第4話 はじめての仲間

 俺が今見ているのは、なんだろう?


 どこかで見たことがある気がする。


 白黒の世界には、倒れた男の子と女の子が写っている。


 そして、子供たちの正面に立つのは一人の男。


 男が女の子を押さえて、手を上げる。


 容赦なく振り下ろされるその腕は、小さな女の子には耐えられるはずがない。


 腫れた箇所が赤くなり、泣いている。


 よく見ると、腫れた箇所は一箇所だけでなく、所々にある。


 腫れだけじゃない、火傷、切り傷、あざ、様々な傷跡が痛々しく写っている。


 それは、女の子だけじゃない、男も子も同様に傷跡が目立つ。


 なんか嫌な感じがする。

 そう思った。

 そう思ったら続きは見られなくなっていた。


 何かがブルブル震える音で、僕を眠りから引き起こす。


 『あれ……寝ちゃってたのか、俺』


 目の前ではスマホがブルブルと音を出し、電話画面になっていた。


 通話に出るボタンを押し、耳にスマホを当てる。


 『おはようユウくん! ぐっすり寝ていたようだね〜。次のゲームはもう始まるよ!』


 この声、ユウギだ。

 そう分かった途端、怒りが込み上げてくる。


 『ユウギ! お前らの目的はなんだ! 殺し合いなんてさせて何がしたいんだ!』


 『やだなぁ。そんな怒らないでよ。僕たちの目的なんて単純なものさ、【破壊者】を求めているのさ』


 『破壊者? なんなんだそれは! 俺にそんなもの求めたったて、持ってないぞ!』


 『今はまだ、ね? 僕は君が資格を手にし、いずれ破壊者になることを信じているよ! 僕の子供の一人だからね!』


 破壊者? 資格?

 ユウギの言っていることがわからない。


 『とりあえずは次のゲームさ! 第2ゲームは3対3のアイテム争奪戦さ! しっかり生き残ってくれよ! ユウくん!』


 ユウギの言うことはわからなかったが、もう時間がなかったらしい。

 話が終わった途端に電話は切れ、画面が切り替わった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 第2ゲーム

 【アイテム争奪戦3vs3】

 チーム赤

 スズキ ユウ

 サオトメ サスケ

 タカハシ ユイ


 チーム青

 キジマ ケンジ

 アオキ トラ

 モチヅチ ダイキ


 【ルール】

 ・エリアに配置されたアイテムを手に入れ、自分チームの拠点まで持って帰ったチームが勝利とする。


 ・アイテムの位置はスマホのマップで確認可能

 ・アイテムの状態はどうであろうと構わない。

 ・敗北したチームは全員処分とする。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 アイテム争奪戦? 何かの道具を奪い合うのか?


