第4話

「修正部会議を始めます!」

今回開く会議は、僕の依頼なので僕が司会をすることになっている。

「司会は普通科二年、吉田春樹が今回の会議を進行させていただきます」

僕は司会者らしく堂々と言った。

「では、早速本題に入っていきます。今回の依頼、事件は密室事件です。ですが、すでに密室は解決されたので、別のProblem(問題)、野球部員の斎藤藍斗がなぜ、体育倉庫で気絶をしていたのか?です。  

この事について、聞き込みを行いました。まず、僕と清水が調べたことを説明させてもらいます」

僕はそう言って、部屋の電気を消した。そして、ホワイトボードにはスクリーンが映し出されている。

ホワイトボードには『斎藤藍斗はなぜ、体育倉庫に倒れていたのか? 野球部、テニス部編』と映し出された。僕はあらかじめ準備していた、プレゼンアプリで作ったものを見せた。そして、無線で操作できる、機械で僕はボタンを押した。

スクリーンは次のページに進んだ。

「まず、僕が聞き込みをした。野球部からです。野球部の人から聞くには、今回の事件は三年の伊藤が関係がありそうでした。どうやら、伊藤と斎藤は元は仲がいい関係だった。だが、ある日を境に、仲が悪くなり、伊藤は斎藤のいないところで、悪口を言うようになった。実際の目撃情報は多数ありました」

僕は喋りながら、ボタンを押す。最初は真っ白だったホワイトボードには、ボタンを押すごとに文字が浮かんでくる。

「しかも、斎藤は伊藤にボールを当てられたことがあるそうです。斎藤に当たった、ボールは公式のボールでした。だから、痣が出来ているでしょう。

しかし、斎藤自身は、伊藤とは最初から仲が良くないと言っていました。

悪口も言われたことがないとも言っていました」

「つまり、斎藤は嘘をついた、ってことか?」

と仁先輩が僕に聞いた。僕は

「はい、そういう事です」

はっきりと答えた。

その次にPC越しから

『嘘という証拠は』

と坂本が質問をする。

「証拠は目の動きです。斎藤は嘘をつくと、右に二回、下に一回、微妙ですが動かす癖があった事です。それと」

僕は清水に目配せをした。清水はコクリと頷き、さっきまで、座っていた彼女は立ち上がり

「私も彼が嘘をついているのが分かった。彼の平常値の脈は平均六二から、嘘をついていた時は一一四まで上昇した。それに手汗や手も震えていた」

「へえ、人を見ただけで、そんなことが分かるんだ、唱後輩も」

「うん」

仁先輩は彼女に感心する。彼女は仁先輩の関心を素直に受け止め、頷きながら言った。

『なら、清水。春樹の身長、体重、今の脈の平均を言ってくれ。同様に梶野先輩も』

坂本は彼女を疑っているのだろう。

「わかった」

彼女は頷いて僕を見た。

「春樹は身長一六〇・三cm、体重は四一・七㎏、今の平均脈は七四。次に仁。仁の身長は一七四・八cm、体重五三・六㎏。今の平均の脈は六八.どう?」

とPCの画面の中にいる坂本に彼女は聞く。

「春樹、梶野先輩どうなんだ」

「僕はあっている。〇・一cmも〇・一㎏ずれてない。脈は分からないが、多分あっている。

だけど、仁さんは違うだろ。その身長で五〇㎏代前半なんておかしいだろ」

僕は彼女を指摘する。

『どうなんですか?梶野先輩』

坂本は梶野先輩に聞く。僕は仁先輩を見た。僕は息を切らした。

なぜなら、仁先輩が今までにないくらいの申告の顔をしていた。

まさか、まさか本当に……

「こりゃあ、驚いた。全て合っている。体重も春樹と同じで〇・一cmも〇・一㎏ずれがない。普通は間違えられるのになんでわかったんだ?」

何てことだ。彼女が持っているのは間違いなく本物だ。

「仁は身長は高い。だけど、太ってはいない。だから、四〇から六〇kgなのはすぐに分かる。仁は身長の割に腕、ふくらはぎ、太ももこれらが細い。春樹よりかは太いのは分かる。だから、五〇㎏より以上、五五㎏以下なのが分かる。あとは仁は腹筋が割れているとおもう、腕もほとんど筋肉で埋め尽くされてそうだった。だから、適度な筋トレはしているはず。だから体脂肪率は七%なのが分かった。あとは骨の量を合わせると、五三・六㎏なのが分かった」

