実験

「原子操作、水素と酸素の生成。」


風呂につかりながらそう唱える。

ブクブクっと泡が発生したところで、ライターの火を近づける。


瞬間、ポンと言う破裂音がした。


これは水素が引火した音、つまり水素爆発の音だ。

この能力を使えば水を、酸素と水素に分離出来るらしい。


この能力を応用すれば、最近政府が推進している水素車、アレの燃料を好きなだけ供給することができる。


酸素の工業的利用についてはあまり詳しくないが、こちらもなかなかの高値で売り捌ける筈だ。


さあ次行こう次。


「原子操作、シャンプーを各構成原子ごとに分離せよ」


瞬間、シャンプーが様々な色の元素に分離した。

中にはあまりよろしくない物も見え隠れしている。


淡黄色の斜方晶。比重は2.07,硫黄だ。人体にとってあまりよろしくない。おそらく中に入っていた硫酸ナトリウム系の洗浄剤が分解される過程で発生した物だろう。


変な化学反応を起こされても困るので、俺は排水溝にそれらを流してその日はさっさと寝た。





次の日。

冷蔵庫の中にあった缶詰を開けて食べる。

鯖の缶詰だ。4缶くらい開けたらそれに向かって念じる。


「原子操作、缶をぺしゃんこにして」


缶は音を立てて潰れた。

硬い金属もこの原子操作の影響を受けるのか。

感心しながら再度念じる。


「原子操作、缶を一つに」


缶同士が引き寄せられ、ギリギリという金属音を発した。

そして缶は原型を崩し、一つの塊へと進化する。


鉄とスズの合金だ。手に持つと少し重い。

なるほど、こんなこともできるのか。


原子操作、この能力は相当楽しそうだ。

これを使えば、カジノで大暴れすることもできるだろうし、自分の好きなものを誰の助けも借りずに作れるだろう。


フハハ、カジノの経営者たちよ、震えて眠れ。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る