あ、お邪魔しました」

と閉めようとするから


「まっ!待て待て!違う事故だ!!」

とシーラからすぐ離れた!もう顔赤いけど仕方ない!!

シーラは残念がっていたが知らん!



医務室で俺はシーラやザシャとユストゥスの話を聞いた。


「実は…僕その…パートナーが居なくて…それはそれで良かったんですけど…ある一年の女の子がパートナーになってあげるからちょっと女子寮の方の給仕手伝って欲しいって…キッチンで水差し並べといてって言われて女子の…制服とカツラを渡されたんです…。少なめの水差しがあったので足そうとしたら止められて…まさかそれが毒だったなんて知らなくて…ごめんなさいいいい!!」

とユストゥスは床に頭をつけて謝った。


「その女の子は何というのです?」

とザシャは聞き、


「カサンドラ・ビーアマンって言う1学年の伯爵令嬢です…」

と言った。ロジーナ嬢ではなかったな。


「確か王子にパートナーを申し込んだ子にそんな名前の子いましたね」


「そうか?名前なんか覚えてられないから知らんが…退学処分だな学院長にちくっとこう」

と俺は言った。


「ごめんなさい!ヴィルさん!いえ殿下!!」

とまだユストゥスは床に頭をつけたままだ。


「ユストゥス…お前のせいじゃない、むしろお前は利用されたんだよ…被害者だ。気にすんな」

ユストゥスは泣き出してしまい、ザシャが慰め


「とりあえずシーラも無事だし…今からでもお前達は歓迎会に行けよ、流石に俺たちは噂の的になるから行かん」


「えっ!?そうなの?」

とシーラは驚く。


「当たり前だろうが!婚約者が毒殺しかかったなんかもう広まってるだろ!!」


「ですよねー、王子も先程の続きをなさりたいのでしょう!ではごゆっくりー」

とザシャが言い、俺は


「待て!ち、違っ…」

と言うがピシャリと扉は閉まる。

シーラはもじもじし、


「そ、そうだったのヴィル…イチャイチャ続きしたかったの?」

と聞く。


「んなわけねぇだろうがっ!!」

とシーラにビシっとチョップした。


それから毒を盛った生徒は退学になり憲兵に牢に入れられた。


ロジーナ嬢は濡れ衣を着せられますますシーラを敵視するようになった。

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