第4話
「これマジなの?」
「知らない……
たまたま見つけただけだから……」
瑠香の威圧的な態度に少し怯んでそう言うと、瑠香は教室を見渡してから大きな声で叫んだ。
「みんな見てこれ!マジでヤバい!」
私のスマホを、我が物顔で天井に掲げる。
影響力のある瑠香のもとには、
すぐさま人が集まってきた。
「レンアイ放送で人が死ぬんだって!
ヤバくね!?」
恐怖に支配されている私とは反対に、
瑠香は目をらんらんと輝かせている。
まるで、今のこの状況を楽しんでいるみたいだった。
「え~、そんなのありえんの?」
「わかんないけど、とりま怖くね?」
「え、まじ?なんで死ぬの?」
「なんか全部放送の指示らしいよ。」
「さっきから全然放送流れないじゃん。」
「それな?マジどうしたって感じ。」
私を抜いて、勝手に話が進んでいく。
放送の指示で、なんてところはまだ私も読んでいないのに、瑠香はとっくに読んでしまっているようだった。
「面倒な子に持ってかれたね。」
美咲は私にこっそりと耳打ちした。
私はそれに小さく頷く。
私のスマホはもう返ってこないんじゃないだろうか。
そう思うほどに、瑠香と私のスマホは遠い所へ行ってしまっていた。
「あ、待って。
そのサイトだけネット繋がるよ!」
教室の反対側で、そんな声が聞こえる。
瑠香は、それに「マジ!?」とだけ言って
私にスマホを突き返してきた。
バン、と音が鳴るほど強く机に置かれたものだから、画面が割れたんじゃないかとひやひやする。
幸い、机の木の粉が少しついていただけだった。
返ってきたスマホを見て、
私は他のサイトを開こうとしてみる。
するとどのサイトも、
「ネットワークに接続されていません」
という表示が出るだけだった。
検索結果とこのサイトにのみアクセスできるというのは、どうやら本当のようだった。
でも、どうしてこんなネット環境に……?
まるで私たちが外部にアクセスするのを拒んでいるみたいだ。
何か、外部に伝わるとまずいことが起きる?
それはつまり、本当にレンアイ放送で大量の死者が出るということなんじゃないだろうか。
背筋がゾッとする。
私が感じていた嫌な予感は、
これだったのか。
すると、ようやく放送が流れ始めた。
《レンアイ放送のルールを説明します。》
教室が、静寂に包まれる。
どうやら掲示板に書いてあった、
放送の指示とやらが始まるらしい。
私はスピーカーの方を見た。
《これから、クラスと出席番号順に、皆さんの好きな人を発表させていただきます。》
《そして、両想いでなければ即死亡。失恋者を殺します。》
……え?
思わず、息を呑んだ。
「両想いでなければ、即死亡。」
私の頭の中を、
その言葉だけが駆け巡っていく。
クラスの誰も口を開かない。
さっきまであんなに騒がしかった瑠香でさえ、スピーカーを見つめてじっと押し黙っている。
私は放送の内容を頭の中で何度も反芻した。
好きな人が発表されて、
もしその人と両想いじゃなければ。
殺されてしまう。
今この放送に告げられた「殺す」という言葉が、私の心に重くのしかかってきた。
もしこれが本当なら……
私は確実に、殺されてしまうから。
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