俺のラブコメヒロインはパンツがはけない。
1章1話 俺はノーパン美少女にもなびかない。(1)
ノーパンだった。
今まさに階段から落ちかけている女の子、彼女はパンツをはいていなかった。
「キャアアアア――ッッ!」
そして俺は彼女のスカートの中、乙女の花園を見てしまう。
って、いやいやいやいや! まぁ待て! ノーパンの女子が落ちてくるってどういうことだ!?
「ど、どいてっっ!」
朗らかそうで可愛らしい印象の女の子の切羽詰まった声が響く。
さて、本題のスカートの中だが……結論はさっきのとおりだ。
白くてやわらかそうで、転んだだけで折れてしまいそうな細い太もも。
丸みを帯びていて見るからにプニプニで、だけどむしろ小さ目なおしり。
おなかもおしりと同様に、とてもやわらかそうなのに細く滑らかにくびれていて、肌もまるで水そのもののように瑞々しい。
そしてスカートの中の下半身は肌色一色。
繰り返す。
肌色一色だった、スカートの中が。
純白もなければピンクもない。水玉模様も縞々模様も存在せずに、少し背伸びした黒とか紫のレースもなかった。
つまり彼女は――、
「変態だ――ッ!?」
叫んだと同時に、俺は女の子に、よりにもよって顔面に着地された。
そしてそのまま後方に倒れ込んで、背中と後頭部に病院確定の痛みが走る。
まぁ、かなりの衝撃があったんだ。
空気が思いっきり身体から吐き出されて、その分吸い込んでしまったのも許してほしい。
ていうか、被害者はこっちなのに体勢が最悪だ! 俺の頭を両脚、太ももで挟み込むように、彼女はへたり込んでいる。
マズイ!
「もふ――ッッ!? もふもふウウウウウ――ッッ!」
「ん――っ、あ、あっ、――く、くすぐったいから喋らないでぇ……っ」
おかしい、なぜだ?
どけ! どいてくれエエエエエ! って、そう言ったはずなのに、これだと女子の匂いを吸うのに必死なヤバイヤツにしか聞こえない気がする!
しかも、俺の顔面に乗っている女子の切なそうな声も聞こえてくる。
熱を含んだような吐息交じりの、息を当てないでという必死の懇願。正直、彼女の声は感じているようにも聞こえてしまった。
いや……確かに、敏感な部分がくすぐったいのはわかる。
吐息を漏らすたびに、この誰かさんは太ももに挟まれた俺の頭ごと、悩ましげに脚をすり合わせようとするぐらいだ。
けど、それはどうでもいいから1秒でも早く立ってくれ。
そんな俺の祈りが通じたのか、女の子は立ち上がり、俺の頭から身体をどけた。
30秒ぐらいかかったが、向こうもどこかを痛めて、上手く立ち上がれなかったのか?
で、視界が自由になることで、俺はその子の顔を確認できた――、
――が、ウソだろ?
まさか……ノーパンで通学するような痴女が、俺のクラスメイトだったなんて。
「委員長? どこに行ったんですかー?」
不意に、階段の下の方から彼女を呼ぶ声が聞こえた。
見付かったらマズイし、俺も相手も急いで立ち上がる。
その際にノーパン娘と目が合ったが……俺になにを言えばいいのかわからなかったのだろう。
ていうか、俺もそうだが……。
彼女は気まずそうな
「今の、
ん? いや、待て! 落ち着け俺!
あまりに衝撃的な事件で反応が遅れたが、ノーパンだと!?
高校生の女の子が!? 風紀を守るべき委員長が!? 誰もが起きている昼間から知り合いがたくさんいる学校で!? パンツをはかずに過ごしているだと!?
