第6話

「失礼しました」

僕は職員室に部室のカギを取りにきて、しっかりとミッションをクリアする事が出来た。

僕は部室前で待っている、先輩たちに長く待たせるのは失礼と思い、早歩きで歩く。部室には二分で着いた。

「お待たせしました」

と言って、僕は部室のカギを開ける。

「じゃあ、準備をしようか」

仁先輩の指示で僕たちは体育倉庫密室事件の資料をコピーをしたり、今回のトリックの準備をして、僕たちは部室を出て、体育倉庫に向かった。

「ねえ、このボールって、揉み涯があるね」

とまた、突然に下ネタを言い出す、詩穂先輩。

「いや、そんなに中心堅くないだろ」

とさらに話を盛る仁先輩。

「そうかな?結構似ているとおもんだよね」

と自分のと比べ始めた詩穂先輩。

「詩穂先輩そういうのは誰もいないところでやってください」

僕は詩穂先輩に言う。

「そういえば、最近、暑くなったな」

と仁さんが、まだ高い太陽の方を見た。確かにもうすぐ蒸し暑い時期が来る。

花粉もだいぶましになってきた。

「いやだな。蒸し暑いと蒸れるし」

「やめてください。女子の事情は男子のいないところで話してください」

僕はまた、詩穂先輩に言う。

「それは俺も同意だ」

と僕の意見を賛成してくれる仁先輩。

「あれ?あれって高橋先生じゃないかな?」

と仁先輩が窓の外を指さす。僕たちは仁先輩がさす方を見る。

「ほんとだ!」

と高橋先生を見つける詩穂先輩。僕も見つけた。

高橋先生は授業で提出したノートを足元が見えないくらいを持っていた。

僕の予想では、このまま、バナナとかで転びそうな気がした。

しかも先生が歩いているのは床がツルツルしている。バナナがなくても転びそうだ。

「あ、猿だよ」

と詩穂先輩が指をさす。

「ああ、山から下りてきたみたいだな」

と猿は先生の前を通り過ぎて行って、山の方に戻っていった。

僕は見間違いをしたかもしれない。今さっき、猿が黄色いものを落としていった気がする。

だが、僕は見間違いをしなかった。

その証拠に先生はその黄色いものを踏んで盛大に後ろに転んだ。

そのものと言うのが、空のレモンジュースの缶だった。

バナナではなかったのでよかった。

「これまた、盛大に転んだな」

と仁先輩が呆れる。

「僕、ちょっと行ってきます」

僕は自分が持っていた資料を仁先輩に預けて、先生のいるとこに向かった。

先生は落としたノートをすべて、拾い終えていた。

どうやら、僕には用はなかったみたいだ。そう思いたかった。

先生はノートを持ち、歩き始めた。

そして、また同じ缶を踏んで後ろに転びそうになった。僕は急いで、先生の体を支えた。

いや、間に合わない事を確信したので僕は先生の後ろに滑り込み、先生のマットになった。

もちろん、そのおかげで先生は無傷だった。

だが、僕は先生が転んだときに宙に舞ったノートが僕の頭に直撃する。

「いった」

僕はそれだけ、言った。

「いたたた。あれ、吉田君⁉あ、ごめんなさい」

先生は慌てて、立ち上がり、後ずさりながら頭を下げた。そのおかげで、先生はもう一度、缶を踏む羽目になった。今度はちゃんと先生の体を支えることが出来た。

「またしても、本当にごめんなさい!」

と何度も謝る先生。

「先生、僕は謝れるより、感謝される方が嬉しいです」

僕は先生自身の精神ダメージを減らすためにそう言った。

「あ、ありがとう。吉田君」

先生は僕に感謝の言葉を言う。

「はい、どういたしまして」

「あ!」

先生は慌て僕のそばから離れる。僕は今度こそ先生が転ばないように缶を拾う。

「先生、そのノートどこに持っていくんですか?」

僕は先生に聞く。

「職員室だけど」

一番近いゴミ箱と真逆の方だ。

ゴミ箱はここから充分見えてはいるが一〇mある。

