第2話 48段
♪〜
何か聞こえる。
これは市歌、もしくは県歌だろう。
いつもゴミ収集車がこの歌を垂れ流しにして町中を走り回っている。
……ん?ゴミ収集車?
確か、昨日は僕の誕生日で3月7日だったはずだ。
だから、今日は3月8日……しまった、今日は月に一度の紙ゴミの回収日。
ネットショッピング族の僕にとってはダンボールを捨てる為の貴重な日。
「やっちまったなぁ」
これで、今月もダンボールで部屋が埋め尽くされる事だろう。
僕の住んでいるマンションは1LDK。
中学二年生の男子が一人暮らしする家としては十分だろう。
なんだかんだで毎月「障害者手当」だのが振り込まれている為、生活は不自由していない。
中学二年生といったが、不登校児である。
「あーあ、疲れた」
最近は寝るだけで疲れる事が多い。
「…腹が減った…」
コンビニに何かを買いに行こうか。
パジャマの上に灰色のパーカーというラフな格好で自動ドアをくぐる。
コンビニ弁当をレジに持っていく。
お箸お付けいたしますか、という店員の無機質な声(なのだろう)に、
「あ…、はい…」
と、しどろもどろに答える。
さあ、マンションの前に付いた。
階段で一番上の4階を目指す。
「全部で48段か…思ったより多いな…」
ふと、階段の段数を数えてみた。
自分の部屋のドアの前に立つ。
サビの浮いたドアノブを回し、ギギギ、と音が鳴っているのだろうか。妙な手応えを感じながらドアを開けると――――女の子が立っていた。
「……君も階段上がってきたの?」
耳が聞こえない僕と目の見えない君 @nakatyu
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