 ゲームは分かったが、気になることが2つある。


 一つ目は3対3ということだ。

 多数対多数という対戦形式ではどんな事でも仲間との連携がカギになる。


 だから、俺と同じチームメイトである、【コウサカ サスケ】、【タカハシ ユイ】

がどんな奴かという問題。


だが、それよりも気になることが2つ目。


 それは【ルール】項目の敗北チームの処分の事だ。


 この狂ったゲームを開催しているようなユウギのことだ。ただ単に処分と書かれているが、殺されると同様の処分を受けると考えた方がいいだろう。


 『ゲーム強制参加の癖に、負けたらすぐポイかよ……。ふざけやがって!』


 やはりこのゲームを主催している奴らはおかしい。そう思わざるを得なかった。


 ガチャ。


 そして、ゲームがもうすぐ始まるのを告げる様に、トイレに繋がるドアではない、もう一つのドアから音がした。


 部屋を調べた時、唯一ロックがかかっていたドアをよく見てみる。


 音の鳴る前までは、ドアノブの上の鍵マークが赤色だったが、今は緑色に光っている。


 ドアノブをひねってみる。


 『開く……』


 ここで行かないという選択肢を取っても、殺されるのだろう。逃げる選択肢はできない。


 そう思わせるように、このゲームの主催者は、第一ゲームで死の恐怖を植え付けてた。


 『くそっ! 絶対生き残ってやる!』


 そう思いドアを思い切り開く。


 ドアの向こうはまるで京都の街並みを思い浮かべさせられるような、瓦礫屋根の木造住宅地が広がっていた。


 そんな美しい和風の町並みが広がっているとは思っておらず、動揺してしまう。


 『なんだここ……京都か?』


 この場所に連れて来られる前も行ったことがない京都。の様な景色に、見惚れて歩みを進める。


 少し歩いてから、ドアを閉め忘れたことに気がつき、後ろを振り返る。


 だがそこにはもう、ドアどころかでできた部屋の様なものも無く、横に広い通路が広がっているだけだった。


 『消えた!? さっき俺がでできた部屋は?どこに行ったんだ!?』


 突如先ほどまであったはずのものが消え、驚きを隠せないでいると。


 『おいっ! 貴様、何や奴だ?』


 急に背後から話しかけられ、女の子の様な声を出し、飛び跳ねてしまう。


 着地をしてすぐに後ろを振り返る。


 俺と同じ170cmくらいの身長。長く片目を隠した青色の髪の毛はピンピンとしていて、髪の毛と同じ色の目をしている。そして、まるで忍者の装備の様に鼻から口を隠すマスク。

 だが、服装はジャージという変な格好をしている奴がいた。


 女の子声を出して驚いてしまい、恥ずかしいことを隠す様に咳をして、答える。


 『俺はスズキユウ。お前は誰なんだ?』


 『俺はサスケ、忍者の末裔まつえいだ。』


 『は?』


 何言ってんだコイツ。


 『ふっ! 凡人にはわからないだろうが、俺は忍者。足を引っ張らない様に頼むぞ! ユウ! はっはっは!』


 『何言ってんだよ!? ってかサスケってお前仲間かよ!』


 こんな連携取れなそうで、馬鹿そうな奴と仲間なんてついてない、そう思った。


 『はっはっは! 光栄に思うがいい! 忍者である俺が仲間なんて、お前はついてるな!』


 『お前どんだけ自分好きなんだよ!』


 そんな初めて出来た仲間に世話を焼いていると。


 『ねぇ。いつまで馬鹿騒ぎしてるの?』


 俺たちのすぐ横から、まだ声変わりがしていないのだろうか?

 高い声で横槍が入る。


 サスケと一緒に声のなる方を見る。


 俺とサスケより背が低い。俺と同じ目の色、黒髪をポニーテールにして結んであり、

Tシャツとズボンという女子らしくはないし少しボロい服を着た女の子が立っていた。


 女の子と俺の目が合う。


 その瞬間。女の子は少し驚いた様な顔をした気がした。


 どうしたんだろう? そう思ったが、すぐに顔を晒されてしまった。


 サスケが俺と目を合わせた女の子を見て、

『知り合いか?』と聞いてくる。


 『いや、そんなことないと思うけど…』


 『では何奴だ。貴様、名を言え。』


 いちいち忍者っぽくカッコつけたポージングをするサスケ。


 女の子はあきれた様に返事をする。


 『私はタカハシユイよ。さっきの話を聞いてたけれど、あなた達の仲間よ。いつ敵が来るのかわからないのにこんな目立った場所で騒いで……あんたら馬鹿なの?』


 俺は確かに、危険なことをしてたと思い、謝ろうとする。


 『馬鹿ではない、忍者だ』


 俺が謝るよりも早く、サスケが馬鹿な発言をする。


 ((あっコイツ本当にダメな奴だ))


 俺とユイは目を合わせ、お互いに同じことを思ってると感じた。


 『まあいいわ。とにかくもうゲームは始まってるの、まずは人目のない場所で作戦を立てましょ。』


 『もう始まってるのか……そうだな、お前らとも会うのは初めてだし、作戦を立てよう。

もう一人の仲間はまともに話せるやつでよかったよ。』


 年下の女の子だと思い、笑顔で返した。

 だが、何故か嫌な顔をされてしまった様な気がした。なんか嫌われる様なことしたかな?そう思いながらもユイの後に続く様に移動を開始する。


 俺はいまだにポージングをとっているサスケも無理やり連れて行った。


 和風建築が立ち並ぶ内の1つに入る。

 室内までもが和風に作られていて、床はもちろん畳でできており、第一ゲームのステージでも床は畳だったことを思い出す。


 そのほかの作りも和風で、机や座布団など、家具も完備されている。


 靴を脱いで畳に上がり、皆が座布団を下に引き、ちゃぶ台を囲む。


 作戦を立てる上で俺たちはまず、ステータスを確認し合った。


 このゲームのステージに来る時、スマホを持ったまま来ていたが、それはみんなも同様で、スマホに映る自分のステータスを見せ合った。


【プレイヤー名】サオトメ サスケ


【ステータス】

 Lv2

 状態:なし (解除済み)

