1章6話 彼女は最初から、全ての事情を知っていた。
以前、とあるネット掲示板で1つの都市伝説が話題になった。
ある意味呪いとも呼べるそれは〈屈折のデザイア〉、自分の中に秘めているデザイア――つまりは欲求や欲望や願望を、自らが望まない方法、屈折した形で叶えてくれるという超常現象。
たとえば、無意識に注目を浴びたいと思う人がこれにかかれば、『注目を浴びることはできるが、それを浴びた瞬間社会的に死ぬ』という風に悪い意味での注目を浴びることになるのかもしれない。
また、たとえば、無自覚に妄想を現実にしたいと思う人がこれにかかれば、『妄想を現実にはできるが、現実との擦り合わせで、途中から望まぬモノになっていく』という風に都合がいいのは最初だけになるのかもしれない。
ところで、この〈屈折のデザイア〉は確かに世界に存在するが、それが存在する意味をそれ以上、人間ごときが探ることはかなり難しい。
たとえば重力は世界に存在するし、ある程度、本当にある程度なら、人類にもわかることが少しずつ増えてきた。
だが、それがなぜあるのかは分からない。というより、質量があれば大なり小なり発生するモノではあるが、しかし『なぜ発生するように世界が作られたのか』はまだ誰にも分からない。
また、たとえば、時間は確かに世界に存在するが、重力同様に『なぜあるように世界が作られたのか』はまだ誰にも分からない。
というより、世界そのものだってそうだろう。
まぁ、つまるところ〈屈折のデザイア〉というのは重力や時間や、生や死や、あるいは意識や世界そのものと同じで、今のところは『それが存在しているのだから、存在しているのだ』というところまでしかなにも言えない。
さて、ここにも〈屈折のデザイア〉を患った女の子が1人。
彼女の名前は星宮奈々という。
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