第10話 先見と入寮
それから俺は夢で久しぶりに女神界に来てザスキア様へ挨拶した。
「あら、ヴィル!ちょっと背が大きくなったわね、はい!」
と水色髪でメガネの美人が黄金の神殿でTVってのを付けてジャージってのを着てビールってのを飲んでゴロゴロ寛いでいた。そして俺には
「漫画とゲームあるで?やるか?」
と勧めた。俺はもはや女神界で見た父上の前世のものとも合わさってそれを作ったりしている。スマホも父上の想像やザスキア様に形として見せてもらったりしたしな。
漫画とゲームも以前からここに来るとよく見せてもらう。しかし、ゲームはともかく漫画と言うのは色々と描き手が違うから実現難しいよな。と思う。でもまぁ中高等部にはどうやら俺が手本として描いた漫画があり、それを真似て絵心のある連中が集まり何やら頑張ってるらしいと聞いた。
「ヴィル…後3年やなぁ?」
と意味深にニヤリと笑い俺は赤くなる。
「あのっ…何でシーラと?いや、シーラが嫌とかじゃないんです…でもあの…小さい頃からこんなの先見で見て俺どうしたらいいか判んなくなって…」
と言うとザスキア様が
「ヴィル…お前とシーラがその日結ばれなかったら…隕石を止めることが出来ないのは知ってるだろう?」
………。
「知ってます…。俺はもう一つの可能性である未来の先見もしてしまいましたから…」
それはシーラを拒んだ結果の未来だ。
最悪だった。地獄だ。シーラと結ばれなければ隕石は落ちる!なす術もなく破壊された世界だ。人々は大勢死に、母上も父上も俺も死にシーラも最後に死ぬ。
隕石を止めるには…黄金龍の力と俺の奇跡の力が合わさったモノが必要なのだ。それで隕石の力を逸らすことが出来る。運命は最初から決まっていて逆らえない。逆らうと滅ぶ。
「でも…判っていてもどうしてもシーラにあんな態度を取ってしまって俺…」
「ヴィルは子供の頃からツンデレやし、思春期やろ?大丈夫や、誰もが通る道や、はい。ちょっとヴィルは他の子よりツンデレが速くて板についてしもただけやで、はい」
「本当ですか?」
「ほんまや」
「そうですか…ザスキア様が言うならそうなんでしょうね」
と言うと
「もーっ!ヴィルはこういうとこ可愛いすぎますねっ、はい!ともかくヴィル!天体望遠鏡でも作りなさいはい!」
とザスキア様が天体望遠鏡と言う物を出した。
「何ですか?これは?」
「天体望遠鏡です、はい!星を見る道具ですね!これは一般的ですが、巨大な惑星を見る時、科学者はもっと大きな天体望遠鏡を作り観察するのです」
「星は夜空に浮かぶものですが惑星とはもしやそれを拡大したものですか?」
「そうですよ!はい!流石天才ですね!理解が早いです!月くらいなら普通のでも見れますよ!大きいのはプラネタリウムですね、はい」
とプラネタリウムの模型やら中がどんな感じなのかを見せてくれる。ザスキア様凄い!
「ヴィル…判らんこととかあったら相談にきなさい、人生相談でも、恋愛相談でもね、はい。この女神ザスキアこそお前の気持ちを判ってやれるしね…それから入学おめでとう!」
「はいっ!!ザスキア様!!ありがとうございます!!」
と俺はお礼を言うと視界は白くなり目覚める。
今日からは俺も入寮する為荷物を纏めている。
俺が父上と母上や妹のステファニーに挨拶して馬車に乗って学院に着くと既に金髪金目のここ、2年で大きく育った胸を揺らしながらシーラが満面の笑みで迎えていた。
俺は12歳でシーラは14歳。誕生日が来たら13歳と15歳だ。
背が同じになったとは言え、抱きつかれると以前より大きくなった弾力ある胸が俺の胸に当たるからなるべく接触はせず最近では抱きつかれる前にシーラの頭を押さえて静止する。
シーラはジタバタするし、キスしようとしてくるので俺はそれも静止している。俺だってなぁ!男だし思春期だし昔よりだいぶ我慢して苦しい。だからもう必死だ。
テオ叔父さんとの手合わせで頑張ってるし。シーラは凹んだが一応男子寮まで案内はしてくれた。ザシャも一緒に行く。
女子寮がなにやら騒がしい。
(見て!あれがヴィルフリート王子よ!!)
(可愛い顔してるじゃない!食べ頃ね)
(シーラ様の婚約者だけど私を側室にしてくれないかしら?)