僕は缶を思いい切り蹴った。

「ちょっ、ごみはゴミ箱に!吉田君!」

先生は僕を叱る。だから、僕は

「ごみはゴミ箱に、ちゃんと蹴りましたよ」

僕は缶を蹴った方を指さす。

「え?」

先生は僕が指さした方を見る。

その光景は、一般人には驚きの光景だろう。

その光景は、缶ごみのごみ箱、穴は缶が余裕が入るくらいだが、ここからの距離だとほぼ、不可能な穴の大きさが二つ。だが、一つは角度がここからじゃ見えない。

だが、缶はここ、外廊下の柱に当たって、缶のごみ箱に見事IN(入る)する。しかも、ここから、見えない方の穴。

これは僕が普段、ゲームをしている、モ〇〇〇で鍛え上げた数学力の力だ。

僕は数学は得意だ。

「ね、ちゃんとゴミ箱に蹴りましとよ。それより、ノートを運ぶの、手伝います」

僕はそう言って、ノートを拾う。

先生はあまりの光景に口を大きく開けて、漠然としていた。

「先生、速く」

僕は先生を呼ぶが返事がない。

「先生、速くしてください」

先生はやっと、こっちの世界に帰ってきたような顔になり、

「あ、ごごご、ごめんなさい」

先生は慌ててノートを拾い集める。

ノートを全部広い、集めることが出来た僕と先生は職員室に向かった。

「ありがとうね。手伝てくれて。やっぱり、吉田君は良い子かもね」

先生は僕に言う。

先生のさっきの言い方だと、先生は僕を最初のころ、悪い子だと認識していたのか。少し、傷つく。でも、実際、僕は修正部。問題児たちが集まる、問題児の巣窟の地で、部活をしているのだ。

そう見られても仕方がないのだ。

「先生、僕をどう見ても構いませんが、仮部員の詩織は悪く見ないでくださいよ。詩織は僕と違って、問題児なんかじゃありませんよ」

僕は先生に忠告をした。

なのに先生はクスクス笑っている。

「あ、ごめんね。その事なら、大丈夫、吉田君ですらオール五なのに、詩織ちゃんが五以下を取るとは思わないよ。いくら、問題児でも。

吉田君は妹思いですね」

先生は何か嬉しそうに言った。

「どうでしょうか。僕はもしかしたら、詩織が嫌いかもしれません。才能に恵まれた詩織。なんの才能もない僕。おまけに僕には感情がない。詩織は普通の人じゃない。僕も。だけど、意味が違う。

僕には夢すらないのです。詩織は医者になる夢があります。僕も詩織も選択肢は無限にあるのに、僕には何もないのです。だから、僕は詩織が嫌いかもしれません」

「なら、唱ちゃんも嫌い?唱ちゃんも夢はある。あの子も才能に恵まれた子よ。唱ちゃんは嫌い?」

先生は僕の目を優しく見て言う。

「どうでしょう。僕に感情があったら、もしかしら、嫌いだったかもしれません。逆に、感情があったら、好きになっているかもしれません

どちらかは、感情がある僕がいないと分かりません」

僕は快晴の空を見ながら、そう言った。

「吉田君、進路調査票、まだ、提出してないよね。提出期限はもう過ぎているけど、これは担任として、減点が必要かもしれませんね」

「さっき、僕が将来の事を語ったのに、進路調査票を求めるなんて、先生は鬼ですね」

僕は冗談っぽく言う。

「先生は人間です」

先生は自信満々に言う。

「天然ですけどね」

僕はツッコミを入れる。

「そこは今は関係ないでしょ!」

と先生が言うので僕は笑う。

「でもね、吉田君」

先生は急に真剣にでも、優しい声で話す。

「今の吉田君は昔の、それこそ吉田君と同じ時期に私も将来に迷っていたのよ。将来は自分の人生だから、考えて決めないとって思って、結局何も決まらないままだったの。でもね、私には才能に恵まれた妹がいるの。その子は私に言ったの。私はお姉ちゃんみたいな普通が良かったって。私はもう、激怒だよ。でも、その後、思ったの。才能何て、ただの飾りなの。才能何てなくても、努力さえすれば、人生は最高なんだよ」

