第16話 一触即発新入生歓迎会1

新入生歓迎会は1学年生は全員参加だが、それより上の学年は参加自由となる。

それぞれの兄弟だったり恋人または婚約者…想い人などがいる場合上級生も参加してくる。


特にドレスは着なくて普通に制服で参加する。

ドレスなど、正装をするのは6学年の卒業パーティーだけらしい。


そして女達の闘いは1週間くらい前から始まっていて、俺は何度か女生徒に声をかけられそうになるが心の声で交わし続けた。たまにトイレから出る時に待ち伏せされてることがあり、俺はトイレの窓から脱出するのだった。1学年だからトイレからの脱出は容易いが学年が上がるとキツイな…。まぁ、俺の髪は伸びるからいいか。いざとなったら髪の毛をロープ代わりにすりゃいいんだ。赤髪の一族の血も流れてる俺は本当に完璧だな!


しかし机に手紙や呼び出しには流石に避けれない。手紙はもはや無視するかごっそりレオンに渡しておけばいい。

呼び出しはとりあえずお断りをする。


「すみません、俺のパートナーは婚約者に決まってるから…」

と何回も何回も断るが同じ奴とかが諦めず何回も申し込みにくる場合がある。

シーラは影からそれを


(グルルル!ヴィルはシーラのなのに!!)

と威嚇している。


特によく来るのがディーバー家の侯爵令嬢だ。従兄弟のフェイトのバルシュミーデ侯爵家と並ぶブッシュバウム王国の最強4大侯爵家の一つだ。


ロジーナ・ディーバー侯爵令嬢は俺と同い年の令嬢だ。ディーバー侯爵家の一族は戦闘狂と言われるくらい剣の腕が良く国で開かれる剣術大会では赤髪の一族も苦戦する相手なのだ。


そのロジーナ侯爵令嬢が最近グイグイくる。シーラのことはもちろん知っているが怯まない精神で何度も俺にパートナーを申し込みに来る。

正直その執念に参る。断るのが疲れるくらいだ。ロジーナ嬢は銀髪に紫の瞳だ。


「ヴィルフリート様!!ご機嫌よう!!もう新入生歓迎会まで後2日ですわね!!私のパートナーの席はまだ空いていまして!!上級生の男性からもしつこく誘われるのですが、私ヴィルフリート様をパートナーにしたく思いまして」


「あの…ロジーナ嬢…これで何回目か覚えておりませんが、俺ずっとお断りしてますよね?俺には婚約者のシーラ・エーレンフェストがいるので彼女と俺はパーティーでパートナーとして出席すると…ですから俺じゃない方とどうぞパートナーになっていただきたい!それではこれで」

すると彼女からどす黒い感情が現れる。


(シーラ・エーレンフェスト!!神獣に公爵令嬢の肩書き!それに王子の婚約者!私には何一つ敵わない?いいえ、そんなことはないわ!例え爵位が上でもこの学院では関係ない!!ヴィルフリート様…私は諦めませんわ!)


「よく判りましたわ。ヴィルフリート様…。政略結婚も大変ですわね!神獣様ですものね!でも、疲れてはいませんか?私がいつでも側でお慰めいたしてもよろしいのですよ?」


「は?」

何だこいつ?俺とシーラが政略結婚とか言い出した。あほめ。俺は一応シーラのことす、好きなんだからな!?政略結婚とか…。そりゃ、未来を見てるからとは言え…。

だが、この気持ちに嘘はない。態度に表すのが下手なだけで………んあっ!?


まさかっ!俺の態度が悪いのかっ!?

いつも照れてシーラにあほとかチョップとかくっつくなとかベタベタすんなとか言いまくってるのをこいつは見ていて…。


ぐあああっ!


「ヴィルどうしたの?」

そこにシーラが現れた!ぎゃー来んなあほ!こんな時に!!