彼女は説明を終えて、満足の顔をしている。

「言っていることが人間離れしている」

珍しく、仁先輩が唖然としていた。

『清水、何をしても構わない。春樹の脈を言えるとこまで言ってくれ』

「わかったわ、春樹、私を見て」

彼女の言う通り、僕は彼女を見る。これは普通の男子なら、照れて、脈が安定しないだろうな。

「いくよ」

『ああ、いつでも構わん』

僕は彼女を見ながら、唾液をゴクリとを飲み込んだ。

「七六・一六七八三五二二九八一二四〇八九〇四六二一一七六〇〇三一四

『待て!待て!もういい!』

止まりそうにない彼女を慌てて坂本を止める。

『清水、お前はあと何桁くらい言えるんだ?』

坂本の質問に彼女は

「あと五桁が最高」

『何をしてもいいと言ったのにただ、本人をしっかり見るだけで、そこまで分かるのは人間ではないぞ』

坂本、夢でも見ているかのような様子を見せた。

「坂本、結果どうなんだ?」

『あ、ああ。春樹と梶野先輩が付けている腕時計』

と坂本は僕と仁先輩の腕時計をさした。僕と仁先輩は自分の時計を見た。

確かこの時計って

『二人が付けている時計は僕があげた物だ。その時計は脈が計れる機能がある。脈は小数第六位まで計ることが事が出来る。結果的に言えば、その時計で計れるところまでは全部合っていた』

嘘だろ?僕は言葉を失う。こんなの、おかしいだろ。彼女がさっき言ったことが全て、正しいのなら、彼女は

「人間じゃないだろ」『人間ではない』

坂本と声が重なる。

「唱たん、ちょう凄い!私波がいたよ。発見したよ」

こんな時もいつも騒いでいる詩穂先輩。

「先輩にそんなことが出来るわけがないでしょ」

「できるよ」

「え?」

先輩は真面目の顔で言う。

「いくよ、今の後輩の脈は七五・一三四二六六七〇五四〇一三二二四五三六七八一三八七六四九八!どうだ。あってる?」

詩穂先輩はPCの坂本に聞く。

僕はまた、適当に近い数字を言っているだけだろう

『合っている……』

「は⁉」

僕はまた、言葉を失う。

「詩穂先輩、今度は仁さんに」

「春樹、詩穂が言っているのは本当だ。俺は詩穂と同レベルの人間を見て、驚いているだけだ」

「オーマイ、ゴット!」

今思い返してみれば、あの時、『唱後輩も』と言っていた。

もう、なぜ僕の周りにはこんな変人が集まるのだろう。

「他にもいるぞ。高橋先生もできるし。体育担当の山本先生もできるぞ」

そんなにできる人が居るなんて、初めて知ったよ。

「話を戻します。清水の能力は本物だと分かったところで、斎藤が嘘をついたことが証明できました。ここまで、何か質問等ありますか?」

僕はみんなに聞く。仁さんが手を挙げた

「どうぞ」

僕は仁さんの発言の許可を出した。

「質問ではないが、今から、俺が調べたことをすべて報告した方が良さそうだからしてもいいか?」

「わかりました」

「ありがとう」

仁先輩は清水のPCにささっていた僕のUSBを抜き、仁先輩のUSBをさした。

「これ、使ってください」

「おう、ありがとう」

と僕が使っていた、無線の操作機械を仁先輩は受け取った。

「まず、俺が調べた結果。ソフトボール部も佐々木さんと三年の木村と揉めてた事が分かった。そして、さっき春樹後輩が紹介してくれた、伊藤と木村は恋人関係でもあることが分かった」

