ゲーム&コンテニュー
気がついたら同じ面ばかりプレイ。
そしていつも同じ場所で死ぬ。
諦めずにダンジョンのボスに挑戦するけど、すぐに焼き払われるよ。
レベルが足りればきっと楽に突破できるだろうけど。
何回やっても、何回やっても、ドラゴンが倒せないよ。
あのブレスは何回やっても避けれない。
後ろに回って斬り続けてもいずれは尻尾に飛ばされる。
ポーション連打も試してみたけどブレス相手じゃ意味が無い。
だから次は絶対勝つために僕はリスポーンポイントから再突入。
……ということで、あの後めちゃくちゃ死んだ。
いや、その前にも何回かはやられているんだが、少しずつモンスターの弱点や動きを理解してボス部屋までには辿り着けるようにはなったのだ。
だけど問題はそこから。
ここのボスであるドラゴンガーディアンはめっぽう強い。
デザインとしては背中に翼があり四つ足。長い首と尻尾がゆらりと蠢いている。
更に何と言ってもとてもでかい。
それに比例してか攻撃力も防御力も道中のモンスターとは比べ物にならない。
難易度の調整ミスってるんじゃないか?
……いや【鎌】さんが難易度高いって言ってたしな。
仕方ない。もっかいチャットでアドバイスをもらうことにしよう。
■
【GO】
『まだ誰かいますか?』
【鎌】
『どうした?』
【HERO】
『さてはどこかで詰まっているな!』
【GO】
『えぇまぁ、ちょっとダンジョンが攻略できなくて……』
【HERO】
『ほうほう!なかなかの楽しんでいるのだな!
それでいくつか攻略したのか?』
【GO】
『いえ、最初に勧めてくれたドラゴンの宝物庫に挑戦しているんですけど、見事にぼこぼこにされ続けてまして』
【鎌】
『未だにか?
あれから結構時間が経ってると思うが』
【HERO】
『もうすぐ3時間だな!』
【GO】
『道中の敵はだいぶ倒せるようになったんですけどボスがどうにもならなくて……』
【鎌】
『それなら戦うセンスがないというわけじゃないな。
ステータスをスキルはどのようにしているんだ?』
【GO】
『どのように?』
【鎌】
『……まさかとは思うが、ポイントを割り振っていないわけじゃないよな』
【GO】
『……。
ちょっとみてきまーす』
【鎌】
『おまえ……』
【HERO】
『ぬははは!!初心者あるあるだな!』
■
あっれー?
結構このゲームについて調べていたとおもうんだけどなー?
ウィンドウを開きせっせと操作をする。
いくつか開いた後、ステータス画面を見つけた。
そこには半透明と人型のシルエットと各部位に付けている装備の名前。
レベルは20。その隣には『SP』と書かれている欄があった。
「これかな……?」
SPの欄に触れると各ステータスバーとポイント割り振りの画面に切り替わる。
その下には取得可能な初期スキルと初級魔法も表示された。
結構な数があるようで下にスクロールができるようになっており、一番下には検索できる欄が存在している。
「……ん?あれ」
操作をしていて気が付いたが、ステータスを上げるのにもスキルや魔法を取得するのにも『SP』を消費するようだ。
「んー、とりあえず
それと動きを補助する感じのスキルが……<軽業>いいな。
あとこれとあれと……」
方針としてはMMO用語でいう回避タンクというやつに近い。避けて殴るスタイルだ。
ボスにぼっこぼこにされてたのでできればもう死にたくないしな……。
「まぁ装備以外は万全の状態になったな」
ステータスやスキルを振り分けたあと自分の装備を見直す。
このゲームは装備に耐久値が存在しており、非戦闘エリアでの自動回復や鍛冶屋、鍛冶スキルでの修復によって回復する。
僕はそれを無視しながらダンジョンアタックをしていたので最初に買った防具や武器は既に存在しない。
代わりに装備しているのはリザードマンが装備していた<粗雑な胸当て>と<刃こぼれしている剣>だ。
両方耐久値が低く壊れやすいが、すでに149回もダンジョンに潜っているので結構あるのですぐに壊れても装備できるので対して問題はない。
STRも上げたから複数装備も可能だ。1本壊れたようにもう1本装備しておこう。
「よしじゃあ再挑戦といきますか!」
改めてダンジョンの中に走って向かう。
最初の一歩ですぐに気が付いたが動く速度がステータスを割り振る前より速い。
想像以上の疾走感に驚いていると最初に戦ったトカゲを見つけた。
左腰に装備している<刃こぼれしている剣>を抜き、即座に斬り付ける。
するとあっという間にそのトカゲのHPは半分以下になり、切り返しのもう一撃で倒すことができた。
目に見える強さの成長に僕は足を止めてニマニマとした笑みを浮かべてしまう。
「これならボスを倒すことができそうだ!」
そんな思いを胸に再び僕は走り出し、ボスのいる場所へと向かった。
もちろん道中には先ほどのトカゲやリザードマンを始めとした爬虫類系のモンスターが出てくるが、死に覚えした知識と成長したステータスやスキルの前には敵ではない。
気づかれる前なら先手必勝の一撃を入れ、正面から戦う場合は攻撃を躱し、隙をついてカウンターの一撃を入れる。
