第3話

「れんあいほうそう?」


「なにそれ?」


「恋愛お悩み相談室的なアレ?」


「え、なんかキモくない?」




一気に教室がざわつき始める。



耳慣れない「れんあいほうそう」という単語に、この教室中の誰もが困惑している様子だった。




それは私も同じだ。



さっきから感じていたモヤモヤが、

より一層色を濃くした気がする。




何もかもが謎に包まれた「れんあいほうそう」というものに恐怖を感じて、私は急いでネット検索をかけた。



何も考えず、一心不乱にパスコードを入力し、検索画面を開いて「れんあいほうそう」とひらがなで打ち込む。



検索結果には、ラブコメアニメの動画や恋愛リアリティーショーのサイトばかりが並んでいた。



それでも諦めず、

「恋愛放送」「れんあい放送」「恋愛ほうそう」……

など色んな表記で試してみて、何度目かで「レンアイ放送」と打ち込んだ、その時。



やっと、一つだけチャット掲示板サイトがヒットした。




【都市伝説】レンアイ放送って知ってる?




というタイトルの、10コメントほどしかない最近建てられたばかりのスレッドだった。




「なんか見つかった?」



「うん、掲示板が。」



「へえ、都市伝説なんだ。」




美咲はあまり関心を示していないようだったので、私は勝手にそのサイトを開いた。




画面いっぱいに、

真っ黒な背景が浮かび上がる。



オカルト、とタグ付けされたそのスレッドは、タイトル画面からおどろおどろしい雰囲気を放っていた。





0001. 割と有名だと思ってたんだけど、レンアイ放送って話みんな知らないの?


0002. >>1 なんだそれ?


0003. >>1 聞いたことないわ、恋愛系?


0004. なんか数年前にある学校で行われたゲームなんだけど、大量に死亡者が出る恋愛ゲームらしい。





「大量の死亡者」



その文字を見て、私は思わず

スクロールする手を止めた。




それって、つまり……



レンアイ放送は、人が死ぬゲーム……?




その後を読み進めることができないまま、

私の手は震え始めた。





「ねえ、美咲、これ……」





恐る恐る美咲に画面を見せると、


「なにそれ、たかが掲示板でしょ?」


と優しく制される。




けれど、その手は心なしか

震えているような気がした。



美咲も、怖いんだ。



怖くないふりをして私を守ってくれているようで、心が痛んだ。




レンアイ放送が始まると放送されてから、

それに続く言葉はまだ放送されていない。



せっかくなら、と私がそのページを読み進めようとしていると、横から伸びてきた手が私のスマホを奪った。





「瑞季ちゃん、なんでスマホ使えんの?

ウチ使えないんだけど。」




私の少し前の席の、矢崎瑠香やざきるかだった。




「え、なんでって、

普通に使えるけど……」



「でも見てよ、

瑞季ちゃんのも圏外じゃん。」




瑠香が差し出す画面を見ると、

確かに私のスマホは圏外の文字を

表示していた。




「ウチら全員使えないのに瑞季ちゃんだけ普通に操作してるからさ、気になって。」



「ごめん、何も考えずに調べてたから、

私もよく分からなくて……」




私がそう言うと、

瑠香は私のスマホをもう一度覗き込んだ。



普段関わることのない、

クラスでも目立つ方の子。



言うなればカースト上位の瑠香に、

私は少しドギマギしていた。




「……え、なにこれ、ヤバイじゃん。」




画面から顔を上げた瑠香は、

私の目を見てそう言った。


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