僕は手を挙げた

「どうした?」

「それは僕も調べた結果。二人は結構、進んだ関係なのが分かっています」

僕は言いたくないが、これは言っておくべきことだと思ったから、言った。

「みたいだな。木村は一回、妊娠したことがあるみたいだ。もちろん、伊藤との子だ。その子供は……」

仁先輩は黙り込んだ。そりゃそうだ。こんな事誰も言いたくない。

『仕方がありませんよ梶野先輩。二人は俺らと同じ高校生です。続けてください』

坂本が話を変えるかのように言った。

言い方は少し酷い気がするが、でも坂本が言っているのは正しい。

「ああ。で、その後、木村の生活が一変した。いろいろあったから、ストレスがたまったんだろう。そして、木村はそのストレスを佐々木にぶつけている事も分かった」

「それはいつくらいからですか?」

僕は質問をする。この質問に対し仁先輩は

「伊藤が斎藤に陰口を言うようになったのと同じだな」

『多分それは偶然だろう』

PC越しから、坂本が言う。それは僕も同意だ。

「もしかしたら、今回の事件は本当に最初から仕込まれていたかもしれないな」

「だが、その証拠がない」

僕は仁先輩に続くように言った。

「私が聞いた事言っていい?」

手を挙げながら立ち上がる彼女。誰も反対などしない。

「ああ、頼む」

仁先輩が彼女に言う。彼女は仁先輩に言われ、頷いて。

「私はテニス部の女子に聞き込みをしたの」

と話し始めた。

「まず、伊藤は斎藤に暴力はしていないのは確かだった。けど、木村は佐々木に暴力を振るっていたことが分かった。目撃情報が多数あったわ。それに佐々木の体に微妙に痣が見えた。暴力は本当だと思う。けど、痣の位置が本人も届かないところで他人が付けるにはおかしい背中側の腰だった。それと後ろ太もも。これは私の推測だけど、たぶんボールが当たったんだと思う。だけど、木村が佐々木にボールを当てた以前に佐々木が体にボールが当たるところは誰も見たことがなかったみたい。

