第3話 寝起きの解放宣言
目が覚めたら、医務室にいた。
ベッドから起きてカーテンをめくると、
「目が覚めたようだな。」
「おっはよー。」
「あ、気づいた?良かったー。」
普通に先輩たちが居た。
彼らによると、どうやら俺はサバゲーサークルの見学中に鼻血ぶっ放しながら気絶して倒れたって事にされてるらしい。
見学っていうか帰ろうとして迷ってたまたま会っただけなんだけどね。否定したところで
『いや大学生が迷子てwないわw』
とか言われるのがオチなので否定もしづらい。マジか…
「しかし、いきなり鼻血出して倒れるなんてな…体調悪いのか?」
「もしかして…お姉さんに惚れちゃった…?」
「いやー、キツイわー。」
「あ゛!?」
なんか肩幅の人は普通に心配してくれてるけど…女性の方はからかってくるし、細いのは余計な事言ってシバかれてるし、大丈夫なのかなこの人たち。
しかもあながち間違ってないんだよね…女性に触れられるとか人生でも数えるほどしか無いし。(カーチャンは除く)
ふと、肩幅の人がこちらを向いて尋ねた。
「起きて早々に悪いが本題に戻るぞ。ウチのサークルに入らないか?」
俺は少し考えた後、
「無理ッス。」
「即答かよぉ!?」
「…そうか、理由を聞いてもいいか?」
何か細いのが騒いでるがスルーで良いんだろうか。
ともかく、理由か。あまり現役のサバゲーマーに言って不快に感じないとは思えん内容だが…
「あまりマトモな理由じゃないですよ?」
「別に構わないよ、聞かせて欲しい。」
「…俺もサバゲーに興味無い訳じゃ無いけど、ミリタリー趣味は辞めたんです。」
「…ん?と言うと?」
「昔、『人殺しの道具で遊ぶのは、人間のやる事じゃない』って、言われたんです。親にも、先生にも、親戚の大人は皆同じ事言ってました。」
話しながら、脳裏に記憶が蘇る。
言葉、表情、軽蔑、抑圧…
そんな負のエネルギーを遮るように、敢えて空気を読まないかのように、細身の人が言った。
「なら、やろうぜ?サバゲー」
「…は?」
唖然とした顔のままフリーズする俺に、彼はさらに話し続ける。
「いや、だって君がサバゲーかするかしないかって他人に決めさせていいもんなの?自分の趣味なら自分のやりたいようにやる物でしょ。」
「え…でも…「まあ聞きなよ。」アッハイ」
「そうだな。珍しくいい事言うじゃないか。」
「ナチュラルにひどくね?」
「まあ、君がやりたくないなら俺たちに無理強いする権利は無い。だけど、君がやりたいと言うなら、いつでも歓迎するよ。親の説得が必要ならソレも手伝おう。実はそういう事情でサバゲーやりづらいって部員も多いんだよ…」
「…やりたいです。サバゲー」
考える前に、言葉が出ていた。
やっと自覚した、俺は無趣味なんかじゃ無い。趣味から目をそらしてただけだ。
でも、周りに従ってばかりの人生なんぞそれこそ勘弁だ。
…やってやろうじゃないか。
俺は少しだけ口角が上がるのを感じながら、世界に宣言するように、もう一度、口を開いた。
「俺も、サバゲーやりたいです。是非、入部させて下さい。」
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