第16話



「イリーゼ、オリヴィエ様とリラさんをお庭にお連れしても構わないですかね?」


「まあ!レナート兄様、珍しいですね!自慢の庭ですから、とても良いと思いますよ?」


まあ!こちらのお庭も、綺麗な場所があるの?


それ、素敵!見てみたい!レナートさんが庭に案内してくださるのかしら?


「あの、オリヴィエ様、お庭に行きませんか?秋に咲く薔薇の花が美しいので、我が家の自慢なんです。どうでしょうか?」


「まあ!とても素敵ね!ぜひ、見てみたいわ!ありがとう存じます!」





「リラ!薔薇ですって!どうします?」


「私も、もちろん行きますよ。オリヴィエ様の護衛も兼ねてますからね。」


「良いの?百合は、好きだけど、薔薇の匂いが苦手だから、いつも着いてこないでしょう?」


リラの代わりに、いつも護衛として行くのは、従兄弟の王太子か、第二王子です。


たまに、お母様、叔母様のおふたりと見に行く時は、叔母様の護衛が着いてきます。


それくらい薔薇の匂いが好きではないらしい。


「リラさん、大丈夫ですよ。護衛は、レナート兄様が出来ますもの。私、リラさんとお話しをしてみたいのです!良いでしょうか?」


「は、はい、しかし、宜しいのでしょうか?」


リラは、わたくしを見て動揺しておられます。


ええ、良くないですね。王族のわたくしが貴族男性と二人きりは、良くないらしいのですよ。


わたくしは、気にしませんけど、リラが心配をするなら、やめたほうがいいのかしら。


「あの、イリーゼ様、オリヴィエ様は、王族の令嬢でございます。殿方とふたりきりは………」


「ああ、そうですね。私にとっては兄ですが、オリヴィエ様には、初対面の殿方ですものね。気になりますよね。」


わたくしは、親戚や幼馴染に殿方が多いから、気にしませんが………


でも、たしかに、初対面の殿方で、まだ実力が分からない人だから、ちょっと気にしたほうが良さそうなのかもしれないわね。





「なら、ちょうどいるから、この屋敷の中でもお庭に詳しい侍女を案内役にしましょうか!」


「あの、イリーゼ様、もしかして、わたしを、お呼びしましたか………?」


恐る恐る、近付いて来たのは、40代くらいの優しそうな侍女さんです。


とても穏やか。護衛タイプではなさそうです。護衛は、レナートさんの役目かしら?


「オリヴィエ様とレナート兄様をお庭にお連れして下さい。」


「かしこまりました!オリヴィエ様、リラ様、シンリと申します。よろしくお願いします。」

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