話は変わるけど、伊藤はつい最近母親が倒れたみたいで、下の弟と妹の面倒で剃画しくなったそうよ。だから、今日は部活に不参加だった。

それを手伝うために木村も部活も不参加だと聞いたわ。これは不確かな情報。

私が聞けた情報はここまで、何か質問はある?」

彼女は一人目の大人並みに、情報をまとめていた。

「いや、俺からは特にない。強いて言うなら、確認だけど伊藤の下の子たちは何歳くらいだ?」

「弟は小学二年生。妹は幼稚園年長さん。これは近所に住む、テニス部から聞いたことだから合っている」

「そうか、ありがとう」

そう言って仁先輩は考え込む。

「春樹は何かない?」

彼女は僕を見て、尋ねてくる。

「いや、僕はないよ」

僕は答える。彼女はがっかりした顔で

「そう」

と言った。

そして、僕は仁先輩と同じように考え込む。

だが、まったく何も分からない。

「みんな、生き詰まったら、休むのだ!そして、また考えるのだ!」

とさっきまで黙っていた詩穂先輩が騒ぎ始める。

「そうだな。一旦休憩にしよう」

仁先輩も顔を明るくして言った。

「わかりました」

僕はそう言って、さっきまで暗かった部屋に電気をつけた。部屋はLEDライトにより眩しいくらいに明るくなった。

「それより、唱後輩があそこまですごいとは驚いたよ」

仁先輩の言う通りだ。あんな、化け物ような事が出来るん何て……。

今の最新の機械でも小数第六位まで分かるとは……。昔は脈何て小数まで求めたりしないだろうに。なんでこんな時代になったんだ。

「でも、どうやったら、人を見たら脈何て分かるんですか」

僕は気になったので詩穂先輩と清水に聞いた。

「私は最初から出来たぞ!」

と当然のように言う先輩。

「詩穂は母親が元々、その能力と言うか才能と言うか、そういうのを持っていて、遺伝子で生まれた時から出来ていたんだ」

そこに仁先輩が詳しく教えてくれた。

「そうなんですね」

僕は詳しく説明してくれた仁先輩に少しの感謝を込めて言った。一方、清水は

「私はお父さんに教えてもらった」

「へえ、清水のお父さんってすごいんだな」

僕は清水の父親に感心した。

「違う。春樹のお父さんに教えてもらった」

「は?」

僕は彼女に何を言ったか聞き直すように言った。

「今、僕の父さんに教えてもらったって言った?」

「うん」

彼女は頷きながら言った。僕は頭が混乱してきた。

「いや、僕の父さんがそんな事、出来るわけが……」

「私はできるぞ」

と僕の後ろから声が聞こえる。

「うわっ‼父さん⁉」

嘘だろ。そんなの初めて聞いたぞ。てか、彼女はなんて速度で脈を計れるようになるなんて。それはそれで、凄い。

「私もできるよ!」

と父さんの後ろから、ひょいと顔を出す、詩織。

「詩織まで?」

「春樹は母さんに似ているからな。本当に親子の血が流れているのを感じるよ」

オーマイ、ゴット!僕の家族にいたよ。人間離れした人がいたよ。

それより、僕の周りはなぜ、こんな天才的な人たちが固まるのだ。

「春樹と、仁君はお風呂に入ってきな。それとも、うたくんとしほくんが先に入るかい?」

お父さんは僕たちに聞く。確かにご飯は食べたけど、お風呂はまだだったな。

「どうします?」

「私はどっちでもいいよ!」

「私も」

女子グループは全員どっちでも良い派。なら

「なら、俺たちが先に入るか。お父さん、お風呂いただかせてもらいます」

「そんなかしこまらんくて良い」

「なら、入りましょうか仁さん」

「そうさせてもらうよ。後輩」

「私も入る!」

とありえない発言をした詩穂先輩。僕は

「仁さん、変わりましょうか?」

「絶対にやめてくれ」

この、毎日、あっちの世界に行く仁先輩はどうして、詩穂先輩の時だけこんなに嫌がるのか僕は謎だった。僕は自分の服を持って、仁さんは父さんの服を借りて、一階に降りてきた。

「ていうか、俺ら二人で入ってこいと言えるほどの風呂が大きのだな」

「まあ、他より広く敷地を取ってますからね」

僕は呆れ気味に言った。

こんなに家が広いのは四割は僕が原因だ。動物を飼育するうえでスペースは広い方がいい。そして、前の家に不満を抱えた母さんが父さんに相談。そして、前、住んでいた家から、父さんが設計したこの家に住むことになった。そして、僕はここから近い高校、岸高に入学を決めた。

僕たちは脱衣所で服を脱いで風呂に入った。僕はお風呂のドアをガラガラと鳴らしながら開けた。

「聞いていたのより広い……ってもう!温泉じゃねえか!」

と仁先輩は叫ぶ。お風呂にいるせいで声が響く。

「風呂が二つあるなんて聞いたことないぞ」

仁先輩が言っているのは、人が入る風呂に動物を入れたくないと僕を含め家族はそう思っていたみたいなので、「何なら、お風呂二つに分ければいいじゃん!」となって二つになっている。

