これを最初に読んだとき、私が考えたことはと言えば「こんなバンドいたんだ」という驚きだった。Queen、Black Sabbath、The Whoといった大物たちと絡んでいながら、私が全く知らなかったバンドがいたのだ、という、ある種の高揚感も感じた。
もちろん、このインタビュー記事は偽物だし、セールイ・チャイカなるバンドは(少なくとも表舞台に登場しているバンドの中には)存在しない。だが、この作品は、あたかもそのバンドがその時代に生きていたかのような臨場感を持っている。
インタビューというのは、偶像化されているミュージシャンの等身大の姿を映し出すものだ。アルバムやライブではあまり浮き彫りにならないミュージシャンたちの苦悩や葛藤、あるいは喜びや興奮と言った感情が、そのまま表れる。
セールイ・チャイカのヴォーカル、シャノン・エドワーズのインタビューには、そういった、一人の人間の生々しい人生が現れている。それこそ、実在するミュージシャンだと勘違いするほどに。
ここまでリアルなインタビュー記事を作り出せるというのは、大きな才能であろう。自身とは繋がりのない独立した一人の人間の人生を夢想するというのは、並大抵の人にはできない。
こんな、素晴らしい作品に出会えたことに感謝。