 HP50 MP0 攻撃力0 防御力0

 能力攻撃力2 能力防御力 素早さ248


【固有能力】分身ぶんしんLv1

 消費HP自分の半分。

 自分のHPを半分にする代わりに自分の分身を1人作り出せる。分身のステータスは自分のステータスの半分。

【スキル】幻影ステルスLv2

 消費MP0。

 Lv1 透明になれる。最大1分 使用後は、スキル使用時間と同じ時間使用不能になる。

 Lv2 足音や呼吸音などの自分から出る音を消せる。



【プレイヤー名】タカハシ ユイ


【ステータス】

 Lv2

 状態:呪い

 HP100 MP100 攻撃力30 防御力30

 能力攻撃力30 能力防御力30 素早さ30


【固有能力】動物変身Lv1

 消費MP50。

 動物になれる。変身した動物の特性を得ることができる。

 Lv1ねこ

【スキル】思考Lv1

 消費MP0。

 頭の回転が早くなる。


 やはり、こんなに人によってステータスの振り方が違ったり、能力が違うのは毎回驚かされる。


 さっきから気になっていたことを口にする。


 『サスケお前、ステータス偏らせすぎじゃね?』


 『忍は正面戦闘など鼻から選択肢にないんだよ。背後を取って速攻一撃。この戦法を得意とするからな』


 さっきまではただ馬鹿な奴だと思っていたが、意外と考えているのかもしれない。

 だが、忍者っぽく決めているつもりのポージングはなんとも言えなく、ダサい。


 それに、サスケのステータスの振り方、HPやMPを下げて下げたポイント分を他に振るということができたのか。

 これは俺の【固有能力】にも生かせる情報だから知れてよかった。


 パンっ!


 ステータスを見せ合った後ら会話に混ざらずほんの少し顎に手を当て考えていたユイが手を叩く。


 そして、ユイが俺たちをまとめるため、話を始める。


 『順々に話して行くからよく聞いていてね。まずはこのゲームの勝利条件から……』


 『おい、なんでお前がリーダーみたいに進めてるんだ?』


 サスケは自分がやりたいと言い張る。


 『だってあんたばかじゃん』


 返しはそれだけで十分だった。


 こんなストレートに言われたのが思ったより心に刺さった様だ。ツンツンしていた髪の毛がしんなりとし、部屋の隅で体育座りになり、ションボリしている。


 俺も【スキル】思考を持っているユイが俺たちをまとめ、指揮官リーダーとなるほうがいいと思っていた。


 そしてユイはスマホを操作し、地図を開く。


 『このゲームは"アイテム"を自分チームの拠点に持ち帰ることが勝利条件よ。アイテムはルールに書いてあった様に、スマホを操作して見れる地図マップに赤い点で示されているところにあると思うわ』


 俺とサスケも同じようにスマホを操作して地図を確認する。地図にはアイテムがあると思われる赤い点以外にも、たくさんの四角形が縦や横に並んでおり、碁盤の目のようになっていたり、黄色の点3つがAと書かれた四角形の中に表示されていた。


 『ユイ、こっちの黄色の点はなんだ?』


 俺はユイに尋ねる。

 ユイは馬鹿なの?という視線を向けながらも言葉を返してくれる。


 『私たちの位置ね。四角形は家だと思う。四角形が縦や横に並んでいるから、外の街並みとも一致するし』


 『なるほど…』


 『今私たちがいるのが地図の地図の中で1番左下の家、この家にAと書いてあるからここが私たちAチームの拠点だと思う。だからここまでアイテムを持ってくれば私たちの勝ちよ。逆に相手の拠点は右上ね』


 地図を見るとBと書かれた四角形は右上にあった。


 俺はユイの話に了解の意味を示すためうなずく。

 

