耳が聞こえない僕と目の見えない君

@nakatyu

第1話 かみさま

僕は「かみさま」なんていないと思ってる。

だって、そうじゃなきゃ僕の耳は聞こえているはずだもの。


別に耳が聞こえないからって、いじめられていたわけでも、すごく、何か不便なことがあったわけでもない。


僕が5歳のとき、いきなり、ブツッて聞こえなくなった。

聞こえなくなった日は何もわからなかった。テレビの音量を13から27に上げても何も聞こえなかった。

次の日に病院に行くと、「突発性難聴」って言われた(らしい)。難聴っていってもほぼ何も聞こえないけどね。


そんな僕も、14歳になりました。

3月7日の今日、「ハッピーバースデー」を一人で歌って、一人でケーキを食べる。

「寂しいなぁ」

僕は自分の声が聞こえないから、自分がちゃんと喋れているか分からない。

僕は読唇術ができるから人との会話はそんなに不便じゃない。でも、相手がいなければそれも意味がない。


時計を見るともう、夜の9時。

「寝ようかなあ…」

誕生日だからって、祝ってくれる人がいないと寂しいだけ。こんな日は寝るのが一番だ。


寝ると全てを忘れられる。

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