「泳げるぞ!」

今も興奮気味の先輩は声が高ぶっている。

「泳がないでくださいよ」

「多分、大丈夫だ」

と心配になる事を言う、先輩。そこは大丈夫と言い切ってくださいよ。

「いや~、お風呂がこんなに楽しいのは久しぶりだよ」

本当に楽しそうな先輩。

僕たちは髪の毛、体、顔を洗って、湯船につかった。

「はあ~、生き返る~」

僕はそう言った。その言葉とともに体の力と疲れが一気に抜けていく。

「へえ、春樹後輩も疲れるのだな」

「当たり前です。僕は感情がないだけで、感覚はあります」

「そうだった、そうだった」

適当に返事をする、仁先輩。

「なあ、そっちは誰が入るんだ?」

「入る人なら、いますよ。それに今、入っていますよ」

と二つあるうちの僕たちがいない方のお風呂を気にし始めた仁先輩。

「ん?何かいるのは分かるのだが……」

仁先輩は普段、眼鏡をかけている人だった。眼鏡がない今、しかも水の中の物を見ようとするのは難しい。それを理解した僕は

「出ておいで、シャッチ」

僕は名前を呼ぶ。

その瞬間、風呂から、ピョンと出てきた。それはカワウソのシャッチだ。

シャッチは体の毛についている水が気になるのか、ぶるぶると体を振るえるように速く右や左にねじる。それを数秒間繰り返した。

「おお、カワウソ!何カワウソだ?」

お風呂に誰が入っているのかやっと知ることが出来た仁先輩。

「コツメカワウソです。戻っていいよ」

僕はシャッチをお風呂に戻っていいように言った。シャッチは僕の「いいよ」を聞いた瞬間すぐにお風呂にジャバン!と勢いよく入っていって、ぐるぐる、お風呂の中を泳ぐ。

「さすが、春樹後輩。飼っている生き物のscaleが違うな」(スケール)

としっかりと英語を使う先輩はカワウソに感心している。

「シャッチは我が家のペットの中で五番目の子なんです。父さんが五番目の子だ。どでかく行こう!って言うから、頑張って、お年玉を貯めて、飼ったんです」

「愛されているねえ、シャッチは。俺もこんなご主人様に飼われたいよ」

と仁先輩は泳ぎ始める。僕も少し泳ぎ、顎と腕をお風呂の淵に乗せて、体を浮力で浮かした。

「あまり泳がないでくださいよ」

僕は先輩に言いながら言葉を続けた。

「先輩は今はそう思うかもしれない。でも、僕も人間です。全員が平等に愛情を注ぐことが出来ません。幸せかどうかは僕にはわかりません。ペットたちは幸せと言っているが、本当は裏では、辛いと言っているかもしれません。寂しいと思っているかもしれません。僕はこの子たちの飼い主です。この子たちをちゃんと最後まで育てて、幸せだと感じて行かせてあげる、義務があります。でも、僕はそれはできていないのかもしれません。飼いたい、飼いたいと、その場の気分で無責任に飼っていたことを今になるとよく分かります。分かっているからこそ、僕は義務を果たさなければならないんです」

僕は僕と同じ様に体を浮力で浮かし、それを顎を淵に乗せて顎だけで支えているシャッチを見た。今は幸せそうな顔をしていた。

「俺はそれさえ、分かっていれば充分だよ。それを理解をしている人は、自分を捨てたりしない。それが確信出来たら、俺は愛なんて少しでいいよ。それがペットとしての生きがいなのだから」

僕は先輩に慰められた。でも

「先輩、その言い方だと、前世がペットになりますよ」

僕は思ったことを言葉にした。

「そうだな!」

と仁先輩は高気な声で笑った。僕もつられて笑う。

僕は多分、この時は嬉しかったのだろう。

「それに、俺がペットで自分の言葉が通じて、不満があるなら、ちゃんと言うよ。ちゃんと言い合えるのが本当のペットと飼い主の関係だからな」

「それ、ちゃんと叱ることが出来るのが、本当の友達で…す……よ…ね」

僕は今何て言った?