 そうしてユイと俺は作戦の打ち合わせを少しの間話し合っていた。


 『って……サスケ聞いてる?』


 そうだ、さっきまではションボリはしていたが、話は聞いていた様で、髪の毛のピンピン具合からしてだんだん機嫌が治ってきたサスケが話にも入らずスマホを見ている。


 『なあ。思ってたんだが、この赤い点、動いてないか?』


 『『え?』』


 すぐに俺とユイもスマホを確認する。


 確かに先ほど見たときはマップ中央にあった赤い点がこちらに向かって動いている。


 『なんでだ!? もしかしてもうアイテム取られたのか!』


 『それじゃあおかしいわ! 相手チームがアイテムを入手したなら、拠点に持ち帰るために私たちとは反対の右上に行くはずだわ!』


 だんだんと近づいてくる赤い点に俺たちは急いで、家から出る。


 もうすぐそこまで来ている赤い点の正体が俺たちに姿を表す。


 それは小さな女の子。

 ユイよりも小さく、傷だらけの少女。

 金色の髪は血がついていて、本来白のワンピースは血で左腕辺りが染まっている。

 何かから逃げるようにこちらに走る少女は俺たちの下にたどり着く。


 『助けて……くだ……さい……』


 そう言って少女は倒れそうになる。


 『おい! 大丈夫か!』


 咄嗟に体を支え、声をかけた。


 左腕の傷は深く、思いきりえぐられた様な痛々しい傷跡から未だ血が滲み出ている。


 声をかけてもピクリとも動かなくなってしまった少女を手に支え、前方を見る。


 そこには、少女を傷つけたであろう血のついたノコギリの様なものを持つ黄色髪の男と、その横には手下の様に赤髪と青髪の2人の男が立っていた。


 『先に見つけたのは俺たちだぜ〜?早くその道具アイテム返してくれよぉ〜?』


 リーダーであろうノコギリ持ちがムカつく声で言う。


 『そいつはキジマさんが見つけたアイテムだぞ! 殺されたくなかったら早くそれこっちによこせ!』


 『そうだそうだ!』


 続けて手下であろう2人が唾を飛ばしながら叫ぶ。


 『ユイ、サスケ、ごめん。さっきまでのバレずにこっそりアイテムを持ってくる作戦は無しだ。だってそうだろ? この子はアイテムでも道具でもねぇ! 人だろうが!』


 まだ手の中にある小さな命が生きていることを俺は感じ。傷跡をワンピースで止血する。


 ルールにあったアイテムの状態はどうでもいいというのはこういうことか。本当にこのゲームもプレイヤーも狂った奴ばかりかよ。


 この時の俺の心は怒りで満ちていた。


 『ああ、同感だ。ユウ』

 『ええ、そうね。こんな奴ら生かす価値はないわ』


 サスケもユイも俺に賛同してくれる。


 女の子の止血を終え、ユイに預ける。


 ユイに預けたのは【固有能力】的にも戦闘にあまりむいている物ではないのもあるが、どうしてか、そうしたほうがいいと思ったからというのもあった。


 『サスケ、俺たちで潰すぞ! 忍の力見せてみろよな!』


 『ああ、忍の俺もコイツらは許せないと言っている』

 

 『2人とも、私はこの子を庇いながらで思いっきり戦闘はできない。1対1の戦闘以上の負担が…』


 『『わかってる』』


 ユイはその子を守っていてくれ。

 それ以外はやらなくていいと思わせる様に

俺とサスケが頷きながら言葉を返し、戦闘態勢を取る。


 『やっぱりかっこいいじゃん…』

 ユイは小さく呟き、頬を少し赤く染める。


 『俺が手下の2人を見るからユウはボスを相手しな』


 『お前2人も大丈夫か?』


 『当たり前だ。忍者……だからな!』


 サスケは"忍者だからな"が決め台詞なのか、ポージングを取った。

 だが、それは最初に合った時の様なふざけたポーズなんかじゃなく、主人を守る忍の様で、カッコよかった。


 『話終わった〜? 返してくれない様だから君たち、殺すね〜?』


 キジマが醜悪な笑みを浮かべた。


 そして、ボスであろうキジマの言葉を開始に、キジマと2人がこちらに走り出す。


 それ同時に俺とサスケも走り出し、3対2の戦闘が始まった。


 




 



 

 


 


 

 



 




 

 

 


 


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