第26話



「あら?もうこんな時間!オリヴィエちゃん、もうそろそろ、帰る時間でございますよ?」


「まあ!もう帰る時間なのですか?楽しくて、時間があっという間でしたよ!」


明るい暖かな昼に来て、もうそろそろ、夕方に近い空色になりつつあります。


最近は、だんだんと夜が寒くなってきまして、ああ、今は秋なのですね、と感じます。


秋が過ぎ、冬になると、雪が降り積もります。


冬は、こちらに来れないかもしれないけれど、暖かくなってきたら、また来ますね。


あ、その前に、真冬の建国記念日で会えるかもしれませんね!






「リラ、もうそろそろ、帰りましょうか。

馬車は、用意出来ているかしら?」


「は、はい。オリヴィエ様、馬車は、恐らく、もうそろそろ来ますので、お待ち下さい。」


門限は、暗くなる前に帰ること。お母様から、そう言われています。


夜に近い空色ですから、馬車は、なるべく目立たないひっそりとしたものです。豪華なものを用意しますと、目立ちすぎてしまうので。


「リュネット伯爵家の皆様、また、ゆっくりとお話しが出来る機会がありそうなら、我が家にお手紙を送って下さいませ。」


「オリヴィエさん、もちろん、我が家からも、送らせていただきます。」


「ええ、よろしくお願いします。」







馬車の中。リラとふたり。


いえ、ふたりに見えて、違いますね。


ひっそりと、我が家の執事が馬車を動かす方の横に座っていますから、全員で四人いますよ。


「………ねえ、リラ。貴女、さっきから、ずっとそわそわしていて落ち着かないでいますね。」


「そ、その、珍しいかもしれませんが、ご相談させていただいても、宜しいでしょうか?」


「まあ!年下のわたくしで宜しいのでしたら、もちろん構いません。何か、ありましたか?」


本当に、珍しいかもしれませんね。こんなに、そわそわしたリラを見たのは何年振りかしら。


確か、あれは、わたくしが幼い頃のことです。理由は知りませんが、そわそわしてました。





「質問なんですが、オリヴィエ様は、伯爵家のご嫡男、レイン様を、どう思いますか?」


「そうね。将来的に伯爵になるのなら、かなり有望なお方といったところでしょうか。レインさんを見て静かな湖面を思い浮かびました。」


「静かな湖面……そうでございますね。確かに、そうかもしれません。静かに話を聞いて下さりましたし、質問も穏やかでした。」


レインさんは、ご挨拶だけでしたから、あまり詳しくありませんが………


凛とした佇まいを見せておられて、まだ嫡男のままであるのに、伯爵のような方でしたね。


騎士のような熱血漢というより、密やかな湖のような方というイメージでしょうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る