第三章・新米庭師は御令嬢

第55話



火曜日がやって参りました。


冬だから、かなり寒い時期ですけれど、晴れたため、比較的、冬にしては暖かめです。


リュネット伯爵家では、レナートさんが待っておりました。





「いらっしゃいませ。オリヴィエ様。」


「今日は、よろしくお願いいたします。」


レナートさんの格好は、騎士服でも、正装でもなくて、ラフな紺色の私服姿です。


わたくしも、父が言ってくださって、薄青緑のラフなワンピースドレスにしています。


「オリヴィエ様、父から聞いたのけれど………

庭師の見習いになりたいのかい?」


「ええ。もし宜しければ、ですけれど………」


わたくしには、難しいでしょうか?それでも、庭師さんたちと関わってみたいのです。


もともと、わたくしは、芸術や文学などを専門として、今までやって参りました。


しかし、絵が上手いわけでも、楽器が出来る訳でもなく、歌は得意な分野ですが………


「実は、私自身、王宮の見回りのシフト………

仕事が休みのときは、庭師のラートの手伝いをしています。貴女も手伝いますか?」


「………えっ!?そうなのですか?ぜひ、お願いしてもよろしいでしょうか?」


「構いませんよ。むしろ、人手が足りないのでお願いしたいくらいですから。公爵令嬢であるオリヴィエ様が、というのは驚きましたが。」




「今、現在、ラートの手伝いをしているのは、同じく庭師のカルメラと私のみです。」


「カルメラさんはどんな方なのでしょうか?」


「ラートの弟子です。それなりに有名な商家、リュターシー家の三男として生まれた人でね。奥方のフィロメーナは、フィリーンの世話役の侍女をしているよ。」


リュターシー商会!ええ、よく知っています!


アクセサリーや小物を中心に作り続けて売っている有名なお店でございます。


アイガーデシア子爵という方が支援していて、貴族の御令嬢にも大人気な!


「フィロメーナ………どこかで聞いたこと………

あるような、ないような………?」


「ああ、かなり昔ですが、噂にはなったかと。アイガーデシア子爵の妹にあたりますから。」


「あ!風の妖精と呼ばれた伝説の御令嬢の!」


「今は、フィロメーナは、貴族の子爵家から、ラート夫妻に養子入りしているから、シンリの義妹でもあるんだけどね。」


風の妖精と呼ばれたフィロメーナ様は、大変、お美しいと評判になった御令嬢です。


侯爵家の嫡男に見初められましたが、ひっそり伯爵家の侍女になり、結婚して、一般国民に。


アイガーデシア子爵家は、リュネット伯爵家のご親戚だものね。それなら、納得できます。

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