第3話 ゲームはまだ序盤。
ここは、壁一面に多数のモニターが埋め込まれている、大きな部屋。
部屋には3つの人影があり、多数のモニターのうち、一つに映像が映っている。
3人が共に見ていたのは畳が敷き詰められた体育館での戦い。
『やった! やったよ!
僕の選んだ子が勝ったよ! 見たでしょ?
ミレ!』
畳の上に倒れる少年を見て、喜びを報告するのはオレンジ色の髪に幼い体型のユウギだ。
その嬉しそうな発言に、ミレと呼ばれた女性は口を開く。
『あんたの子の中では初めてね。
一回戦を突破した子は』
その話を聞いており、横槍を入れる様に1人の男性が声を上げる。
『一回戦などただの確認にすぎんわ。
これからじゃよ。
その者が、資格があるかが分かるのは』
『なんだいなんだい!
僕の子が失敗作だって言いたいのかい?
僕の子は……ユウは
絶対に君たちを驚かせる存在になるよ!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハルト戦から数時間後。
俺こと、スズキユウは目を覚ました。
目を覚ますとそこはベッドの上だった。
あたりを見回すとキッチンに机、椅子、冷蔵庫など、大学生の一人暮らしの様な一般的な部屋だった。
壁や天井も今までのコンクリートではなく、一般の部屋によくある壁と天井で、ひとまず安堵することができた。
安堵して考えることひとつ。
人を思い切り殴った。
ここは本当に殺し合いをする施設だってことだ。
ハルトとのゲームで分かった。
相手は本気で殺しにくる。
あの死の恐怖はまだ覚えている。
『こんなことばかり考えてちゃだめだ!』
考えていたことから意識をそらし、
気持ちを切り替える。
ベッドから立ち上がろうとして、自分の左腕をハルトとの戦いで負傷していたのを思い出し、咄嗟に左腕を見た。
『治ってる……』
その左腕は何事もなかったかの様に、元通りになっていた。
ベットに座る格好になり、左腕を詳しく観察する。
腕を動かしても痛みひとつないし、治療した縫い後なども見られない。
どうやって治したんだろう?
そんな思考が頭をよぎるが、わからないものはわからない。
いますべきことはと考え、部屋を調べてみることにした。
この部屋は正方形でできていて、生活に必要な基本的なものが揃っており、冷蔵庫やトイレを除くほとんどの家具が木でできていた。
冷蔵庫には食材があるし、クローゼットの中には服がある。
壁に一つだけあるドアの奥にはトイレだってあった。
ただ一つ、怪しいものがあった。
それは、【スマートフォン】。
部屋の中心に置かれた机の上に唯一置かれていたものだ。
誘拐やら拉致をしたかもしれない奴らが連れ去った奴にこんな部屋を渡すのかも疑問だが、スマートフォンなんて、通報されるかもしれないものを渡すだろうか?
様々な疑問が浮かぶが、知りたければスマホを手に取れ、そういうことだろう。
覚悟を決め、イスに座り、机に置かれたスマホを手に取る。
スマホの電源を入れる。
画面には以下が表示されていた。
【プレイヤー名】スズキ ユウ
勝者ポイント10
【ステータス】
Lv2
状態:呪い
HP100 MP100 攻撃力100 防御力0
能力攻撃力0 能力防御力0 素早さ0
ステータスポイント残り:0
【固有能力】変換Lv1
MP消費0。ステータスの振り直しができる。
【スキル】覗き見Lv1
MP消費100 任意の物や相手のステータス画面を見れる。
次へ
『勝者ポイントが追加されてたり、
レベルが2になってる!』
ハルトとのゲームに勝った影響か?
よく思い出すと、ハルトのレベルも2だった。
つまりハルトも何かしらのゲームで勝っていたということだろう。
そして、スマホをいくら操作してもこの画面以外には行けないようだった。
『通報や、外部との連絡はできないってことか……』
『ん?』
ここで画面右下に次へと書かれていることに気づく、
次へ?
このスマホ、ステータス確認用じゃないのか?
そんなことを考えながら次へと書かれたところをタップする。
無音だったスマホが突然軽快な音楽を流す。
【レベルアップ報酬!】
さあタップして!
画面にはそう書かれていた。
な、なんだこれ!
確かにレベルは上がっていたけど…
報酬もらえるのか!
ここから出られるとかないかなーー
そう思いながら、タップする。
【もらえるかもしれない報酬は以下のうち1つだよ! ではルーレットスタート!】
1【固有能力Lv UP!】
2【スキルLv UP!】
3【ステータスポイント50ポイントGET!】
4【ここから出られるよ! おめでとう!】
『ここから出られるがある! やった! 当たれ!』
まさか本当に出られるが報酬にあると思わず、声に出して喜んでしまう。
だが、肝心のルーレットの画面を見た瞬間、
俺は初めてスマホを自らの手で壊そうと思った。
画面には円形のルーレットが写っており、
360度でマスの大きさの比を表すと、
1、2、3が359度と少しを均等に占めており。
俺の求めていた脱出の4番は1度未満のものすごく小さいマスだった。
『馬鹿にしてるだろーーー!!』
煽っているとしか思えないマスの配分に俺がキレていると、回っているルーレットにダーツが投げられ、ルーレットに刺さり、止まった。
ダーツの刺さっていた場所を確認する。
2番だった。
『まぁ、わかってたよ…はぁ』
テロリンっ!
軽快なSEと共に画面が変わる。
そして、レベルアップ後のスキルが表示されていた。
【スキル】覗き見Lv2
MP消費50。
Lv1 任意の物や相手のステータス画面を見れる。
Lv2 MP消費量の低下、相手のステータス変化も随時更新される。
『相手のステータス変化を随時更新されるのはすごい嬉しい』
ハルトとの戦いをよく思い出してみよう。
俺はハルトに覗き見を使用してステータスを見た時MPが120と表示されていた。
そしてハルトの【固有能力】。
【固有能力】武器生成Lv2
消費MP60 特定の物質を特定の武器に変えられる。
Lv1バット Lv2銃 に変えられる。
しかし、ハルトはゲーム開始時にはすでに銃、後半にはバット、と能力を使用していたとすれば。
俺が覗き見を使用したのはバットに変えた後、つまり【固有能力】を2回使っていたことになる。
ならば消費MP60を2回使いMPは0になっているはず。
だが、俺に見えたのはMP120という数字。
つまり、Lv1では完全な状態の相手のステータスを見る能力で、今の状態のHPやMPなどの情報は一切なかった。
今の相手の情報がわかればいろんな選択肢が生まれる。
だからこのLv2の変化は大きい。
そう思えた。
消費MP50は能力で消費するのが0なためあまり嬉しくなかった。
一通りのやるべきことが終わった、のかスマホの画面は暗くなる。
ハルトとの戦いから数時間しかたっていないし、見ず知らずの環境で疲れたのだろう。
急激な眠気に襲われた。
『いつになったら出られるんだろう。
また殺し合いのゲームが始まるのかな?
少しでいいから休ませてくれ……』
そう呟いてはイスに座った姿勢のままで寝てしまう。
ユウが寝てすぐにスマホに光がともり、
画面にはこう表示されていた。
【第2ゲームの始まりまで残り2時間。】
『ユウくんゲームはまだまだ序盤だよ?』
そんな声がスマホから響いた。
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