第9話 初等部に忍び込むシーラ

シーラが中高等部に行き、俺はちょっと安堵した。なんつーの?開放感?四六時中くっつかれてたような記憶しかないしな。


「これが平和…か…」

でも週末には帰ってくるしなあいつ。

おっといかん、書類にサインしとかないとな。

俺は今生徒会室で1人仕事をしていた。

今は春休み中で誰もいない。

俺は昼から学院の生徒会室に来て1人で作業していた。来年入ってくる初等部の新入生に渡すクラブ活動の簡単な資料だ。最初は来年から副会長になるザシャもいたけど、久々に


「王子ごめんなさい、今日は私両親と温泉に行く予定があってもうちょっとしたら帰ります。迎えは別の人寄越しますから終わったらスマホに連絡入れといてくださいね」

とザシャは帰った。

書類も一通り纏め上げることができた。


たまには静かでいい。誰もいないことだし。

ちょっと羽伸ばしてもいいか。ここのところ疲れが溜まっていたしな。と、俺はまだ10歳…もうちょっとしたら11だけどそんなおっさん思考になりとりあえず生徒会室のソファーにゴロリと横になって目を閉じる。



しばらくしてどれくらい経ったのか、真っ暗になってて慌てて起きる!


「ヤバっ!何時!?帰らなきゃ!!」

俺は暗闇の中前に踏み出してグニっと何か踏んだ!ぎゃっ!と思ってよろけたが何とか転ばずすんだ。


そして部屋の明かりを付けると…昨日寮へ行ったシーラが中高等部の制服を着て床で寝ていた!!俺の寝ていたソファーのすぐ下だ!!

仮にもこいつは公爵令嬢だ!神獣だ!

俺はシーラを揺さぶった。


「シーラ!!お前こんなとこで何してる!!」

シーラは薄く目を開けて起き上がり目を擦り俺を見ると


「ヴィル!!会いたかった!!」

と運命の恋人の如くまるで10年ぶりに再会したかのように抱きついた。


「おい、シーラ…昨日だよ!昨日お前寮に入ったよな??何故いる?初等部に!」


「ヴィルの匂いが微かに風に乗って届いたからシーラ急いで侵入したのっ!」

侵入って…あほだ!!


「俺は仕事してただけだ!もう帰る!離れろ!」


「折角2人きりだよ?」


(わーい!ヴィルと2人きり!侵入して良かった!!)

俺はビシッとチョップした。


「侵入すんな!警備員に突き出すぞ!!」


「ヴィル連れない…」


「さっさと寮に帰れ!あほ!お前も寮抜け出して寮長に叱られるぞ!?何やってんだ!」

するとシーラはしゅんとした。


(ヴィルに会えて嬉しいのにヴィルは嬉しくないのかな?やっぱりシーラのこと嫌いなのかな?シーラ…前まで他の人にも虐められてたし…シーラやっぱり可愛くないんだ)


グスッ…

と泣き出したからため息がでる。


「シーラ…俺に会いに来るのはいいけど、週末って言っただろ?それ以外は寮で生活しろ!いいな!?」


「判った…ごめんねヴィル迷惑かけて。寂しくて…」


「数日したら学院も始まるし、ルームメイトと仲良くしろよ」

と言うとシーラはルームメイトが良い子で庶民だって言った。本当に良い子そうなのはシーラの心の中の声が嬉しがっていたし大丈夫そうだな。


「んじゃ帰るか、シーラも帰れよ」

と俺はスマホを取り出して馬車を呼んでもらう。

シーラは後ろからまた抱きつき後頭部ら辺に柔らかいのがちょっと当たる!


「シーラ…」


「寂しいよヴィル…もうすぐ学院始まって1週間も会えない…」


「週末なんてすぐだろ…と何回も言ってんだろあほ!」


「ヴィル…シーラのこと鬱陶しい?」

悲しそうに聞かれて返答に困る。


「あのな、普通にしろよ…鬱陶しいなら別に婚約なんてしてない…し」


「ほんと??」


「何だよ…お前は全く…」

するとシーラは俺をグルリと反転させる。

神獣の力強ええ!!


「ヴィル…す、好きっ…」


「……っ!」

いきなり好きだと声に出すから恥ずかしくなる!心の声ならいつも聞いてるのに。

それからシーラは俺にまた軽くキスする。

流石の俺も抵抗出来ず受け止めてしまい赤くなる。もう何回シーラとキスしたのか忘れた。


「シーラ…そろそろ帰れよ…」


「ヴィルが好きって言ったら帰る…」

とうるうるした瞳で見つめられる。

くっそ!そんなこと言えるわけあるかっ!でも言わないと帰らないのか…。くっ!


「…好きだから帰れ!帰らないと嫌いになる!」

とようやく言うとシーラは輝くような笑顔になり


「うん!!ヴィル大好きっ!!」

と校舎を出るまで手を繋ぎ…と言うかもはや無理矢理繋がされ


「それじゃあヴィルまたね!!週末まで!!」

と手を振り凄い速さで寮まで走って行った。流石神獣!体力だけはバケモノだ。


ちょっと脱力しつつも俺は馬車に乗り込んだ。

しかし、シーラは週末以外も俺が1人で生徒会室に居残ってると嗅ぎつけて侵入することがそれから何回も何回もあって俺が初等部を卒業する頃までそれは続いていた。シーラのネックレスの反応は俺の卒業までに数百回くらいあったが、シーラは


「ネックレスからなんかドス黒いの出たり、痺れるやつ出たりしたよ?」

と言うから成功だろう。

痺れたり呪いがかかったりしたんだろうな。お気の毒様。と俺は心の中でちょっとほくそ笑んだ。

俺はここ2年で身長が少し伸びて大体シーラと同じくらいになりもう胸にダイブすることもなくやっとほっとしたがそれと同時に後3年かとシーラを見てちょっと赤くなったり複雑になる。


子供の頃から見てた先見…もう察して欲しいがシーラと愛し合うのに後3年が迫っていた。はあっ。

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