俺は両手で頭を抱え込む。そして1つの結論に達した。
「あいつ変態じゃん!」
「誰が変態なの?」
「なにこんなところでサボってんの?」
「ウオッッ!?」
絶賛混乱中の俺にふと、誰かが背後から声をかけてくる。
けっこう見っともない声が出てしまったが――そこにいたのは幼稚園からの幼馴染の2人、
「ね~え~、弥代? 誰が変態なの?」
理央は男子にしてはとても小柄で、かなりの童顔だ。
大きな二重の瞳はどこかあどけなくて、いつも眠たそうにトロンとしている。
肩幅も女の子と見間違えるほど小さくて、線も細い。
髪も少し伸ばしたぐらいでは野暮ったくならず、むしろそのありえないぐらいサラサラのブラウンのショートカットも女の子のようだった。
初対面の人ならまず例外なく、女の子が男子の制服を着ているんじゃないか、なんて錯覚するだろう。
そんな理央は俺の叫びを不思議に思ったのか、小さく首をキョトンと傾げて訊いてくる。
「誰が変態かなんてどうでもいいわよ。文化祭の準備中だし、メイド服着ている男子ぐらいなら少しはいるでしょ」
「いや……、アレはふざけた男子の女装とはレベルが違ったんだが……」
「それよりも、ガムテープとダンボールはどうしたの?」
茜も茜でかなり容姿端麗な女子だった。
口に出すのは流石に礼儀に欠けるが、クラスの他の女子よりもスタイルがかなりいい。
極端に大きいわけじゃないけど、胸は確かに制服を押し上げるほど膨らんでいる。
2ヶ月前に海にプールに行った時に見た腰はとても細くて、女子の身体らしく滑らかな曲線を描くようにキチンとくびれていた。
ツリ目がちなパッチリ二重、その中に浮かぶ瞳は黒目がちで、身内ビイキなしでも少しあざといほどに眉目秀麗だ。
恐らく同性からも羨ましがられるほどの小顔で、唇は花の蕾のように綺麗で艶やかな薄桃色をしている。
昔からよく知っているということもあり、過去にイジメられて女子嫌い、女性不信になった俺が唯一純粋に実は可愛いと思っている女子が茜だ。
さて……それはともかく茜の質問にどう答えたものか。ウソを吐いてもバレたら信頼を損なうことになるし、素直に言うか。
「あぁ……ゴメン。実は空から女の子が落ちてきて、少しの間、動揺してたんだ。だからまだ持ってきてない」
俺が本当のことを言うと、2人は顔を見合わせて
そして、互いに似たような感想を抱いたのだと察したのだろう。こちらに向き直ると俺に向かって――、
「弥代」
「どうした、茜」
「脳神経内科に行くなら、やっぱ大学病院にした方がいいわよ」
「どういう意味だ!?」
「あのね、弥代? 空から人が落ちてくるわけないじゃん。アニメの見過ぎじゃないかなぁ?」
「クソ! 理央まで! 事実なのに誰も信じてくれない!」
通院を勧めてくる茜に、常識を述べる理央。なんで誰も信じてくれないんだ!?
いや、そりゃ、俺も他人からこんなことを言われて、信じられる自信はないけど。
「仕方がないなぁ、とにかく、じゃあ早く行こ? ボクもダンボール運ぶの手伝うよ」
「あぁ、ありがとう。で、茜はどうする?」
「あたしも付いていく。こっちの準備は終わったし」
「了解~」
通行の邪魔にもなるし、いつまでも踊り場にいるわけにもいかない。
俺たちは3人揃って階段を上り校舎の3階に辿り着く。
そして視界に飛び込んできたのはペンキ塗りたての看板とか、どこかのクラスの出し物のポスターとか、切って輪にした折り紙を繋げて天井に吊るした飾りとかだった。
自分もここの生徒だけど……通りすがる生徒たちの大半は活気付いていて、まだ日中だというのに、放課後みたいに明るい雰囲気が流れていた。賑やかで楽しげな声がどの教室からも聞こえてくる。
「そういえば……文化祭までもう1週間を切ったんだよな」
「そうだね。今日が10月20日で、文化祭は26日だし」
俺の雑感に理央が応えてくれる。
そしてその瞬間、こちらを見上げて穏やかに表情をほころばせてくれた。
ここまで可愛らしいと、もはや性別なんて関係ない。
ほにゃ~~っとしたやわらかい笑顔に俺の心は癒される。同性だろうとすごく愛くるしく、思わず抱きしめたくなるほどの可愛さだった。
だが、俺が理央だけと仲良くしているのが、なんかイヤなのだろう。
茜が少しツンツンした感じで俺たちの会話に混ざってきた。
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