6/28 暑い日
今日が今年に入って一番暑かった気がする。これからその最高がどんどん更新されていくんだろうなと先を憂うと、うんざりする。朝のニュースで「梅雨も明けて来週からはさらに気温が上昇するでしょう」とかなんとか言っていたし。
いつの間にやら外では蝉が鳴きだしていた。もとより暑さは苦手だし、夏も好きじゃないから、蝉の声に趣などこれっぽっちも感じない。ただ鬱陶しいなぁとか煩いなぁとか耳にも暑いよとか、あまり楽しくない感想ばかりを抱いてしまう。
教室の冷房も、今日はあまり恩恵を感じられなかった。まぁ、外よりはマシではある。とにかく、登下校がしんどかった。背中は汗で湿るし、そのせいで透けてないかと思わずひやひやしてしまう。しかもひやひやしたところで、体感温度はちっとも変わらない。
それから日記に書くようなことじゃないけど、廊下で女の子の後ろ歩いてるときとかにさ、ついつい、見ちゃうよね。何をっていうとまぁ、下に着てるものを。
別に、変なことを考えているわけじゃない。ただ見て「あっ、透けてるなー」って思うだけ。ホントだよ。それくらい、皆思うでしょ。それがもしオオタキのだったら、うっひょー! ってなるけど、それ以外の子には全く興味ない。断じて。
何を言ったところで、オオタキのなら興味あるって時点で変なんだけど。あと、もし見せてくれるならどっちがいいかって言ったら、上よりも下の方が良いな、私は。
何を書いてるんだろう。いよいよ本当に読まれたらまずい。
教室の席順は知っての通り、名前の順だ。だから名前の頭文字が同じな私とオオタキは仲良くなれたわけで、もう、神に感謝って感じだ。じゃなくて。
私が今日書きたいのは、その席順への不満。
私たち名字が「あ行」。つまり、出席番号が前の方、なんなら一桁台だ。それで、大抵の学校は、出席番号の若い方が左から並んでいく感じだと思う。例外は勿論あると思うけど、私のとこはそうなのだ。
それで結局お前は何が言いたいんだって言うと、窓際なんだ。私とオオタキの席は。
これを読んでる未来の私は、ちょっと想像してみて欲しい。普通に覚えていたら、別にしなくてもいいけど。
外では、ぎらっぎらに陽が照っている。塗り残しのない、濃い色の空。景色の均衡を保つように高い夏の太陽が、建物や木々を焼いている。
で、窓際。
そりゃあもう、干からびてしまうくらいに暑いのよ。
もう、サウナ。サウナだった。もはや閉めたカーテンの意味、無かったし。遮光カーテンなんて気の利いたものは在りはしない。褪せたクリーム色のカーテンを日差しが貫通し、教室内にじわじわと緩やかでいて確かな質感のある熱を齎していた。
冷房が効いていてもあまり意味ないなって思ったのは、そのせいだ。そんな暑さの中では当然、オオタキも一日中溶けてしまっていた。一日中、机にべたーっと張り付いていた。
「あちぃよぉ、寝れねえよぉ」とずっと言ってた。寝るなよ。
で、こう、背中しか見えなかったわけだけど。
腕が前に伸びているから、ワイシャツの生地が張ってね、ぴんっ、って。
で、見えるわけ。ワイシャツが、透けてるのが。
さっき下着について触れたのは、これが理由だ。
うわーい! やったー! イェーイ! って声に出して喜びそうになった。
心の中の数名のオガワが手を叩いて喜んでいる感じだった。
自習でだらけムードの教室で「う~~~~~あぢ~~~~~」とオオタキが机に溶けているときにそれに気付いて、思わず勝手に手が動いてしまった。
だって、触りたくなるじゃん。我慢できるわけ無いでしょ、あんなに無防備にぐだぐだしていたら。
そしたら「イッ」って声(?)が出たかと思うと、ちょっとびっくりするくらいに勢いよく起き上がって、それからかわいい顔で私を睨んできた。半開きの目で眉間に少しだけしわを寄せて、頬を赤く染めて。暑さのせいだろうか、と恍けてみる。
「……ちょっと、もう。ねえ、ねえ」
言いながら、腕やら頭やらをばしばし叩いてくる。
「えっち。やめてよ。ばか」
「ごめんごめん」
ああもうかわいいなぁその反応、結婚してくれないかなって、いてて、叩く力が強いわ。
その後の授業中、私の奇行を警戒してか、やたらと後ろを向いてくるようになった。
やった。一石二鳥って、まさにこのことじゃないか。
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