第36話


「ねえ、アンジェロ。スター兄さんのお茶目なところって、誰に似たの?陛下か、王妃様?」


「ああ、意外かもしれないけど、実は、兄上のお茶目なところ、お祖父様に似たんですよ。」


リオルくんがアンジェロくんにヒソヒソとした声で聞きました。


リオルくん、お兄様には全く聞こえませんが、わたくしには聞こえていますよ………?


「えええっ?先代国王陛下が?お茶目な人には見えなかったんだけど………」


「お祖父様は、ああ見えて、かなりお茶目な人なんだよ。真面目そうに見えて、意外と。」


そうなんです。先代の国王陛下で、わたくしの祖父の兄にあたる大伯父様は、真面目な人ではありますが、お茶目な方ですね。


国王陛下は、ストイックな性格をしています。リーム公爵家出身の母妃に似たのでしょう。


しかし、お祖父様に憧れるお兄様は、だんだん先代国王陛下に似て来ました。





「リオル、君も、私がお茶目だと思うかい?」


「うん、スター兄さんは、お茶目でしょうよ。まさかとは思うけど、気付いてなかったの?」


お兄様は、今度は、リオルくんに尋ねました。


リオルくん、お兄様は、お茶目な…………いえ、非常に聡明で、立派なお方なの。


でも、天然なところがおありだから、それには気付いていないと思いますよ。


「ねえ、そう思わない?オリヴィエ姉さん。」


「わたくし的には、王太子を、スター兄さんと呼ぶ貴方にいつも驚かされています。」


母方の従弟、フィーネ伯爵嫡男のリオルくん。


わたくしと同じ茶髪に母や叔父に似た紫の瞳をしています。


伯爵家の嫡男が、王太子に、スター兄さん………


本当に、この子も不思議ですね。ええ。


「えっ!?そう?まあ、いいじゃない。スター兄さんは、兄さんのような人なんだから。」


「そう、リオルは、オリヴィエの従弟だから、私にとっても、弟のようなものだよ。」


アナスターシオから、スターを愛称にするのも珍しいんですけれど………


でも、アナスターシオ兄さんだと長いから呼びにくいのかしら?


「まあ!お兄様が許可していらっしゃるなら、かまいませんが、公の場では、アナスターシオ王太子殿下と呼ぶのですよ?」


「うん、もちろん。そう呼ぶから大丈夫だよ?オリヴィエ姉さんは、心配しすぎだよね。」


リオルくんは、楽観的ですね。不思議な感性を持つ子ではありますが、彼は、天才少年です。


いつも学年の中で首席ですからね。ちなみに、次席は、第二王子のアンジェロくんです。


「オリヴィエ姉上。リオルは、いつも、こんな感じだから、気にしてたら、疲れちゃうよ?」


「ええ。ええ。もう、この際、そんなに、気にしない方が良いのかもしれないと思いました。ありがとう存じます。アンジェロくん。」

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