生まれてからよく歩くたびに人とぶつかる主人公は、官憲の手に委ねられて歩行教習所へ送られる。
教官は暴力と罵倒で主人公を調教し、やがて誰ともぶつからなくなるような歩行の仕方を彼に仕込ませる。
ちょうど誰ともぶつからなくなった頃、テストがあった。誰ともぶつからなければそれで合格すればよかったのだが、運悪く。
それからは主人公は調教されて軍人のようになったにも関わらず、脳にチップを埋め込まれた。
結果は……。
私たちは生まれた頃から国が敷いたレールの上を歩かされて生きている。
小学校、中学校へ行くのは当たり前。いじめられてもいくのが当たり前な時代もあった。
不登校児には教育の機会がなかなか与えられない。私が小さい頃はそれが社会問題となっていた。
某不登校児ユーチューバーを褒めるわけでは無いが、彼は彼なりに行きたい学校を選んで行っているわけだからある意味幸せ者だ。
私は小学校の頃、県内の国立中学校へ模試で行けるという判定をもらっていた。
だが発達障害のせいでカウンセラーからは「行くと虐められる」「最悪特別支援学校になるかも」などと言われ、諦めざるを得なかった。
安部公房は鞄という短編で「選択しない自由」というものを提案していたが、この作品の主人公も選択しない自由を与えられた。
その先に何があるかは分からないが……。
彼に幸あれ。私はそう願ってやまなかった。