先生はニカッと笑った。そして、続けて先生は言う。

「才能何て必要ない。ただ好きな事をすることが大事なんだよ。好きな事をして、頑張る。それが、才能だよ」

好きな事をして、頑張る。‥‥‥それが…才能‥‥‥。

「失敗はしていい。失敗をしない、才能何て存在しない。失敗を重ねて、磨き上げれば、それはもう立派な才能だよ」

僕は先生を見る。僕より小柄でか弱い先生。僕より沢山の苦の経験をしてきた先生。心は傷後、だらけだろう。でも、先生をやっている。

先生は先生が好きで、才能を掴んだ。

なんか、救われた‥‥‥。

「先生は先生ですね」

僕がそう言いうと先生は僕の前に立って、一番の笑顔を僕にみせて

「もちろんです。好きですから‥‥‥先生と言う物が」

初めて先生を女の人と感じた笑顔だ。

だが、僕はこの時先生を見ていてよかった。

「先生!後ろ!段差があります!」

僕が声を掛けても先生は後ろに歩くのをやめなかったので僕は片手でノートを持ち、先生を抱きしめるように先生を引っ張る。

「大丈夫ですか?」

僕は先生に尋ねる。

先生は涙目になって

「本当に今日は付いてません」

「これで四回目です」

僕は先生が転んだ、転びかけた回数を言う。

「ありがとう。吉田君。吉田君がいなかったらもう私、ダメでした」

と落ち込む先生。

「先生は強いのですね」

「はい?」

先生は僕の発言に理解が出来なかったみたいだった。

「先生はどんなに心が傷だらけになっても今も頑張っています。先生の心は傷後だらけのはずです。だから先生は強いです。僕も強くなりたいです」

僕は先生を慰めるように言う。

「私はね、弱虫だよ。確かに私の心は傷後だらけ、でも、私を応援してくれる人がいます。私を尊敬してくれる人がいます。私を助けてくれる人がいます。私を愛してくれる人がいます。どれかしら、当てはまる人がいます。私を思ってくれる人がいるから、私は私として立っていられるのですよ。だから、私は決して強くないです。強くなくていいともいます。私は私を思う人のためにいるだけです。それが一番です」

先生は僕に抱きしめられたまま、そういう。

「確かに、僕は先生を応援してます。尊敬してます。先生を助けを求めるなら、助けます。僕は先生の事を思っていますよ。だから、これからも先生は先生でいてください」

僕は先生に言う。

「私は教師を辞める気はありませんよ」

「あ、ちなみに僕は先生を愛してますよ」

「ふぇ⁉」

先生は変な声を上げる。

「先生として」

僕は言葉を付けたす。

「この状態でそんなことを言われると本気にしてしまうじゃないですか!」

「この状態とは?」

僕は先生をからかい続ける。

「ハグです。ハグされている状…た…い…で‥‥‥」

先生は僕から距離を取ろとするが僕は離さなかった。

「ちょっと吉田君離してください」

「いや、離したら先生、そこの段差で転ぶでしょ」

僕はこれから起きるだろう事を先生に言う。そして、僕はくるりと一八〇度回転して、先生を放す。

「私のためにしてくれるのは構いませんが、もうちょっと別の方法があるでしょ!」

先生は顔を赤くして、僕を怒る。

「すいません。その方法しか思いつかなかったので。でも‥‥‥」

僕は先生のようにニカッと笑って

「先生として愛しているのは本当ですよ。これからも、よろしくお願いします」

僕は先生に改めて言う。

「本当にやめてください」

「先生、顔が赤いですよ」

僕は先生の顔の状態を簡単に言う。先生は

「仕方がないでしょ。初めてだったんだから!」

と先生は大声で叫ぶ。

そして、たまたま、通りかかった女子生徒がすごく反応していた。

「ヒュー、先生大胆」

と陰から、仁先輩が言う。

そして、僕は思った。

終わった‥‥‥と。


「本当にごめんなさい」

先生は僕に謝る。

「なぜ、先生も謝るんですか。先生は自爆をした被害者です。僕はその自爆を先生の天然なのを忘れて、踏ませてしまって僕も巻き沿いを食らう、被害者。ただそれだけの話です」