自分のプレイスタイルが固まった瞬間だった。
段々と慣れてきたということもあって割とすぐにボスがいる場所へと到着する。
リベンジ戦だ。
耐久値が減った装備を変え、重量のある大きな扉を開ける。
中には大きなドラゴンガーディアンが体を丸めて眠っており、僕が部屋に入ると同時にゆっくりと起き上がらせる。
僕と目が合った瞬間、空気が振動するほどの大きな咆哮が轟いた。
「いくぞ!」
ドラゴンガーディアンが首をのけぞらせた後、勢いよく炎のブレスを吐いてきた。
僕はその直前に走り出す。
道中でもレベルが上がり、ステータスをAGIに振り分けたのでこれまでのようにあっさり攻撃に当たって散るということはない。
足や銅に攻撃をするがそれはどれも微弱なもの。効果が薄いのは目に見えている。
不意に尻尾の薙ぎ払いが飛んできたが速さが足りていたおかげでかわすことができ、更にドラゴンガーディアンの懐に潜り込むことができた。
<刃こぼれしている剣>を振りぬき、ドラゴンガーディアンを斬る。
手に伝わる感触と赤色のダメージエフェクトのおかげでダメージを与えられたことがわかった。
最初ではこれすらなかったので大きな進歩だ。
だがずっとこの状態というわけではない。
ドラゴンガーディアンは前足を横に振って僕を弾き飛ばそうとしてきた。
寸前で大きく跳躍してそれを躱すが、その先にはドラゴンガーディアンが口を開けて噛みついてくる。
「やっべ!!」
空中では躱すことができない。
これはまずいと思ったが、持っていた剣をドラゴンガーディアンの目に向かってぶん投げた。
そのおかげか迫りくる口の軌道が変わり、攻撃を逃れることができた。
そしてこれは好機でもある。
自分の横を通る首を掴んでその体に取り付いた。
立つには不安定な場所ではあるが<軽業>スキルのおかげで難なく移動することができる。
効果は30秒。
僕はドラゴンガーディアンの頭に走り出し、同時に腰に装備していたもう一本の剣を抜く。
頭頂部に着くと僕はドラゴンガーディアンの目に剣を差し込んだ。
「GYAAAAAAAAA!!!」
目にダメージを受けた為か、ドラゴンガーディアンは激しく頭を振り始める。
それでも僕は剣を放さず、一つの魔法を発動させた。
「『雷撃よ、迸れ!サンダーウェイブ!』」
初級魔法『サンダーウェイブ』
MPを継続的に消費して発動する雷属性の魔法だ。
分類としては近距離で発動するのだが、雷属性は金属や水属性に伝播していくという属性を持っている。
つまり、僕は剣を通してドラゴンガーディアンの頭の中に電流を流し込んでいるのだ。
体内への攻撃はボスモンスターとは言えどかなりの効果があるらしい。
正直ぶっつけ本番の賭けだったのでうまく成功してよかった。
「いけ、いけいけいけいけ!!!」
<軽業>スキルのおかげで振り落とされることはない。問題はこの効果の間に倒しきれるかどうかだが。
だがこのモンスターも甘くはない。
ドラゴンガーディアンは頭を振るのをやめ、頭を傾けて勢いよく前に進め始める。
その先にあるのは壁。
それが何を意味しているのかすぐに分かった。
「お、押しつぶされっ!!」
剣を手放してすぐに飛びのこうとするが、そんな僕を逃がすまいとドラゴンは器用に頭を動かし、僕の身体を押し捕まえる。
抵抗はむなしく、僕はドラゴンガーディアンの頭と壁に挟まれた。
激震が走り、ドラゴンガーディアンはしばらく壁に頭を押し付けていたが、やがて低い唸り声とともにゆっくりと離れた。
これで戦闘は終わり……ではない。
「『雷撃よ、迸れ!』」
<食いしばり>スキル。
大ダメージを受けてHPが0になった時に発動する。
0になる代わりに1残し、5秒間の無敵効果を付与される。
これのおかげで僕は生き延びることができた。
生き残ったことに安堵している時間は後に回して壁から跳躍し、ドラゴンガーディアンの頭に取り付く。
剣は耐久値がなくなったためかそこにはない。だから代わりに僕の右腕をそこに突っ込ませ、叫んだ。
「『サンダーウェイブ!!』」
電撃が直接流し込まれる。
残りのMPをすべて注ぎ込み、これで終わってほしいと願いながらドラゴンガーディアンを睨みつける。
やがてMPが切れ、それと同時にドラゴンガーディアンが断末魔を挙げながらエフェクトに包まれて消失していった。
「やっ、やったぁぁぁぁぁあぁ!?!?」
喜ぶのもつかの間。
自分が掴まっていた大きな頭が消え、地面に向かって落下する。
やばい、これはまずい!
「そうだ!無敵効果!」
急いで自分の視界の端にあるHPバーを見る。
バーの下には自分が受けているバフやデバフの状態が表示されるから、現在自分がどんな効果を受けているか確認できるからだ。
そこには自分に無敵効果が付与されるアイコンがあった。
それを見て僕はホッとする。
だがその瞬間にアイコンは消えた。
「あっ」
地面との距離約10㎝。
もちろんこのゲームは落下ダメージもあるわけで……。
ゴシャリという音と共に記念すべき150回目のHP全損を経験した。
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