第31話
「爺さん・・・これから決戦だってのに何で子犬の姿なんだ?」
ジルは山神が実体を持つ神だと言ってたのに俺の横をココアの姿でちょこちょこと歩く山神を見ながら言った。
「わしの姿は鎧武者なんじゃぞ!?」
「そんな姿でお前達と一緒に歩いたらわしだけ不審人物というより仮装行列してるみたいで浮いて見えるではないか!」
山神は呆れたように俺に答えると更に言葉を続ける。
「琢磨、お前の能力はわしの想像を遥かに超えておるし強い! だがこれから戦う相手はわしと同じ神じゃ、神と言っても邪悪な神なのじゃから心を惑わす術にも長けておろう!?」
「これから先は全体を把握しながら戦わんと大切な人を守ることは出来んぞ」
山神の大切な人という言葉に俺は花音を見て彼女と目が合ってしまい何となく視線をそらしてしまった。
「さあ、着いたぞ! ここから先はわしらが全滅するか奴を倒し消滅させるかのどちらかじゃ・・・覚悟は良いな?」
そう言った子犬に宿る山神、俺と花音、結さんは目の前に拡がった邪悪な気配と暗闇の中に浮かんで見える廃工場らしき建物の異様な光景に決意を表すように無言で頷いた。
月明かりに照らされた内部に人影が多数あるのは更に奴の力が増し、取り込まれてしまう人が増えてしまった為であろう?
先日の警察署内での凄惨な殺し合いも町中のあちこちで多発してる凶悪事件もテレビや新聞で大きく取り上げられ報道は続いている。
非常事態宣言に伴う夜間外出の禁止、及び警察ばかりでなく自衛隊まで町中を覆い尽くすかのように配備された場所を嫌ったのかは想像でしかないが数十年前に閉鎖され予算も無く放置されたままの状態で町外れに忘れ去られたこの場所に奴は本拠を移したのだ。
魔法使いの館に保護を頼み、小動物に憑依し偵察に動き回る宇宙人のジル達と俺達はこの場所に赴いた。
奴をこの廃工場から探し出し消滅させてしまえば奴に取り込まれてしまった人々も消滅するはずだ!
取り込まれた彼等を助けることは出来ないが自分達で敵とは言え多くの命を奪うよりはまだマシだ。
俺達はあらかじめ打ち合せていた通りに左右に別れ工場の外壁伝いに歩き出した・・・右側に俺と花音、左に山神と結さんだ。
彼女は俺の後ろにぴったり着いて歩いて来る、もう少し歩いた先に外壁が崩れて中に入れる場所が見えて来るはずだ!
前後を気遣いながらゆっくりと進んで行くとジルが言った通り、入れる場所が有り
俺達は頷き合い確認すると中に足を踏み入れた。
それほど大きな工場跡ではないが敷地内の所々には照明が灯り発電機の音であろうか?・・・微かにエンジン音が聴こえる。
会話も無く手には思い思いの武器を携え徘徊する人の姿が至る所に見えるのが不気味で緊張感は高まり花音の両手が俺の背中をぎゅっと掴んでいるのが彼女の恐怖心を表しているようで俺に勇気を与えてくれてる気がした。
月明かりを頼りに周囲の敵が持つ武器を確認してみる・・・
幸いここに銃を持つ敵は居ないようである、足下を見ると野ねずみみたいな小動物が小枝を持つて地面に略図を描き建物の一部を指し示した。
ここから先に見える建物の入口だろう!?
距離は約40m、敵を倒しながら進むしか無いか!・・・そう判断した俺は頷いて物陰から出ると野ねずみに先導されながら建物に向かい歩きだした。
敵の数人が俺に気づき唸り声みたいな声をあげながら武器を振り翳して突進して来る!
背後に敵を回さぬように正面から敵を目掛けて歩くのは勿論、俺の背後に居る花音を守る為だ。
鉄パイプを振りかぶる相手の顔面を殴り倒し右から襲いかかろうと身構えた敵を蹴り飛ばした!
素早く動きながら手当り次第に倒しながら入口を目指す!
向こう側で2発の銃声がした!
多分、爺さんの方でも入口に向けて進み出したのだろう!?
結さんは警察署での状況でも冷静に判断し行動出来る人だから爺さんと一緒なら心配しなくても大丈夫だろう。
奴との決着をつけ花音を守る!
向かって来る敵を殴り俺は呟いた・・・「戦闘開始だ!」
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