僕は先生を慰めるふりをして、微妙に先生を傷つけた。

「そうだね。ありがとう吉田君」

どうやら、完全に僕は空振りをしてしまったそうだ。

「いや~、良いものを見れたよ」

と満足そうに楽しそうな仁先輩に詩穂先輩。何かに気に食わなそうな清水。

「でも、ちゃんと誤解は解けて、いたんだからいいじゃないか」

と伊藤先輩に救いの言葉をもらった。

でも、僕はその言葉を受け止める事は出来なかった。なんせ、これからあの事件の真相を伊藤先輩に話すからだ。

それに誰かがここに来る音がした。盛大な足音を立てながらこちらに向かってくる。そして、職員室のドアが盛大に開く。

「失礼します!あ、いた!お兄ちゃん!」

と詩織が僕のところ、高橋先生のディスクに向かって、歩いてきた。

他の教師たちも何の騒ぎかと詩織を注目する。

そして、詩織は高橋先生の机をバン!と叩き

「お兄ちゃん!高橋先生の初めてを奪ったって本当ですか⁉」

と大声で聞いてきた。

「ふぇ⁉」

奪われたと言われている本人は変な声を上げ、僕は怒り、または呆れが込み上げている。多分。

近くで熱い緑茶を飲んでいた、老人の先生が

「ぶーーっ、ごほん、ごほん、ごっほん!」

と飲もうとした緑茶を喉に通る前に吹き出し、むせていた。

少し、奥の若い男性教師、体育の担当の名前は出さないが、その先生は

「う、うば、うば、うばった⁉」

と驚きの声を上げる。

その隣の剥げている、中年男性教師は

「ほう、さすが修正部だ」

と関心をしていた。関心はされたくなかった。今は‥‥‥

その奥の机にいる、教頭が

「じょ、女性教師のは、初めてを男子高校生がう、うばうなんて初めて聞いたぞ‼」

と僕に指をさす。

女性教師軍は

「いつか、やると思っていたわ」

「よね。だって修正部と一緒にいるなんて、おかしいと思うわ」

「それに昨日、高橋先生、吉田君のお宅で泊っていくのを目撃した人がいたのよ」

「えー、それって女性教師としてどうなの?」

と次々と無実の先生を愚痴る。先生は焦り、混乱が続き、誤解が解けない一方だ。

そして、高橋先生を狙っていた、男性教師からは

「ま、まだ、あれとは決まってない」

「そ、そうだ。高橋先生に限って、そんな」

「そうだよ、きっと何かの誤解だ」

と自分の心を気づ付け異様に、少しの心のかすり傷をなめあっている。

「どうなんですか⁉奪ったのですか!先生の処女を‼」

はい、先生を狙っていた、先生たちは深い、重傷を受け、他の女性教師と男性教師たちが声をそろえて

「「「「「処女⁉」」」」」

と声を上げる。

そして、それを見ている、仁先輩と伊藤先輩たちはクスクスを大笑いをするのを我慢していた。

だが、我慢が聞かず

「だははははあああ、ああ、ははははは」

「わ、わ、笑うな仁。こ、こ、こら、あはははははははは」

と仁先輩を止めることもできず、さらに笑う伊藤先輩。仁先輩は笑うのをやめる気もなくて、ずっと爆笑している。それにつられて、伊藤先輩も爆笑。

僕は完全に怒りに包まれた。そして

「変な方向に誤解をすんじゃねえ!!!この、変態教師ども!!!」

と思いっきり叫んだ。世界中の人に聞こえるくらい本気で叫んだ。

職員室はシーンとなる。爆笑していた伊藤先輩は静かになる。

だが、静かさはその一瞬だけだった。仁先輩が爆笑し始めた。

先生はポカンとしていた。僕も初めてだ。こんなに大声を出したの‥‥‥。

ダメだ。視界がゆがんできた。

完全にすべての気力を使い切ったみたいだ。

僕の体を気絶をするのを選んだみたいだ。

「吉田君!よし…く…よ‥‥く‥‥よ‥‥‥」

先生の先生の顔を見れたのは二、三秒だけだった。

その後、先生の声が徐々に聞こえなくなっていく。


僕は目が覚めた。夢の中で、シャッチとチップたちが訴えてきた。

僕は慌てて、体を起こす。その瞬間、激しい激痛が頭の中で走る。

「今は寝ていろ」

声がした。この声は

「伊藤先輩」

「今、仁と詩穂、それと清水が誤解を解いている」

伊藤先輩はそう言った。

だが、事態は急変することになる。

