第32話



「そういえば、珍しくパーティーに出席して、何処かに出掛けたんだって?母上と君の母から聞いたんだけど、かなり珍しいよね。」


「ええ、本当に、珍しいことでございますね。リュネット伯爵家に行って参りました。」


かなり不思議そうな表情で、わたくしを見て、聞いてきたお兄様。


わたくしは、普段、あまりお出掛けしません。だから、よほど驚いたんでしょう。


「リュネット伯爵家………騎士団長補佐の家か。なかなか珍しいところに行ったね。」


「珍しいでございますか?なかなか素晴らしいお家でしたよ!皆様、お優しいですし。」


身分的に珍しいと思ってらっしゃるのですか?


お兄様、わたくしは、あまり身分で人を見るということが、よく分かりませんね。


むしろ、農民から伯爵家になれたことは素晴らしいと思いますよ。


「レインとレナートは、優秀な騎士揃いの家の割に大人しめの性格をしているだろう?」


「ええ。本当に。わたくしの騎士のイメージは筋肉隆々としていて、熱い熱い熱血漢といったイメージでしたから驚きました。」


おそらく、騎士団の団長さんが、熱血漢と言われるような性格をしてらっしゃって、イメージ通りに、筋肉隆々すぎるお方だからでしょう。


騎士団長のラーペンヌ侯爵は、わたくしの父の幼馴染にあたる方で、リュネット伯爵の上司にあたります。伯爵は団長補佐ですから。


「イリーゼ様は、大変美しく、大人びていて、年下ですが、お姉様と呼びたくなりました!」


「イリーゼ?ああ、もしかして、アンジェロの幼馴染のことかな?」


そうです。アンジェロくんの幼馴染でご学友のイリーゼ様ですよ。


その反応は、イリーゼ様には会ったことがないということでしょうか?


「イリーゼは美しくて気立てが良いお嬢様だと噂で聞いたことがあるよ。けど、お姉様と呼びたいのかい?妹にしたいではなく?」


「ええ!わたくしの方が2歳年上ですけれど、不思議とお姉様と呼びたいですね!」


何でかは分かりませんよ。でも、不思議とそう思わせるオーラがイリーゼ様にはありますね。


そう、まるで、ユーリシア姫のように………!


「わたくしの中で、ユーリシア姫と並ぶほどの美人さんでございます!しかもですよ?内面もお優しくって、ステキなお方なんですよ!」


「ユーリシアと並ぶほどの美人で、内面も良いお嬢さんなんだね?良い友人が出来たようで、本当に、安心したよ。オリヴィエは、エレノア嬢以外の御令嬢と、あまり話さないだろう?」


「ええ。とても新鮮な気持ちになりました!」


年近い親戚は男性ばかりで、唯一エレノア様が女友達です。


わたくしは、お話したいですが、身分がどうのとかいうものがありまして………話しかけると、相手は、緊張しすぎて、あまりお話出来ず………


イリーゼ様のように、わたくしと堂々と会話をして下さるなんて、初めてですよ。

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