そして、話は急転換して

「斎藤は伊藤を尊敬していた」

僕が不意に言った。仁先輩も多分不意に

「それに、伊藤は今年が最後の部活だ。だから、伊藤をかばっても……

「……おかしくない!」「おかしくない!」

声が重なった。でも今はそんなのどうでもいい。

「これだ!」「これです!」

僕と仁先輩は急いでお風呂から上がり、急いで服を着て、二階にいる三人の部屋のドアを開けて

「あ、お風呂長すぎだよ!二人とも」

「詩穂の言う通り」

「「それより、斎藤がなんで、体育倉庫で倒れたのか分かったかもしれない」」

二人のいう事を全く聞かずに、僕と仁先輩は同じことを同じタイミングでピッタリシンクロした。

「「本当⁉」」

女子チームもピッタリシンクロする。

「話は私たちがお風呂から、上がってからだよ!待っていて、唱たん、行こう」

と詩穂先輩は清水の手を引いて、お風呂に行った。

僕たちは二人が風呂に入っているうちに、別のプレゼンを作っていた。

そして、ちょうど完成した時に、二人はお風呂から上がっていた。

「あ……やめ……

と清水の僕には聞きたくない、嫌らしい声が聞こえた。

「おっまたせー!」

と勢いよくドアを開ける詩穂先輩。そこには目にしてはいけない光景となった。

「詩穂!なんでタオル一枚で来ているんだ⁉」

と仁先輩がいつもと違う様子を見せた。

俺は気が付いた。仁先輩は詩穂先輩が好きなんだろう。そして、誰だって、好きな人の下系の姿を見たら、混乱する。

「仁!焦りすぎ。見ろ後輩君を!平常心だぞ!」

詩穂先輩は僕を指さす。

「いや、春樹後輩は感情がないだけだ」

仁先輩は僕の心をグサッと刺さる事を言う。実際僕の心は仁先輩の言葉が突き刺さり、その音もしっかり聞きとれた。

「なら、PCを見ろ!さっきーは心があるぞ!平常心だぞ!」

と今度はPCの中にいる坂本をさす。詩穂先輩は坂本の事をいつも「さっきー」と呼んでいる。

それと、詩穂先輩のさっきの言い方は、仁先輩と同様、心にグサッと来る言葉だ。

『俺は女に興味がない。女の裸と男の裸の違いはなんだ?』

と坂本は言う。

「違いならあるよ!ほら、胸とか!む・ね・とか!」

と詩穂先輩は胸を強調しながら、体で示し始めた。

「もう、やめろ!目に毒だ!」

と仁先輩は限界が来たみたいで、部屋から出て行った。

「な、なな、な、な、なんで、唱後輩までタオル一枚なんだ!」

と部屋の外から仁先輩の声が響く。

僕は慌てて、部屋を出た。

「春樹、これは違うわ」

「何が違うんだ?」

僕は仁先輩の言う通り、タオル一枚で立っている清水が言い訳を言い始めた。

「詩穂が服を忘れて……あの…それで」

と焦り始める彼女

「詩穂先輩は分かった。けど、なんでお前は服を着ない?」

「詩穂に無理やり連れられた」

と彼女は言う。

「と、言っておりますが詩穂先輩。どうなんですか?」

僕は部屋の中にいる詩穂先輩に聞いた。

「え?唱たんも服なかったよ」

「なんで、お前まで服を忘れてんだ?まあ、理由はどうでもいい。清水、お前は部屋で着替えろ。僕は母さんから、詩穂先輩の服を借りてくる」

「わかったわ」

彼女はそう言って、部屋に入っていった。

僕は一階に下りて、リビングにいる母さんのところに行った。

「母さん、詩穂先輩に服を貸してあげて」

僕は言った。それに対し母さんは

「あら、私は詩織に貸してあげてって言ったんだけどね」

となんでだろうと疑問になる母さん。僕は

「わかった」

とだけ言って、二階に戻った。

ちなみに仁先輩は父さんの部屋で立てこもっている。

僕は自分の部屋を通りすぎ、隣の部屋、詩織の部屋の前に来た。僕は詩織の部屋をノックした。返事はない。カギはかかっていた。

「詩織ならまだ、お風呂」

とちゃんと服を着た彼女は言った。

「ありがとう」

僕はそれだけを彼女に言って、また一階に下りた。

僕は何回、階段を上り下りしたらいいのだろうか。

僕はそんなことを考えながら、お風呂に向かった。

僕は脱衣所にしおりの服があることを確認した。そして、カギだけを取ろうとしたとき、お風呂のドアが開いた。詩織がいた。

「あ、ちょうどいい、詩穂先輩の服を……

と僕が最後まで言う前に詩織が