「ああ、またヴィルに振られに来てるしつこいディーバー侯爵家の令嬢だ!!ヴィルはシーラの婚約者だよっ!?」

とシーラは珍しく上から目線で牽制した。


「あら、シーラ様ご機嫌よう。ヴィルフリート様はいつも貴方を邪険にしているようなのに気付いてらっしゃらないのかしら?迷惑しているのではなくて?はしたない貴方様に。それに…年上の貴方様より私の方が若くて!お似合いだと思いますの!!」

とロジーナ嬢は若さを出してきた!!シーラは


(ひ、酷い!!わ、私がおばさんだって言ってるこの子!!そりゃ2歳差だけど!いつもヴィルに鬱陶しがられて迷惑かけてたけど、最近は我慢してるのに!!そっそれに!ヴィルだってシーラのこと好きなはず!!好きな…は…ず…)

シーラは堪えきれずにポロポロと綺麗な涙を溢した。強がって見たものの、下級生にボロボロに言い返されて元々虐められていた頃と重なったのだ。シーラは悪意に弱い。


俺はギロッとロジーナ嬢を睨んだ。


「おい、俺のシーラを泣かすんじゃねぇよっ!政略結婚だと?んなわけねぇだろっ!言っとくけど!それならこいつに何の興味もねぇからな!でもシーラとは今まで何回か忘れるくらいきっ…キスしたり抱きしめたりしてっから!!シーラ以外とはそういうことは俺はしないんだよ!!判ったか!二度とシーラや俺に近づかないでくれ!!」

と俺はロジーナ嬢にはっきり言ってシーラの手を取りその場を去った。


シーラを人気のない所であやす。シーラはまだグスグス泣いていたが嬉しそうに


「ヴィルありがと…」


「お前なあ!下級生に流されんなあほめ!!」


「シーラも最初頑張ったんだけど…あの子の心とか怖くて…シーラがやっぱり悪いのかなって。ヴィルにベタベタしてて迷惑かけてたから」


「…………あのなシーラ…。だからっ!学院でベタベタするからロジーナみたいなのに目をつけられるんだよっ!まぁ、婚約者がいるのにグイグイ来るロジーナも訳わからん執念だが!お、俺は…気のない相手に触らせたりしないし…」


「ヴィル…抱きついていい?」


「お前は人の言うことを聞いてたのかっ!?あほめ!こんなとこで抱き合ってたらまた誰かに見られるだろっ!」


「う、うん…ごめん…」

とシーラは俯いた。ふぐっ!!


「ちょっ…ちょっとだけだぞ!!」

と俺はシーラを引き寄せ抱きしめる。

これ…久しぶりだな…。シーラの匂いも…。

シーラは赤くなり


「あ…ヴィルの匂い近くで嗅ぐの久しぶり…」

と髪にキスする。


「あ、あほう!!俺の匂いとか言うな!!さっきの時間男子は剣術訓練で汗だくだったんだぞ!!」

と言うとシーラはうっとりして


「ヴィルの汗好き…」

とシーラは言い出し、俺は心臓がバクバクして離れた。


「……はい、終わり。まぁ、あれだけ言ったんだからロジーナ嬢も諦めんだろ…当日は15時からだったな…面倒臭いからここで待ち合わせて会場まで行くぞ!14時30分だ。お前もたもたしてるから早めに待ち合わせだ!」


「はい!シーラおめかしする!」


「制服におめかしもクソもあるか?」


「あるよっ!髪型とか!サブリナちゃんが可愛くしてあげるって言ってくれたの」


「そうかよ…」

と素っ気なく言う。


「ダンス楽しみだね!!」

とシーラは笑い女子寮に帰る。


「…はあっ…」

とまた俺はシーラにあまり素直になれずにいたことちょっと反省した。今日はまだ頑張ったけどな。


それからとうとう歓迎会の日時が迫り俺は制服を整えて部屋の鏡を見ているとレオンが


「おや念入りだね?まぁいいよ?ヴィル…今日俺はこの部屋に帰らないから存分に婚約者殿と愛し合ってくれ!」

と言われて赤くなる!


「あほめ!!男子寮は女子禁制で逆も然りだっつの!この万年色ボケ皇子!!」


俺はレオンを無視して待ち合わせ場所に向かったのだった。

しかしそこには血相を変えたサブリナが来ていた!!シーラが毒を飲んだと聞かされた。

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