誰かの足音が近づいてくる。

保健室のドアが盛大に開く。

「春樹、京子が‥‥‥」

清水だ。清水が息を切らしていた。

「やっぱり、シャッチとチップは正しかった‥‥‥」

「それは、あの犬とカワウソの事か?」

伊藤先輩は今朝、見た僕のペットたちを思い出したみたいだ。

「そうです。シャッチとチップが高橋先生がこの高校を出ていく、つもりだって言っていたんだ」

僕はベットから体を起こす。

「おい、どうする気だ」

伊藤先輩は僕を止めようとする気だろう。

「決まってます。高橋先生を止めます」

「やめておけ。お前には何もでき――

「できない事なんてないんです!僕には僕が出来ることをします。それ先生のためではありません。‥‥‥僕が僕でいるためなんです」

伊藤先輩はそれ以上何も言わなかった。

僕は床に立ったが二、三歩で、床に倒れてしまった。

「おい、やめておけ!」

「大丈夫です!」

僕は伊藤先輩が伸ばしてくれた手を払う。

僕は立ち上がった。足はガクガク震える。僕はいつも持ち歩いている、サバイバルナイフで太ももを切った。

「・・・・っう!」

「おい、何している!」

伊藤先輩が声を僕にかけても僕はもう片方の太ももを切る。

切ると言っても、傷は浅い。血は出ている。太ももから床に向かって血は流れる。僕は保健室の包帯を両足に巻く。

足の震えは無くなり、走ることが出来るくらい、足に力が入るようになった。

「京子、別棟に行った。多分校長室」

僕は保健室を出て、窓をの外を見た。

岸高には、保健室が三つある。そのうち一つが二階にある。校長室も二階だ。

「おい、ここからじゃ、校長室なんて見えない。三〇mくらいしかないが見ればわかるだろ、校舎で隠れて見えない!」

「お兄ちゃん!」

詩織が僕を呼ぶ。

「おい、なに

「伊藤先輩静かに!」

詩織が伊藤先輩を黙らした。

「お兄ちゃんは普段は人間の視力で二・〇だけど、集中すると計った事はないですが五・〇は超えるんです」

詩織が僕の代わりに説明をしてくれた。

僕は、自分の目がおかしくなるのを感じる。しっかりとした立体の校舎がゆがんで見えてくるが、逆に遠い距離が見えるようになった。

僕は窓から見える校長室とかぶさる、校舎の窓を見た。その窓越しには教室の窓、そして、外側の窓、そして、校長室の窓だ。

高橋先生と校長、教頭。あと教師が二人。

「お兄ちゃん行って。私たちはあとで行く」

僕は

「ありがとう」

と詩織に行って、全速力で走る。 


       **********


お兄ちゃんは全速力で走っていった。

「あいつ、校長室、見えたのか?」

「見えたでしょうね」

「鹿ね」

と私の後に清水さんが言う。

「鹿?」

理解が出来ていない伊藤先輩。

「私たちも行きましょう」

私はそう言って、お兄ちゃんの後を追う。

「お兄ちゃんは、さっき、鹿になったんです。目だけ」

私は理解が出来ていない、伊藤先輩のために説明を始める。

「それって、天敵から身を守るために目が横についていて、遠距離が見えるってやつか?」

伊藤先輩が知っている知識を言う。

「そういう事です。飛び降ります」

お兄ちゃんは窓から飛び降りた。

「おい、ここ二階だぞ」

「二階ぐらいでけがをするような生物ではありませんよ。人間は」

私はお兄ちゃんが飛び降りたところから、窓に足をかけて、蹴った。

私の体は宙に舞い、地面に向かって落ちる。

その後に、清水さんと伊藤先輩が落ちてくる。

「清水さん、スパッツくらいはいてください」

と落ちるときにパンツ一枚なのに気が付いたので私は言った。

私はお兄ちゃんを追う。

「うわあああっと、ほんとだ。着地で来た。これから購買戦争に使おっと」

と新しい技を習得した伊藤先輩は何か嬉しそうだ。

私たちがお兄ちゃんを追っていたが、お兄ちゃんとの差は八m以上離れていた。

校長室の真下。仁先輩がいた。仁先輩はバレーのレシーブの構えをした。

先輩の手にお兄ちゃんは飛び込み、仁先輩はそのまま、お兄ちゃんを持ち上げる。

お兄ちゃんを仁先輩の手を蹴る。

パッリーン!

