第27話
「すぐに現れるかと思ったのに何故なの?」
やはり極度の緊張感にあるのだろう!?
テレビや映画で見るような構えで拳銃を持ちながら婦人警官である彼女は言った。
「操られている分、思考能力が低下しているんじゃないかと思いますが操られている人間は善意が消えてしまってるからもとには戻れないそうで、生きてる限り殺戮を繰り返すそうです」
俺の言葉の意味に気づいた彼女は驚きながら
「それは相手を殺すしか方法がないってことなのね!?」
彼女の真剣な問い掛けに俺は目を伏せどう答えるべきか迷った。
相手は警察官である!
その彼女を目の前にして殺さなければ生き残れないなんて言っても同意は得られそうもないだろう!?
「大丈夫よ! こんな状況を目の当たりにして貴方を逮捕するなんて言わないから安心して!・・・どうすればいいのかを戦いの経験者である貴方に尋ねただけよ」
微かに笑ったように見えた彼女は階下に銃口を向け、隣りの俺に
「正確に狙える距離は階下の踊り場までだからそれ以上は離れないで戦って頂戴!」
「拳銃を持つ敵が現れたら迷わず射殺するからそのつもりでいてね!」
「足音が聴こえる・・・来るわよ」
落ち着いた様子で語り掛けた彼女は俺を理解し、信じてくれたようでそれが嬉しかった。
短刀の様な武器を持った男が3人、視界に現れたのを見た俺は階段を一気に飛び降り殴り倒す!
そんな俺に気付いた更に階下の連中も階段を駆け上がって来た。
俺は彼女の視界から消えないように気を配りながら次々と倒し、残り2人となったところで突然、銃声が響き弾丸は俺のすぐ脇を通過して壁にめり込んだ!
俺は2人の視界から消えるように階段を半分だけ上り2人が現れるのを待ち身構えた。
物凄い反響音と共に何発かの銃声が続けざまに響くと階段の壁に食い込み、崩れた壁の欠片が床に落ちる・・・手当り次第に撃っているようだった!
階段の上で拳銃を構えていた彼女が首で俺に後ろへ下がるように合図を送ったので彼女の背後に下がり振り向いた瞬間、2発の銃声が鳴り響くと2人の男が頭を撃ち抜かれ力なく床に倒れた。
その周囲には赤いと言うよりも黒いと言った方が似合うような脳内の中身が飛び散った血痕が撒き散らしたように広がっていた。
その光景を見たくなかったのか、彼女は
「さあ、急いで彼女達と合流して適当な場所に隠れましょう!」
そう言いながらシューターのある場所に向かい走り出したので俺も急いでその後を追って走った。
彼女に追い付こうとしたその時である・・・
「そんなに急いで逃げなくてもお前が遊ぶ相手はもう居ないよ」
背後から男の声が聴こえて俺は走る足を止めて振り返った。
「そうか、お前がこれだけのことをやらかしてくれた張本人かぁ?」
「俺様の邪魔をするとそのうち殺しちゃうよ! お前程度の能力など今ここで簡単に始末できるが今日は逃がしてやるよ」
姿は中年のシスターなのだが男の声である・・・間違いなく奴だ!
この吐き気がするほどの邪悪な殺気はこいつだったのか!?
「俺様が欲しいのはお前達が持ってる善の抜け殻だ! もともと俺様の物なんだから隠してないで返してくれないかなぁ?」
人をバカにしたような言葉だが今まで感じたことが無い不気味な威圧感が俺をここから動けなくしている。
こいつは強い! 本気で戦っても勝てる気がしないほど強い!
悪の塊と言ってもいい奴が本当に今、襲いかかって来ないとは限らないのだ・・・どうする?
そんな俺に奴は続けて言った。
「まぁ素直に返してくれても殺しちゃうのは一緒だけどお前達4人とそこに突っ立ってる生意気なお姉ちゃんの5人だけで勘弁してやるから心配すんなって!」
「ただ楽には死なせない、なぶり殺してやるから楽しんで死ぬんだな・・・ほら、早く逃げた方がいいぞ」
女性の姿で傲慢な言葉を発する異様な雰囲気が不気味だった。
「さあ、早く逃げましょ! 構ってる必要はないわ! 早く来て」
彼女の叫ぶような声で我に帰った俺は彼女に続いてシューターへと飛び込んだ!
滑り落ちる音に混じって奴の嘲るっような笑い声が聴こえて来る。
必ず奴を倒して生き残ってやる!
誰1人、殺させる訳には行かない・・・俺は心に誓った。
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