第53話

リュネット伯爵。お久しぶりでございます。今、お時間は、大丈夫でしょうか?」


「おや、お久しぶりです。子ども達ではなく、私に、ですか。どうされましたか?」


公式の場では、リュネット伯爵とお呼びしますが、少し寂しいですね。


レオーンさんは、優しく、柔らかな表情です。


「リュネット伯爵に直接お話ししたいご相談がありまして、参りました。」


「直接お話ししたいご相談、何でしょうか?」


ちなみに、わたくしとレオーンさんは、小さな声でお話しをしております。


親しいようだと思われるのはかまいませんが、公爵令嬢が庭師見習い………


さすがに、わたくし達を知らない貴族の方々に知られたら、かなり騒ぎになるでしょう?


「リュネット伯爵家の、庭師見習いの体験を、ラートさんの元で、させて頂けませんか?」


「公爵令嬢であるオリヴィエさんがですか?」


「ええ。はい。お父様から庭師見習いの許可を得ています。流石に、難しいでしょうか?」


「公爵様から許可を………とりあえず、まずは、ラートに確認してみましょう。」


「リュネット伯爵っ!ありがとう存じます!」


いきなりの頼み事・相談事なのに、公爵令嬢としては、驚きの選択をしたはずなのに


レオーンさん本人は、驚きつつも、微笑ましく見守ってくださるかのような笑顔です。





「ただ、庭師は、大きなハサミを使いますし、虫の多い夏の季節は、非常に、大変ですから、大丈夫でしょうか?」


「………そうですね。まずは、簡単なことから、お手伝いをしてみたいのです!」


ハサミなら使えるかしら?小さなハサミなら、使えるけれど、どれくらいの大きさなの?


虫が出る暑い暑い夏は、たしかに、苦手です。ああ、どうしましょうか?


「ラートは、営業と言いまして、庭のある家、主に、豪商や男爵家などにチラシを配って回ることもありますよ。詳しくは、ラートと面談をしてから、決めて下さいね。」


「まあ!チラシを………?紙を配っていくのね?それなら、わたくしにも出来るかしら?」


チラシ配りっ!わたくしは、学生時代に作成をしたことがあります!


ビオーン様が生徒会長でした時、時折お手伝いしておりましたから。


それが、こんな形でお役に立てそうな日が来るとは思ってもみませんでした。


「どのようにチラシ配りをされるのですか?」


「男爵家や子爵家の貴族の場合は、その屋敷の門にいる門番の騎士に渡したり、ポスティングと言う方法で、ポストにチラシを入れたり。」


「まあ!素晴らしい!運動にもなりそうね。」


私は、ほとんど部屋で過ごしてきましたから。


貴族街以外のお外を見れるというのは、とても素晴らしいことだと言えますよ!

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