とお兄ちゃんは校長室の窓を割って入った。

「あそこ二階だぞ」

伊藤先輩は驚きの声を上げる。

「今のはなんだろう」

「あれは仁先輩が校長室までお兄ちゃんを飛ばして、お兄ちゃんは仁先輩を踏み台に飛んだのです」

私は清水さんに言う。

「俺たちは階段から行くぞ!」

仁先輩が階段の方をさす。

私たちは急いで、校長室に向かった。

校長室まで三〇秒もかからなかったが、すでに話し合いは始まっていた。

校長室のドアを仁先輩が開けた。

「何なんだ?」

伊藤先輩は声を漏らす。伊藤先輩も感じたみたいだ。いや、この場にいる全員が感じているのだろう。

お兄ちゃんからにじみ出ている、威圧に殺気が重なったものを。

「何なんだあいつは」

伊藤先輩は言う。

「ライオンね」

「正解です。このまま、説明しますね。お兄ちゃんの事」

私は伊藤先輩だけに言った。

お兄ちゃんの事をしらないのは、ここにいる教師と伊藤先輩だけだからだ。

「お兄ちゃんは小さいときから生物が好きだったんです。お兄ちゃんは生物を飼うには、生物の気持ちが理解できないといけないと思ったそうです。そして、お兄ちゃんは実際に野生の動物と同じ環境で一緒に過ごしたんです。そして、お兄ちゃんは、動物の感情が分かるようになった。でも、分かるのは一緒に過ごした動物のみ。だから、お兄ちゃんは世界を回ったの。

そして、サバンナでライオンの観察をしていた時、お兄ちゃんは同行していた、サバンナの管理人の人を無視をして、一頭の雄のライオンに近づいたんです。そして、お兄ちゃんは言った。僕はこのライオンと日本に帰るまで一緒にいる、と」

「おい、ライオンって、それ野生だろ。襲われなかったのか?」

「それがお兄ちゃんだけ襲わなかったの。そして、管理人は許可を出した」

「おい、それって国としてやばいことじゃないか?ライオンと人間を同じ環境に置くなんて」

伊藤先輩は焦っている様子を見せる。

「だけど、その管理人は思ったのです。お兄ちゃんが近づいた雄のライオンはメスの群れと一緒に過ごすのですよ。しかも群れのリーダーがいながら」

「それはライオン界では希少ね」

清水さんが感心しているのかしていないのかよく分からない複雑の状態で言う。

「そう、だからお兄ちゃんをその環境に入れることによって、何か分かるかもしれないと。そして、お兄ちゃんはランオンの感情が分かるようになり、管理人が知りたかった、真実も知ることが出来た。そして、日本に帰る少し前に、お兄ちゃんは行ったの。半年後にAのグループのメスとCのグループのメスと群れで過ごし、子供もできると言ったの。もちろん、管理人は信じなかった。なんせ、その雄ライオンは性器がないから。

