第45話



次は、子ども向けの神話講義。


子ども向けですから、何度も聞いたことのあるお話ですよ。


毎年、違う神主さんがお話しして下さるので、ちょっとだけ、見に行くことがあります。




「皆様、初めまして。わたしは、アルシエン。よろしくお願いします。」


「「「「「はじめましてー!!!!」」」」」


ああ、今年は、ベテラン神主のアルシエンさんですね。クォーク侯爵とライバルらしいエステ侯爵の双子の弟にあたる方です。


いつも優しくて、みんなを暖かな目で見守っていらっしゃる素敵なおじさまです。


来ている子達は、下は3歳から上は7歳までの貴族の子ども達だけじゃなく、都にある孤児院暮らしをしている子ども達もいます。


ふふふ。みんな、ワクワクして、ソワソワしていますね。なんて可愛いらしいのでしょう!


「ふふふ。今年も雪が降らずに晴れましたね。毎年、このお祭りの日は晴れるのです。気付きましたか?」


「「「えええっ!?気付かなかったあ!」」」


まあ!わたくしも、この20年間気付きませんでしたよ!


でも、確かに、この時期、真冬のはずなのに、大雪も、豪雨も、ありませんね!


このレンテーゼ王国の発展繁栄を神様が喜んで祝福してらっしゃるのかしら。





「皆さん、ぜひ覚えておいでください。」


いつも穏やかなアルシエンさんが、真面目かつ真剣な表情に変わりました。


子ども達も、いつもと違う神主さんに興味津々です。わたくしも、今、驚いています。


「あなたがたが、悲しみの中にある時、神様は一緒に泣いて、一緒に考えて、静かに見守っておられます。人々が哀しみを乗り越えて、成長する姿を見ておられるのですよ。だから、あなたがたは、ひとりではありません。」


「わああ!それって、ほんと?かんぬしさま!わたし、さいきん、さびしいの!どうしよう?って思ってたの!かみさま、みまもってる?」


「ええ。もちろん。目には見えないけれども、確かに、見守って下さっているのですよ。」


「わあ!ありがとう!かんぬしさま!わたし、ひとりじゃないんだね!」


ふふふ。なんて純粋な女の子なんでしょうか。ついに泣き出してしまいました。


彼女に会ったことがあります。レナータ夫人の娘さん、ミッティちゃんですね。


寂しがり屋さんで、よく泣いているとレナータ夫人がおっしゃっていました。


両親も、お兄様も、騎士団に所属しています。お兄様は、まだ初等部の学生ですから、見習いですが。お家でひとりになる数が増えてきて。寂しかったのでしょう。


「あなたがたが、人々に幸福を与えんとしてるとき、神様は応援しておられます。レンテーゼ神話は、そのような慈愛に満ちた神々のお話しなんですよ。」

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