(アプローチって言うかヴィル様と既成事実作ったら側妃の座は私のものねぐへへ)
と肉食女子の心の声が聞こえる。それにシーラは怒り
(ヴィルやっぱり既に狙われてる!シーラが守らなきゃ!ヴィルと既成事実作るのはシーラなんだから!!グルルル!!)
とこっちも肉食だったわ!!やべえ。
そこに女子寮の監督生のリーゼロッテ・フィンケと言う人が出てきた。物腰は柔らかい優しそうな今年の6学年の寮長の監督生だ。
「初めまして、ヴィルフリート殿下。ご入学とご入寮おめでとうございますわ!」
「どうも。シーラがお世話になっております」
「ええ、この2年、シーラさんは御守りのロザリオのおかげで色々な邪魔者を排除してましたから皆シーラさんを怖がって、近づく人など私を含めてルームメイトのサブリナさんとか僅かですわ。休日はいつも殿下の所へ行ってたのでしょう?羨ましいですわ…私には婚約者はいないので」
「へー、フィンケ監督生はいないのですか?もう後一年で卒業ですが、婚活はしないで就職の方に力を入れてるとか?」
「ええ、ま、まぁ!そうですわ!私勉強が好きでして!!商会の娘ですから!新商品があれば殿下是非よろしくお願いします!それと話は変わりますがシーラさん?」
「何ですか?寮長」
「いくら婚約者とは言え、男子寮に侵入だけは絶対に禁止ですからね?夜這いなど持っての他です、バレたら厳しい厳罰がくだります。例え公爵令嬢で神獣様でも!ですから男子寮と女子寮では絶対にイチャイチャはだめですよ?」
と念押した。
おい、それ他ではいいのかと誤解されるし!
(他でイチャイチャしてね!)
と寮長の心の声が漏れる。
(他ならいいんだ!!)
とシーラが反応する。あほめっ!するかっ!!
するとそこにぬっとでかい6学年の男が現れた。かなり顔が怖い。
「あら、フェルディナント!相変わらず怖い顔ね!新入生の殿下が怯えているわよ!?」
フィンケ監督生の口調が変わった!そして
(ああ、フェルディナント!今日も会えたわ!よかった!元気そうね!逞しくて素敵!)
との声!ええええー!態度と心の声全然違う!!
「殿下初めまして…俺はフェルディナント・レームだ。6学年の男子寮長で監督生だ。あのバカフィンケと話すことなどない!行きましょう!」
(ああっ…リーゼロッテ!今日も麗しいな!この手が許されるなら抱きしめたい!陽だまりのような君を!)
とこっちも態度と心の中全然違うじゃねーか!!結局両想いのくせに何だこの人達。
「あら、フェルディナント!無視かしら?まぁそれでもいいけどね!うちの寮に男子が入ったら容赦しないわよ!?」
「ふっ!そんな愚かな男子生徒はいない!女子の方が最近はよだれ垂らして男子を見てるぞ!?少しは弁えろ!!」
と火花を散らしている。心の中は逆だった。
(ああっ!フェルディナント!できることなら貴方の部屋に忍び込みたいわ!でも…ルームメイトがいるわね)
(リーゼロッテ…君の可愛い部屋を見てみたい!そして一緒に語り合いたい!今年こそ君に愛を告げたいのに!!)
「このっ!フェルディナントのくせに!次のテストも私が1位だわ!」
「黙れ!フィンケ!数回1位取ったくらいで!お前は運動はからきし!俺は運動も1位だ!」
「この体力バカ!私はか弱いだけよっ!」
「何がか弱い女だ!」
と睨み合うが心の中は甘々な2人に呆れているとシーラが俺をよだれ垂らして見ている。
俺はチョップして
「忍び込む計画立てんなよ!?」
と怒った。
*
俺はザシャとは別の部屋になった。
部屋にいたのは凄い軽薄そうなピンクの髪で半目の瞳は菫色をした男、レオン・イヌマール・イーヴォ・トール・ディットリヒと言うやたら長い名前のヘルマ帝国の第三皇子だった。
しかも性格も軽薄だ。
(んへー、こいつが奇跡の王子か…。確か婚約者のシーラって先輩可愛いよな?お手つきしてえな。あ、一年の女全員抱いてからでもいいかな)
というとんでもない女ったらしと初日で気付いてこいつとはあまり話さないようにしようと決めた。しかし、こいつはエロトークばかりしてくる。コンチャーン様と友達になれそうなくらい詳しい。
俺は部屋変えてくれえええとかしか思えなくてザシャに言うと爆笑された。
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