だけど、半年後。その管理人と関係者がわざわざ、サバンナから前に住んでいた家に来たの。

理由はただ、一つ。お兄ちゃんが予言した通りなったから。

そして、その管理人はどうして、そのことが分かったのか、お兄ちゃんに聞いたの。お兄ちゃんは、そのライオンを見た時に、その風景が見えたから、と言ったの。

つまり感情が分かる、動物の種類は、目を見ればその動物の未来が分かるようになったの。

それだけではなく、お兄ちゃん自身、その動物と同じようになれるようになったの。

だから、お兄ちゃんから、感じるものは、さっき話した、雄ライオンの威圧。

それに、お兄ちゃん自身の殺気なんです」

私は六割を終えることが出来た。

「そんなの、化け物じゃないか」

伊藤が恐れるように言う。

「ここからは仁先輩にも話していない話です。そう、伊藤先輩の言う通り他人から見たら化け物です。だから、お兄ちゃんは、いろんな国から、命を狙われるようになった。

そして、お兄ちゃんは死んだ」

私は言う。

「は、でも、今、あいつはそこにいるじゃないか!」

「まさか、戸籍上は春樹後輩は死んでしまっているのではないか?」

と顔を真っ青にして、言う仁先輩。

「そうです。お兄ちゃんは戸籍上死んでしまった。そして、我が家には吉田春樹と言う、私のお兄ちゃん。つまり、お兄ちゃんの弟を戸籍に作ったの」

「意味が分からない」

少し、難しい言い方をしてしまった。

「戸籍上死んでしまったのは、一番上の吉田圭介です。お兄ちゃんは圭介から、春樹に戸籍を変えたのです。私のお父さんの友達が総務省をやっていて、協力をしてもらったの。やがて、お兄ちゃんみたいな人間は今は世界で一〇〇人くらい存在するようになった。そして、圭介お兄ちゃんの話題は世界から、消えた。そして、圭介お兄ちゃんは吉田春樹として今まで、過ごしてきたの」

私は全てを話し終えた。

「もしかして、部屋が三つあるのは、それは圭介君の部屋なのではないか?」

仁先輩が私に聞く。

「そうです。お兄ちゃんは初めてもらった、誕生日プレゼントは忘れたくない。と言って、春樹の部屋を作ったの」

そして、みんなは黙り込んだ。

今はお兄ちゃんの罵声だけが、この部屋に響いている。


            **********


僕は仁先輩のお陰で、校長室に最短コースで来ることが出来た。

「何をしている!」

二年の体育担当の三浦先生が叫ぶが気にせずに

「高橋先生。ここを出ていく気ですか?」

僕は先生に尋ねるが先生は黙り込んだ。

「当たり前だ。教師と生徒が、それ以上の関係になるのは禁止だからだ」

教頭が言う。

「だから、誤解だって、言ってるだろ」

僕は声を荒くして言った。

そして、僕は誤解をする教師たちに殺気を出した。

あと、ライオンが群れを守るときに使う、威圧。

ライオンは威圧だけで、群れの外のライオンを追い払う事がある。

それはティムが教えてくれた。

教師たちは僕の殺気を感じて、黙り込む。

「それでも、追い出すのか?」

僕は尋ねる。

その時、ちょうど、校長室のドアが開く。

仁先輩たちだ。

「当たり前だ!誤解など関係ない!」

「調べたら分かる事だろ!誤解か誤解でないくらい。それで誤解なのに、それで傷つけられるこっちの目を考えろ!」

僕は叫ぶ。僕はライオンで言うと牙をむきだしている状態だ。

「そんなの物、そんな、疑われるようなことをすのが、悪い!」

まだ、言い張る教頭。

「は?ふざけるな‥‥‥今回は主語がなくて、誤解が生じた。ただそれだけだろ!それで、なんで先生はここを出て行かないといけないんだよ!」

「吉田君、もういいよ」

先生は僕は止める。

「先生はよくても、僕はよくないんです。僕はそういう人間ですから」

「ほら、今だって、それ以上の関係のようなことをしているではないか!」

教頭は僕たちをさす。僕は教頭を睨む。

後ろにいる、詩織たちは僕の事をすべて知ったみたいだ。みんな、黙り込んでいる。

僕は教頭に指さし。

「カラスに襲われたくなかったら、伏せろ」

僕は言う。

「今、そんな事関係ない!」

教頭は僕に言う。僕は深々とため息をつく。

その後、僕がぶち破った窓から一羽のカラスが教頭の剥げた頭をつつく、そして、また窓から二匹入ってきた。

「いた、痛い。おい、吉田、お前の仕業だな!今すぐやめろ」

「知りませんよ。僕はカラスは飼っていません。野生ですよ」

僕は呆れて言う。

「嘘をつくな!」

「はあ、お前たち家に帰れ」

僕はカラスに言う。だが、カラスは一向につつくのをやめない。

「おい、ちゃんと指示しろ!」

「吉田君はカラスは飼っていないのは事実です。吉田君の家族票を見てください。吉田君はペットを家族とみています。すべてのペットの名前を書いてあります。家庭訪問でも、お母さんから書いてあるのは本当だと言っていました!」