「いやあああああああああ、お兄ちゃんのエッチ!」

とお風呂の中にある、桶として使っている、浅めのバケツを何個か投げてきた。

僕は最初の方はよけることが出来たが、脱衣所の床が濡れていたとこで足を滑らした。

「お兄ちゃんの!エッチ!」

とさっきと同じことを言いながら、お風呂にある、一番大きくて堅いバケツを両手で投げてきた。

見事、バケツは僕の頭に直撃。

「いってええ……」

僕の視界は真っ暗になる。


僕は目を覚ました。

「僕は何分間、眠っていた?」

さほど、時間がたっていない事は体の感覚から実感できた。

「五分も眠ってないよ」

「あ、詩織、詩織先輩の服を貸して欲しいくて、さっき詩織のカギを取りに来たんだ。だから、服を貸してくれ。‥‥‥‥‥‥それより……

僕は説明後、黙り込んだ。今一番気になる事なのだが、言うべきなのか、言わないのが正解なのか、どっちが正しいか考えたが

「服は分かったわ。お母さんに言われていたの、忘れていた。それより、何?」

詩織は僕を見た。どうやら選択肢は一つしかないみたいだ。だから、僕は

「詩織が先に服を着ろ。そこにあるだろ」

と僕が言った瞬間、詩織は顔を赤くして

「お兄ちゃんのバカ!」

と言って、僕の頬を小さな手で叩かれた。僕はそのまま、脱衣所の壁まで飛び、体が半回転した。

それから、三〇分後、詩織を含む女子グループが男子グループから説教が始まった。

左から詩織、清水、詩穂先輩の順に床に正座していた。その前に僕と仁先輩が仁王立ちをしている状況だ。

「「「すいませんでした」」」

女子三人は声を重ねて、謝ってきた。

そして、男子チームの最初に口を開いたのは仁先輩だ。

「詩織君はちゃんと服を詩穂に渡しておけ」

「はい」

と仁先輩に指摘された詩織は返事をした。

「唱後輩は服をちゃんと持って風呂に行け!それと詩穂に何をされてもダメな事はちゃんと断る」

「……はい」

と彼女はしょんぼりした返事をした。

「そして、詩穂!詩穂はまず、最初に一人で僕たちにすべき事があるだろ!」

「ええっと」

と詩穂先輩は考え込む。

「あ!仁、大好きだよ!」

と詩穂先輩は叫びながら、仁先輩に飛びこむ。

「俺もだ!……

と仁先輩は珍しく乗り気だった。

「……って、違うわ!」

とどこから出したのか不明なハリセンで詩穂先輩を叩きながらツッコミを入れた。

ですよね。あの、仁先輩がそんな事をするわけがないですよね。

「そんなことして、許されるのは中学生までだ!」

「え⁉じゃあ、中学生まであれを最後までやっていたんですか?仁さん」

僕は思わず心の声を出してしまった。

「例え話だ。春樹後輩。冗談にもほどがあるぞ」

と仁先輩は感情を抑えて僕に言った。

「ですよね~」

僕はさっきの発言をなかった事にするかのように言った。

「もういいよ。自分が怒っているのが馬鹿らしくなってきたよ」

「そうだよ仁!いつまでもピリピリしないで、楽しく行こう!」

詩穂先輩、それは今、言っちゃダメだと思いますよ。

「少しは反省しろ!」

と仁先輩はまた、詩穂先輩の頭をハリセンで叩く。

ほらね、言わんこっちゃない。

「僕からは、詩織に言わせてもらいます!」

僕は詩織の前に仁王立ちで立った。

「僕は今、多分怒っています!何に怒っているか、分かっているか?」

僕は詩織に問う。

「バケツを投げたこと…です」

詩織は答える。

「そうだ。そもそも、僕たちは兄弟だ。たかが裸を見られたくらいで、いちいち騒ぐな!あと、叩くなら、もうちょっと加減しろ。俺じゃなかったら、叩かれた人は確実に救急車に運ばれるぞ」

僕はまとめて言いたいことを言った。

「すいません。でも、私たちはもう、高校生だよ。体も大人になっているんだよ。そこの辺はどうなの?」

僕に質問をする詩織。

「何を言っている。見ろシャッチを!」

僕はシャッチをさした。詩織はシャッチを見た。

シャッチは堂々と四つの手足で立っていた。

「あれは人間からみて、裸と同等ではないか!を毎日、外気にさらしているぞ。ただでさえ人間は贅沢に服を着ているんだ。兄弟の中で体が大人とか、どこまで贅沢したら気がすむ。母さんたちは毎日一緒に仲良くお風呂に入っているではないか!」

