第36話
「そういえば、もう1年と3年はレンアイ放送が終わってんだよな?」
「うん、昨日と一昨日で。」
「じゃあそっちも見てみようか。何かヒントがあるかもしれないしな。」
そう言って、榊原はそこにあった3年生のファイルを手に取った。
その流れで、私は1年生のファイルを見ることにした。
ファイルを開くと、全員分が収録されていた2年生のファイルとは違い、情報が書かれた紙は1枚しか入っていなかった。
D組17番 白石ゆり
好きな人:なし
情報はこれと住所、電話番号だけだった。
本人から聞いていた通り、確かにゆりちゃんには好きな人がいないようだ。
ゆりちゃん以外全員死んだということは、生存者以外の情報は処分されたということなのだろう。
ゆりちゃん以外の情報を探すために近くのごみ箱を見ても、何も見つからない。
流石に個人情報の類はシュレッダーにかけて処分しているのか。
そこまでの意識がありながら、何故このファイルがむき出しで置かれているのだろうか。
ちぐはぐな感じに、少しもやっとした。
まあ、1年生の情報を見たところで、犯人が2年生かもしれないという予測が立っている以上は何も収穫がなさそうだ。
それは3年生についても同じことだろう。
少ない生存者の情報を見たところで何の意味もない。
こんなことをしているよりも、
もっと有益なことがあるはずだ。
時間の無駄だ。
早く他の手掛かりを探そう。
そう思って榊原に声をかけた。
「榊原、これで新しい情報が見つかるとは思えないんだけど。他探さない?」
「……ん、いや。あるかも。」
そう言っている榊原の顔は、
何かを深く考え込んでいる顔だった。
榊原はじっと押し黙って
3年生のファイルを見つめている。
何か手掛かりが見つかったのだろうか。
「何かあったの?」
「ちょっとこれ、見てくれないか。」
榊原は、私の方に身体を傾けて
ファイルの中身を見せてくれた。
「3年生の情報は2人分しかないから、
多分この2人が生存者ってことだろ?」
「うん、1年生はそうだったよ。ゆりちゃん以外みんな死んだって言ってたから。」
「でもこれ、おかしくないか?」
そう言って榊原は
私にファイルを手渡した。
A組3番
好きな人:高松玲奈
→片想い
A組19番
好きな人:なし
そこにあったのは、
たった二人だけの情報だった。
高松玲奈に片想いをする安藤太一と、
好きな人がいない高松玲奈……
確かに、変だ。
「これ、なんで片想いの安藤太一が生き残ってるの?」
はっきりと「片想い」という文字がある。
見間違いなんかじゃないはずだ。
「しかも高松玲奈が生きてるってことは、好きな人を殺せば助かるっていうルールも安藤太一には適応されてないんだよ。」
榊原が眉間にしわを寄せてそう言った。
「これ、先生たちの捨て忘れとかじゃないんだよね?本当に安藤太一は生きてるの?」
「あぁ、多分。」
「じゃあ、まさか……」
ルールが適応されずに身の安全を約束されるだなんて、おかしい。
もしこれが間違いではなく
本当なのだとしたら。
「安藤太一が主催者……?」
「少なくとも、レンアイ放送に関わっていることだけは間違いないな。」
やっと一つ、手掛かりが見つかった。
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