先生は僕の証言を証明してくれた。

僕は小さなガラスの破片を拾う。

「教頭先生。動かないでくださいよ。‥‥‥おい、カラスども、人を襲うのは勝手だが、僕の前でするな」

僕はそう言って、カラスに向かって、拾ったガラスが一匹のカラスの羽の隙間を通り、カラスは無傷。だが、襲われていると感じたカラスは窓から逃げて行った。

「これで、邪魔者はいなくなりました。もう一度に聞く。高橋先生をここから、追い出す気ですか?」

僕は殺気を本気で教頭にぶつける。教頭は多少戸惑うが

「ああ、そんなもん変わるわけがない!」

残念だ。本当に残念だ。

「残念です。気が変わっていたら、訴えるつもりはなかったのに‥‥‥。

教頭先生、僕はこの事を教育員会に言います。もし、教育員会が動かない場合は裁判ですね」

僕は言う。教頭は焦り始めた。

「ふざけるな!たかが子供が、大人の事情に手出ししよって!」

「ふざけているのはそっちだろ!」

突然、仁先輩が言った。僕の事を知っておいて、僕の見方についてくれた。

「大人しく、聞いていれば。バカげたことを言って。自分が不利な状態になったら、今度は俺たちをこの話から除外をしようとする。最低な人間だな!」

仁先輩は続けて教頭に言う。

僕は、てっきり、惹かれてしまったと思っていたけど、そうではなかった。

「春樹、教育員会に言わなくていい。裁判をしたらいい」

仁先輩は真剣で本気で言った。殺気も混じっていた。

「いいね。裁判!私も出るよ!まあ、勝ち目は最初から見えているけどね!」

と勝ち宣言をする詩穂先輩。

「俺も、証人になるぜ。一様関係者だからな」

と胸を張る、伊藤先輩。この人は悪なのか間際らしい人だ。

「私も、春樹の味方」

不安しかない清水も言う。

「私はもちろん、お兄ちゃんの見方だよ。先走ったのは私だったし」

と誤解を生じた原因の詩織が僕の味方になった。

このメンバーだと勝ちしか、見えない。

「それに、お兄ちゃんは血の繋がりのある人とはそんなことしないよ」

「は?」

教頭は間抜けな顔をする。

説明が遅れました。僕と先生は血の繋がりがあります。少し遠い、従姉です。そして、その妹が清水だ。

苗字が違うのは親が離婚した。ただ、それだけだ。

だが、清水は血の繋がりが遠すぎて、従妹とは呼べなくなった。 

だから、清水とは結婚が出来るということだ。

まあ、しないだろうけど。

「はははは‥‥‥」

と校長が笑い始める。

「こ、校長。どうかしましたか」

教頭は校長に尋ねる。

「ああ、教頭先生。あなたはここから、出て行ってもらいます」

「な⁉なぜですか」

教頭は今よりさらに焦り始める。

「誤解はもう解けたのにも関わらず、あなたは優秀な高橋先生を追い出そうとした。その理由は個人の事情だろ。そんな、人間はうちには必要ない。

今すぐ出て行きなさい」

「そ、そんな。なぜ、なぜですか?」

「おや、心、あたりがないのですか?」

校長先生は教頭を睨む。                  

「それに、教頭先生。いや、鈴木栄次郎さん。あなたが行くのは『警察』だろ」

僕はニカッと笑いながら、教頭に言う。

「貴方は、陰で生徒に暴力や、嘘の情報を流していた。それは教師として、どうかと思うけどな」

仁先輩が嫌味のように言う。

「そうだ!そうだ!」

「仁の言う通り」

そして、僕を中心に修正部員、仮部員、顧問、伊藤が並んで

「さあ、罪を償え」

僕が言ったあと

「「「「体育倉庫密室事件の真犯人!」」」」

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