僕は詩織の反論に僕はどんどん、詩織の精神まで削っていった。

まあ、言っている事は全て詩織が正しいのだが、これを機に兄妹として距離が遠くなることは避けたい。なので、とりあえず逆切れをした。

「わかったか?」

僕は聞き直す。だが、もう一度言う。詩織は間違っていない。

なので本音はそんな事反省しなくていい。

というか、今さらあんなことを言うんじゃなかったと悔やんだ。

実際に悔やんだかは、分からないが‥‥‥。

「はい、すいません」

「それに、僕と詩織にそこまで違いはないだろ?」

僕は女性に言ってはいけない事を言ってしまったことを言った後に気が付いた。

「酷いよ、お兄ちゃん。私が一番気にしている事を言うなんて」

詩織は自分の胸を僕から隠すようにして言った。

「そんなに気にすることなのか。僕は小っちゃくていいと思うぞ。逆に大きいと気持ちが悪くなる」

僕は詩織をフォローするように言った。

「そうなの⁉」

と変に清水が食いついてくる。

「ああ、僕はそうだが‥‥‥」

と言って、清水は自分の胸辺りを眺め始めた。そして、胸を手で押さえながら僕を見た。ドヤ顔で……。

「ダメだな。春樹後輩。まだまだ、考えが子供だぞ!」

と仁先輩が僕の意見に異論を言った。

「いや、そんなに気にすることですか」

僕は仁先輩に聞いた。

「ああ、胸は重要だぞ。するときに必ず、男はそこを目が入ってしまうからな。それに大きくないと揉み涯がないではないか!」

と仁先輩は語り始める。

「揉み涯……」

と詩織が落ち込み始めた。

『春樹と梶野先輩、いい加減に下ネタの話をやめてくれ。速く二人が分かったっ事を説明してください』

とPCから坂本が言う。

確かに、今回のお泊り会の目的は修正部会議で事件の真実を求めることだ。

さっきまでは完全に楽しんでいた気がする。

「そうだな。そろそろ再開しましょう。仁さんもいいですよね」

僕は仁先輩に聞く。

「ああ、構わないぞ。でも、春樹後輩、やはり女性は胸がでかくないといけないと思うぞ」

「でか!……」

さらに落ち込む詩織。

「もうやめてあげてください。それにこれは僕の主観的考えです。客観的に見るなんて、できない話ではないですか!人それぞれ、タイプも変わってくるでしょうし」

僕は仁先輩にこの話を終わるように遠回しに言った。

「そうだな。それじゃあ、会議を再開するか」

仁先輩は切り替えて、僕たちに言った。

「はい」「わかったわ」「やるぞー!」『ああ』

それぞれ、言っている事はバラバラだが、声は重なった。

「詩織も手伝ってくれるよな?」

僕は詩織に聞いた。僕は詩織が反省しているなら、多分手伝ってくれるはずだ。

「うん。分かった。それより、お兄ちゃん、やっぱり大きくないといけないのかな?」

「まだ、気にしてるのか?そんなの僕にとってはどうでもいい。それに詩織好みの人は世の中沢山いる、胸など気にすることないって。まあ、これは僕の考えだけどな。ちゃんと、お前をちゃんと愛して、守ってくれる人を見つけろよ。僕みたいな人、または僕以下の人は選んでくるなよ。もし、選んだら僕はその人とはしっかりと最後まで反対するから」

僕はしっかりと自信満々に言った。

「私はお……んが……いい‥‥けどな」

詩織が何か言った。

「なんて言った?」

僕はうまく聞き取れなかった。だから、何て言ったのか聞き直した。

「な、何でもない!」

と顔を赤くして、僕から顔を隠すように椅子に座っていった。

「聞かれたかと思った……」

また何か言っていた。今度は聞き漏らさなかった。でも、意味がよく分からない。

僕は詩織の何を聞いたのか。

やっぱり、さっき、何か言ったのか?でも、言語的にそうなる。

まあ、今はどうでもいいや。

「では、修正部会議を再開します」

僕の声で電気は消され、部屋はスクリーンだけの明かりだけになった。

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